es(エス)の世界
病んでる人は注意してください
私は床一面に紅い絨毯の敷かれた部屋に豪華なベッドではなく、質素な布団で寝ていた。
その部屋は絨毯以外は真っ白い部屋だった。もちろん、布団も真っ白いシーツに包まれていた。
四角い部屋の一つの壁を向いて寝ていた私は真夜中に、夢を見たわけでもないのに突然目が覚めた。
>何時なのだろうか?
この部屋には小さな窓があるが、今晩は新月なのかほぼ全く光が入って来ない。目が慣れても白と黒の違いでさえやっと見分けられる程度の本当に濃い暗さ。
時計を見るには一回起き上がらなければならない。
しかし、布団から出ている顔や首にはひんやりとした静かな夜が乗っかっている。
>やめておこう。
就寝してからずいぶん時間がたったように感じるが、実際はきっとまだ真夜中になったところなのだ。
私は壊してしまわないように一枚の白い壁を見つめて、次の眠りがくるのを身動きをしないでじっ、と待った。
――――「 」――――
音のない音を立ててそれは入ってきた。
同時に夜が騒めき立ち、そこに作られていた精密なガラス細工の破片をそこら中に飛び散らせ突き刺した。
>ついに来たのか。
その時は長い時間が過ぎたと一瞬考えたが、短い時間だと思った。なぜなら、私の時間はそこから動き出したのだから。
私とは反対側の壁の角寄りに申し訳なさそうに張り付いた靄のような彼らは、家を探しているようにも見えた。
>彼らはいつまでそうしているのだろう?
私の意識は膨らんでいく彼らにくぎ付けになった。
興奮して高まっていく私の心と鋭く冷えていく静寂。
彼らの中の一人が私に突き刺さった破片を僅かにかすめ、向こうも私に気づいた。
その瞬間、緊迫した空気の視線がすべて私に向いたように思えた。
プレッシャーに耐えられなくなった私は彼らのことを意識しないようにした。けれど、やはり気になるので癇に障らないようにほんの少しだけ目の端に映していた。
さっきまでもぞもぞと動きながら膨らんでいた彼らは、骨董品のように固まって私のことを観察し始めたように感じた。
同じ質量の者同士、私が彼らにだけでなく彼らも私に警戒していたのだろう。
>刺激してはいけない、絶対にいけない。でも分かり合わなければならない。
底のない恐怖という高い壁を乗り越えなければ、私は彼らに蹂躙されてしまうのだ。
私というものを獲られてはいけない。
慎重にしなければという緊張感がさらに私に食い込むために尚更動くことができない。
互いに互いを刺激しないようにすれば被害を被らないと分かってきたのか、彼らはもぞもぞ動くこともするようになり、私の肺も空気が出入りするようになった。
彼らと私との間には何も会話はなかったが、相手が自分に向けて何か行動しないなら平和という沈黙の条約が結ばれた。
私が彼らをこっそり眺めるあいだ、彼らはじーーーーーっと私を見ていた。
彼らはじーーーーーっと私を見張っていた。
私は獲られないように不安の隙間に隠れていたがこれは私が彼らと分かり合えるまでずーっと続いていくのだろう。
前書きにはああ書きましたけど、そもそも私が病んでるのかもしれないですね
気になる人に↓
登場人物は超自我とリビドーです