鳥が来た
次の討伐はゴルドシュタイン領だ、息抜きにBBQをやりたかったんだよ。被災地で贅沢は不謹慎だからな。
殿下に領に滞在中の費用はこちらで持ちますと言ったら、2つ返事で了承してくれた。
計330名プラス俺たち、お金掛かり過ぎ?でも領はほとんど浄化できたし、俺たちものんびりできたのでよしとしよう。被災地巡りで1年もするとピリピリして神経が休まらない。
2つ目、3つ目の領を周りながら俺たちは学園に戻ったら何をしようと話をしていた。
そろそろ一ヶ月、国内の浄化は終わる頃ではないか。
「これで女の子とバラ園でデートができる。」
「殿下はバラ園での散策は何度もされていましたよね。」
「あれは違う。乙女ゲームのことがあったから、素っ気無く紳士に振舞うしかなかった。
私は年上の綺麗なお姉さんが好きだ。その彼女をバラの垣根の陰で、お尻をすりすりしたりして、彼女はその手をぴしゃと叩いて、めっ、とか言うんだ、それが年上なのに可愛くてだな。それから、この黄色のバラは気まぐれなところが君に似ていると言ってみて、そのバラを髪に飾ってあげるのもいいな。」
「私は腕をにぎられて、体を押し付けて欲しいです。一緒に胸も押し付けられて、どっきりとするのもいい、一緒に馬で遠乗りにも行きたいなあ。彼女は乗馬がうまくなくて、私の馬に乗せてあげるのです 前に乗せて腕に囲うと花のような香りがしてきて、それから後ろに乗せて胸が当たるのも捨て難い」
「前か後ろか、悩ましいですよね。」
「殿下お言葉が崩れています。あなた方は何を話しているんです、まったく。」
「堅い、堅すぎるぞ、オクタビアン、男ならこのくらい当然のことだ。」
「あのな、2人共に女に落ちる気満々だな。」
「お二人ともちょろすぎて、涙が出そうです。」
「ちょろいと言うな!」
「だから用心していたんです!」
「「はい、はい」」
これで俺たちはちょっとがんばっただけの学生に戻れるだろう、領にすぐ戻るのは殿下が煩いから、騎士団で何年か過ごそう。知り合いも大勢できたから居心地も悪くないだろうしな。
そしてそこから俺のハッピースローライフが始まるのさ。筋道の見えてきた未来に俺はごきげんだ。
聖女様ががんばってくれたら、俺の『白ぼたんの君』とかいう変な二つ名も消えるだろう。俺はいらん。
聖女様にこそ二つ名はふさわしい、俺が幾つでもつけてやろう。
俺はいま殿下の襟首を掴んで揺すぶっている。
「なんで、聖女に覚醒したんじゃないのですか。
ピッチヒロインなにをやってるんだ!
魔獣に襲われかけて覚醒したイベントは。」
「落ち着け、フェル、どうどう」
「うるせえ、俺は馬じゃない、理由を話してください」
いつもの定時連絡の使者が慌てた様子で、殿下と部屋に篭り、出てきたと思ったら、
「私たちは聖カルテットとなり、国内を至急浄化したら、大陸を回ります。」と言われた。
俺、怒ってもいいですか。とりあえず俺たち4人は部屋に篭った。どうしてそうなったか説明して貰わないとね。
「私たちの二つ名をご存知ですか」
はい、ご存知ですとも
「殿下が白バラ、オクタヴィアンがカラー、ルドがダリアです。」
「はい、よくできました。君は白ぼたんです。
4人とも白い花で浄化に廻るメンバーですから、セイントと名づけました、相応しいでしょう。
黙っていると、恐ろしくも恥ずかしい名前を付けられるので、用心して先回りしました。
ちなみに白いダリアありますから。」
なんでわかった、俺がダリアは赤じゃね、と思ったのを。
そうか、もっとすごい名前があるのか、じゃあ、我慢しないとな。
「もっといい名前がありそうですが、例えば蒼穹の 」
「ルド、言うな、言わないでくれ、これで満足しているのだから。そこまではわかりました。それで国外に出るというのは。聖女の管轄ですよね、私たちは関係ないというか。」
ここで殿下は顔を顰めた、おや珍しい、そんな不味いことが。
不味かった、聖女が覚醒していなかった、それ聖女ではなく唯の女の子だろ。
