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ドラ〇ンボールを探して

 いよいよ出発だ、最初の国は隣国のラルゾディニだ、商業が盛んで首都は芸術の都と呼ばれている。

 朝から転移陣のまわりが騒がしい、一度に5人しか乗れない陣に330名プラス荷物だ。時間が掛かるのも仕方がない。

 皆に送られ俺たちは転移陣に乗る、激励の言葉を後にあっという間にラルゾディニの地を踏んだ。そして嫌な予想は当たった。侍従に連れられてきた広間にずらりと並んだ高官たちのその後ろには美魔女と令嬢方がいて、ドレスで足の踏み場もない。歓迎は簡素にとの通達が吹き飛ぶ華やかさだ。


 そしてその真ん中でにこやかに微笑む王、こいつはヒロインを他の攻略対象者からかっさらうことが出来るのだから強引なタイプなのだろう。22,3歳か。野性味をおびた美しいお顔は隠しキャラの名に恥じないきらきら度だ。


「私にはまだ婚約者がおりません。愛する方との出会いを夢見て、独り身を通しています。

 父上も私のたった一つの我侭だということで許してくださいました。」


 きらきら王が夢見るように話す。それを聞いた彼の後ろの女性たちがさざめいている。

 この人もゲームに縛られているのかな、王の運命の人とは会うこともないのに。


「私も同じ気持ちです。しかしラルゾディニには美しい花が咲き誇っているのに不思議なおっしゃりようですね。」


 あーぁ殿下、話が弾んでいるのは結構ですけれど、そんなこというと浄化から戻った時が怖いです。


 俺たちは部屋に戻り、またしても密談だ。この国に1つ目のドラ〇ンボール、もとい宝珠がある。

 出発して6日目、俺たちはテントを抜け出す。今回唯一要求したのがこれだ。いちいち貴族の屋敷に泊まってみろ、ご家族との歓談、聖カルテットを見せびらかしたくて開かれる夜会、浄化がすすまない。準備も済んでいると言われたがそんなこと知らん。こちらは殿下が「浄化をお望みか、それとも外交をされたいのか。」とばっさり切り捨てた。王子様、頼りにしてます。


 抜け出すのには、魔法を幾つも使い大変だったのだが、まあ無事に野営地を後にして、走ること1時間、森の奥にある泉に俺たちはたどりついた。足元のライトの魔法では分からないが、本当はわずかに薄緑をした美しい色をしているらしき泉だ。


「始めるぞ。古の国の宝珠よ、我が手に、シリスムーン。」


 泉の中から野球ボール大の水晶の玉が飛び出し、殿下の手に乗った。


「宝珠を集めるのにも呪文がいるとは思いませんでした」


「そのようなことはありません、この暗い中、水に潜り濡れるのがいやなだけです。希望するなら次は自力でお願いするが、水底まで10メートルはあります。」


「いえ、感謝します。労力はなるべく少なくです。」


 ゲームでは攻略対象者たちは絶壁の途中にあったり、100メートルはある大木の鳥の巣にある宝珠を取りにいく、はらはら、どきどきのサスペンスドラマだな。そして最後の1個、200メートルもの垂直な穴の中に落ちている宝玉を取ろうと苦心している時にアーネストが地図に隠されている呪文を発見する。


「遅すぎます、それまでの苦労はなんだったのでしょうか。」


「最初から知っていたらドラマにならない、ゲーム作成者としては仕組むだろう。」


「ひどい、鬼畜だ、運営の馬鹿野朗。」


 そこで人事のように笑っている、オクタヴィアンと脳筋ルド。その時はお前たちも巻き込まれたんだぞ。


 こうして俺たちは1個目の宝珠を手に入れた。


  2個目の宝珠はエスターニャにある。またしても夜である。この時間に到着する為の調整にも苦労した。オクタヴィアンがいい仕事をしてくれた。そして、そっと抜け出す俺たち。

 またしても走って、今度は2時間。川のほとりをうろつくこと3時間、ライトの魔法の光しかなく視界が悪い中きょろきょろとする殿下に過ぎて行く時間に焦る俺たち。


「あった、あの岩だ。持ち上げてくれ。」円柱の形の岩が鎮座している。


「誰がですか、2メートル四方の岩を持ち上げるのは。」


 3人に見つめられたルドが首を横に振る、脳筋でも無理か。

 川の中で足場が悪いし、あの岩は何トンあるんだ。

 次に視線が集まるのは俺。魔法に何を期待しているんだ、できてしまえる俺が憎い。岩をどかすと下に直径2メートル程の穴があった、ついでに川の水がどばどば入っていくぞ。


「この200メートル下に宝珠があります。」と殿下。


 これは無理ゲーだ、そしてこれは最後の宝珠ではないのか。


「順番どおりに回る必要はないでしょう、それにしてもこれは呪文がなければ取れませんね。

では、我が手に古の国の宝珠を、シリスムーン。」


 殿下の手に宝珠が、2個目をゲットできた!


 その次は昼間に行った。3個目の宝珠は野営地から山を二つ越えた先の谷の鳥の巣にある。100メートルもある木は20~30階建のビルと同じ高さだ。新宿を歩いている時は何とも思わなかったが、高い、高いぞ、首が痛くなりそうだ。ゲームの奴らはどうやってこの直径20メートルもありそうな木に登ったのだろう。

 そこへ襲い来るロック鳥、これまた大きい、翼を広げると5メートルはありそうだ。ここで活躍するのが、予想を外してうちの鳥だ。俺の直感どおり獰猛だった鳥はいきなりロケットのごとく上昇、怪光線を嘴から照射。レーザービームはロック鳥の翼の根元を焼き、あわれあいつは錐もみしながら落ちた。

 ルドが首ちょんぱして殿下が呪文を唱える。こうして3個目の宝珠も手に入った。順調だな。


 8ヶ所目の国に来たということで俺たちは少し休養をすることにした。離宮を借りてのんびりする。

 そして休みの前といえば酒だ。いいよな、サラリーマン時代を思い出すぜ。3個のド〇ゴンボールを眺めながら飲む酒はおいしい。


「どこから見物しますか。」とオクタヴィアン。


「まずは噴水からだな。」


「噴水?ルドにそんな趣味があったっけ。」


「有名なんだ、時間で変わる噴水は古代王国の遺産といわれているんだ。」


「噴水かー。そこにデートに行きたいです。最近は連隊長もわりと自由にさせてくれるし。」


 お忍びでデートしたいな。ナンパだ。いまの俺の顔なら断られることはあるまい、フハハハハ。


「やはり旅はいいな、少しは羽目を外しても問題なし。」

 そして羽目を外すと俺のフォローが大変な殿下は程ほどにしてください。


 程よく酔い始めると愚痴も出てくる。


「王族には添い寝をさせる習慣があるんだ。」ボソッと言う殿下、思うところがあるようで。


「未亡人で経験しろというありがたい親心だ。

 でもな、ここには文明の利器がないんだ。

 あの超薄くて、肌のごとくフィットするアレが。」


 あぁ、酔っていますね、明日二日酔いになっても回復魔法掛けませんよ。


 実は貴族は子供が出来ても困らないように、既婚女性と浮気する。お金がいるし、子供の立場は相手の家の庶子扱いになるけど。


「子供をそういう立場にするのはいやだ。日本人の心がじゃまをする。」


 唐突に殿下は似顔絵を描き始めた、上手だ。貴族の嗜みはすごい。


「この国のいる茶髪に緑の瞳のヒロインだ。今度も小動物系だな。」


 酔っ払いは脈絡もないな。





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