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掌編小説集6 (251話~300話)

繋がり

作者: 蹴沢缶九郎

ある男が医者の許を訪れ言った。


「先生、最近どうも妙な夢を見るのです」


「妙な夢ですか…」


男は重苦しい口調で語り出した。


「それは自分が人を殺してしまいそうになる夢なんです。とても恐ろしい事とは知っていますが、殺人衝動を抑えられない」


「なるほど…、もう少し具体的に話して頂けますか」


「はい、その夢を初めて見たのは二週間ほど前でした。私の前を一人の男が歩いており、私はその男を無性に殺したくなる。理由はわかりません。ですが何故か、私は今にも男に飛びかかり、首を絞めてやりたい衝動にかられる」


「その男性は知り合いの方ですか?」


「いえ、何分(なにぶん)後ろ姿だけなので、なんとも言えませんが、たぶん知らない人物だと思います」


「そうですか…」


医者はしばらく考えた後、思いもよらぬ言葉を口にした。


「殺してしまいなさい」


「え!?」


「殺してしまって大丈夫です。よろしいですか、夢とは現実世界の不満の現れです。問題は夢ではなく、現実にあり、それを取り除く事が重要なんです。夢の中で殺人を犯して、警察に捕まる事などありえません。ですから、夢世界の欲求はそのまま解放しなさい」


医者の言葉を聞いた男性は、晴れやかな表情になり言った。


「わかりました。先生の言葉を聞いて、なんだかスッとしました」


「患者さんの悩みを解決するのが我々の仕事です。一緒に問題を解決していきましょう。今日はぐっすり眠れるように薬を出しておきます。また、後日いらしてください」


「はい、どうもありがとうございました」


男は礼を言い帰っていった。



その日の夜、悪夢にうなされている医者を、隣で寝ていた男性患者の妻であり、医者の不倫相手である女が揺すり起こし言った。


「ねえ、ちょっと大丈夫!? 酷くうなされていたわよ。まるで誰かに首を絞められているような…」


医者は、乱れる呼吸を整えつつ、自分の首に触れて呟いた。


「恐ろしい夢を見た…。なんて事だ、まさしく、自分の首を絞める事になるとは…」

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