ここでゲームの話になる。ある日、少女が家の近くの林を散歩していると魔獣に襲われる。逃げ惑う彼女を助ける一羽の鳥、鳥は枝で切った腕の傷を舐めてくれる(鳥の嘴で傷が舐められるのかという疑問がわくが、これは乙女ゲームだということでスルーしよう)傷が光り始め、輝きがおさまったあとには傷一つない白い腕、少女はお礼を言い、名前を付ける。はい、ここまでワンクール。
鳥は彼女の契約獣となり彼女は聖女にと覚醒しました。
「鳥が現れなかったそうだ」顔を顰めて、ため息を付く殿下。
「魔獣は出てかなりの間逃げ回っていたが、鳥は現れず、最終的には冒険者に助けてもらったそうだ。」
「その冒険者と契約してしまえ」
「髭面のおじさんは乙女心にNGだ」
さいですか、もともと浄化魔法が使えたこともあり、何とかなるかとゴーサイン。
何ともならなかったようだ。魔法の範囲は100メートル四方、発動回数は一日3回、魔石を使っても 5回。こりゃだめだ。
いまだに最初の領でがんばってるそうで、周りの騎士たちも初めのうちは彼女の我侭にも文句を言わなかったが(貴族女性として普通の要求だが、野営地でやるもんではあるまい。)
平均的魔法使いの腕しかない彼女に不満MAX、ついでに彼女に便乗して文句と要求垂れ流しのお取り巻きにも立腹と。
「陛下のご命令だ。こちらのメンバーを大々的に宣伝、広告塔にして、聖女のことはフェードアウトさせるそうだ。幸いなことにまだ国外にはでていない。麗しき白い花が4輪、さぞや民の心を安らがせるだろうと。睨むな、フェルディナンド、私ではない陛下のお言葉だ。」
[それで殿下、その鳥はどちらに」
「まったくわからない。目立つ鳥だから誰か見かけていそうなのだが、
頭にくるんとカールした冠羽が付いていて、手のひらに乗るぐらいの大きさ。尾羽は30センチもある 赤に金色の混じった美しい鳥だ。」
「それって手塚さんの描いた不死鳥の幼鳥!」
「そっくりだったよ、著作権侵害はいいのかな」
「また、変な言葉を二人で。それよりあちらはなんでしょう。」
「「「鳥だ、」」」
本当に美しい鳥だ、でも目がおかしい。あれは猛禽類の目だ。目が合い思わず腰が引けてしまうと。
文字通りすっとんできた、痛い、人の手に嘴を突き刺すなよ。
「綺麗な鳥ですね、この鳥に名前を付けるとしたら何がいいでしょう、私ならエルドナとか。」
と、のんびり言う宰相子息。
「私はアリアーナ、綺麗な名前だろう。」と、殿下。いま問題にすることはそこじゃないだろう。
「名前を考えるのはへたなんだよな、ヘルミーナ。」と、騎士団長子息。誰か俺の手を心配してくれ。
「それ従妹の名前ではないですか。」と宰相子息。
「だから、へただといっただろう。」
次は俺か3人の目が俺を見つめる、俺は名前を付けるのがへただ、苦手なんだよ。う~んと、ハムレットのヒロインがオフィーリアだったな。
だめだめ、あれは川に流されて死んじゃうんだった。
「オフィではなくてフィリアとか。」
その途端に鳥がぴろぴろぴろとさえずり、ぱぁっと光った。オクタヴィアンがニィと笑っている。図られた、あいつはやはり腹黒だ。俺はこの鳥と契約してしまったんだ。自分の間抜けさかげんに項垂れてしまう。
「気が進まないようなので後押ししてみました。」
「馬鹿やろう、そんな気遣いはいらないよ。それに浄化魔法が強くなるかわからない。」
「そこまで動揺しなくても。さすがフェルディナンド、持っている男ですね。」
「殿下、やりました、広告塔はフェルディナンドで決まりです。
白いぼたんと赤に金色の鳥、これは絵を描かせなくては。殿下と合わせてもいいですね。
国外へ出た時はにこやかにしてください、寄付金もこれならかなり見込めます。」
俺はくずおれた、なんでこいつと友達をやっているんだろう。腹黒宰相子息はやはり腹黒だった、俺は最初の警戒心をどこに置いてきてしまったのだろう。




