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商人の国1

――――――――――――

【お知らせ】

毎度『トムの店』をご利用いただき誠にありがとうございます。

この度返済の期限が近づくに当たり、お客様にお知らせをさせていただきます。


便利なコンパクトポケット×1

空間所有×2

(1つ当たり:1m×1m)

+保険料10万pin

合計100万pin


期限、今月末の24時まで受け付け。

今後ともよろしくお願いします。


―――――――――――――

―――――――――――――

【支払の通知】

ごきげんよう。

今年はいい野菜が取れるようになったから、次に来るとき野菜を用意しておこう。

メロンを作ったのだが、それはうまくいかなかったよ。



いつも『旅行屋』にご利用いただきありがとうございます。

契約金60万pin


今月末までによろしくお願いします。


―――――――――――――






便利な道具は私たちの生活において快適さをもたらしてくれる素晴らしいものです。

それが自分の持ち物ではなく人のモノである場合、私たちはそれにふさわしい対価を支払わらなければなりません。




私はポケットから取り出した赤い封筒に入った手紙を黙ってしつじさんに渡しました。


「とりあえず買いたい物もありますし、現地までいきませんか?」

「それじゃ、またここに戻って来たいからフラグ立てるよ」

そう言うとしつじさんはポケットから青い小さな旗を取り出しました。

そして、雨宿りできそうな下の地面に青い旗を立てました。


「行くよ」


しつじさんは私の手首を掴み、ぶつぶつと呟きました。

すると周りが青白い光がバッと光ったと思うと重力がぐっと全身にかかります。


次の瞬間に風景は一変しました。


私たちの目の前には大きな門の前がある橋の上にいました。



「久しぶりに来ましたね」



「商人の国」


大きな橋の上では、多くの人が突然現れたり馬車を引いて門をくぐる人もいて大いににぎわっていました。








この広いセカイの人たちは少なからず魔力というエネルギーをもっています。

戦闘でも使えるようになるのは全体の3割、魔術師というのはその中の1割にも満たしません。

ほとんどが剣や道具を使い、魔法はただの強化するおまけのようです。




そんな中でごくたまにですが、異端児といわれるイレギュラーな能力をもつ者が生まれます。


好きなところに一瞬で行ける、転移能力者。

この次元とは別の次元に空間を利用できる、空間保持者。

身体と機械の精神をつなげることができる、外科医。

周りの人に福を呼び込む、福の神。

作った物に自分の心を宿すことができる、人形技師。



唯一無二、そんな希少な存在が一人いるだけでその国独自の文明や産業が大きく特科して発展していくのです。



異端児達はその国の政府に引き取られるかそうでなければ商人になります。



商人の道を歩む彼らはその貴重で便利な能力を能力が使えない他者に"ある一定の範囲で利用できるという権限”を売ります。


まあ、簡単に言えば借用してるんです。月々の支払によって。


売る側の人間の能力は生まれた時から使える器の大きさが決まっているので、借用できる容量は限られます。

勿論借用できたとしても生理的合わないなどと、使う側の人も限られますがそれでも値段は安くはありません。



ちなみに、この場所に来た転移移動も月々レンタルしてます。






そしてこの国がそんな珍しい商人や物が集まる、商人の国。







「では私がトムの店に行くので、しつじさんは旅行屋の方にお願いします」

「終わったらこっちに来てくださいね」

私は支払い分のお金をしつじさんに渡しました。


「分かった」

しつじさんはお金を受け取ると、トコトコと一人で歩いていってしまった。




私はあまり定かでは無い記憶をなぞる様に道を進み、古びた『トムの店』と大きい看板が目につく長細い店の前までこれた。

ギシギシと音のなる引き戸を開けました。



「いやいや、いらっしゃいませお客様」

トムの店の主人、トムさんがいました。

外からの店の外装からは想像できないほど広い店内になっており、白と黒を基調としていました。


珍しい技術や品物を売る店は常に最先端や驚くべきものも売られているので、このぐらいで驚かれては田舎者と笑われてしまいます。

平常心、平常心。。


「支払いに来ました」

私は何事も無いようにトムさんに笑いかけ、支払いを済ませます。


「わざわざここまでありがとうございます」

トムさんはワックスで7:3に綺麗に髪の毛を分けて、グレーのスーツ姿で礼儀正しくカウンターで立っていました。



「ちょうど100万pinですね」

受け取ったお金を確認するわけでもなく単純に引き出しの中に居れました。


「あれ、数えないんですか?」

「ええ、お客様は嘘はついてないようですので」


本当に商人と言われる人は得体のしれないというか、どこか私たちとは違う人離れしたような印象を与えられます。


「まさか、私も人ですよ」

突然トムさんはおかしそうに笑いだしました。

私の顔はおそらく引きつっていた事でしょう。



「ごゆっくりどうぞ」

「・・・はい」





品揃えは抜群のトムの店。

主に旅の道具を専門に幅広くそろえています。



【野宿専用ベッド】 69万pin

足場の悪い場所、地面に直に敷いて使います。

旅の疲れをほぐしてくれます。

圧縮袋は別売り。

一つ上のランクのベットも販売中。


【ジャックと豆の木、垂直用・扇型用】 各5万1000pin

種を地面に埋め、水をかけると直ぐに成長します。

垂直用は上に真っすぐ、扇型は網目状に広がりながら成長します。

どっちらも3m前後、たまに当たりはずれも有り。


【再生エネルギー、あなたの嫉妬で電気が付く】1万pin

感情のこもった涙を容器に流し込みます。

喜怒哀楽どれでも可能だが、特に嫉妬の気持ちがつよければ強いほどエネルギーは大きい。


【印象リップ】 一本15万pin

あなたが発した言葉は相手の印象に強く残ります。

面接、接客、詐欺など相手へのアピールの時はぜひどうぞ。

効力は3時間、短期決戦向き。






「ん?これは?」

私は透明なガラスの中にビーズのように小さな物がたくさん詰まっている物を見つけて手を伸ばしました。



【発光虫】1瓶10万pin


「おお、お客様お目が高い!」

「おととい入荷したばかりの新商品」

「これはとある山の珍しい虫です」


いつの間にか私の横に立っていたトムさん。



「あぁ、もうすぐ日が暮れる、こんな山道でライトも無いのに・・・」


すると突然トムさんは演劇をするかのような立ち振る舞いを始めました。

何か始まったようです。



「足場も悪く、友の死を乗り超え、あぁ日が暮れる」

「そんな時!この発光虫」

「亡骸の腕を一本切り落とし、断面からこの虫を入れると」

「あらあらあら、なぜか光りだすではありませんか!」


「死体を分解するときに光る発光虫!」




「死体とこれがあれば、夜道も安心!」

「勿論、生きている人間には全く害はありません」

「間違えて飲んだり、食べたり、傷口から入ったとしてもそのまま排便されます」



「次の入荷は考えてません」


「買います!」

即決でした。


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