アリィの過去
どうも。紳士です。
中学3年の時に、受験お構いなしに描いてた漫画が元です。漫画は黒歴史という名のゴミ箱へポイしました。
さて、この小説ですが、まだタイトルが決まってません。考えるの苦手で…
そしてまさかのラストも決まってません(いや、頑張って続けさせます)
…更新がすっごいスローペースになると思います。
我儘で申し訳ありませんが、最後まで付き合って貰えると嬉しいです。
時は20××年。世界が、全てが不穏だった。不景気、飢餓、人口爆発に伴い死亡率の上昇。
「全部、神のせい」
もしも理由を言っていいなら、人間 皆口々にこう言うだろう。
そう、抑々の原因は神だった。
何百年も前から、幸運、恋愛、治病…多くの好意的な象徴として崇められてきた神たち。やがて調子に乗り始め、絶対王政ならぬ絶対神政の世界になっていた。
天界から人間界、魔界に影響が及び、世界が廃れていた。
一方、消極的な象徴として忌み嫌われてきた悪魔達は反対に自虐的な性格となってしまい、人の前に現れなくなった。
この悪魔達の事もあり、ますます神の思い通りの社会になってしまった。
始めは人間らも抗ったが、神の力に敵うわけもなく、次第に抵抗する者もいなくなっていった。
誰もが、この社会が早く終わればいいと思っていた。
「…そう思うだけで、結局何も実行しないのよ」
廃墟と化したビルの屋上でモフモフしたものを抱きながら、女の子は言った。
金の巻き髪をツインテールにし、頭には小さなシルクハット、サーカスを連想させるベストとスカートに杖。スカートもプリーツごとに違う柄。
一見可愛いのだが、モフモフを体育座りで抱いて、パンツが見えるのもお構いなしにしているのが外見よりも幼くみえる。
「そして私も、そいつらと同じ…」
女の子がそう言いかけると、胸に抱いていた『モフモフ』が女の子から飛び降り、足元へ着地した。
「アリィはちゃうやろ!儂らと契約しただけでもう…!」
「ありがとう。ステラ」
アリィと呼ばれた女の子は微笑んだ。
『モフモフ』…ステラは、猫のような耳に橙色のモフモフたてがみ、細い尻尾の先にモフモフがついている、少々ライオンの面影がある生物だ。二本足なところ以外は。
「大体あいつが悪いんや!あいつがアリィを捨てへんかったら、アリィが孤児になることも立場が悪くなることも…」
「ステラ!」
もう一匹、アリィの足元に居た『サラサラ』がステラを止める。
「あいつの話はしないでって言ってるでしょ」
アリィはそう言いながら立ち上がり、スカートに付いた埃を払い落とす。
『サラサラ』はステラに軽く蹴りを入れる。
「ああ、いいよミント。ステラも悪気があった訳じゃないし」
アリィがそう言うと、ステラが嬉しそうにした。
ミントと呼ばれた生物は、ステラと似た風貌で、青緑のサラサラなたてがみ、細い尻尾の先にサラサラがついている。
あいつーー…思い出したくもない、私の3つ上の兄。まだ私が6歳になるかならないかの頃。
兄は私を捨てた。
冷たい雨が全身を打つ中、何度兄の名前を呼んだことか。頬を伝う水滴が雨なのか涙なのか分からなくなるくらいに。
兄は1度も振り返らずに、雨と闇に消えていった。
捨てた理由も分からない。捨てたという事実も分かってなかった幼い私は、それでも兄を信じた。
3歳の時に両親を亡くしている私は、信じることしかできなかった。
「すぐお迎え来るもん」
辛くても、この一言で乗り切れた。
母の形見である小さな帽子も、1人の夜を安心させてくれた。
ーーーしかし、2日待っても、3日待っても、兄は来なかった。
栄養失調で、それでも倒れまいと、兄が来ても心配しないように、と必死で座っていた。濃い隈、虫の息、力が入らない手足。そんな私の目に、到頭人影が映った。モノクロだった視界が一気に色付いた。
「お に……ちゃ………」
かすれ声で呼びかけ、上を向く。
視界がモノクロに戻った。兄ではなかった。
私の目の前に立つその男は、鎖骨付近に蛇の入墨、よれたコート、希望のない瞳、ボロボロの黒いカラスの羽…もっと小さい頃、絵本で見た悪魔そのものだった。
「……ぁ…………」
小さく出たそれは、私の精一杯の叫びだった。
殺される。反射的にその言葉が脳裏に浮かぶ。しかし、逃げることもできない。
形見の帽子を握ることしかできなかった。
死を覚悟し、力無く目を瞑る。
すると、目を瞑ったことで疲労感がどっと流れ込んできた。私はそのまま気を失ってしまった。
ふわり、と美味しそうな匂いで私は目が覚めた。むくりと起き上がった私の目に飛び込んできたのは、上半身裸で近づいてくるさっきの悪魔の姿だった。
私はベッドの上。身の危険を感じ、でも恐怖で動くこともできない。
悪魔が手を伸ばしてきた。
ぎゅっと目を瞑る。
何をされるの……っ!?
ぴとっ
悪魔が触れたのは私の額だった。
「……へ?」
額というより、悪魔の手が大きいので頭半分を、といったほうが正確か。
「熱も無ぇし、ビックリする位の元気もついたようだな。ほら」
と、その悪魔は狐色のスープを渡した。
頭の上にハテナマークが沢山浮かんできたが、分かっていることを確認のため悪魔に言う。
「……変態悪魔?」
表情を変えず私を見据えていた悪魔もこの言葉は想像してなかったようで、目を丸くし、ぶっと吹き出した。
「…命の恩人に対しての一言目がそれか」
むすっとした男は、まぁいいと言いながらカチャカチャと引き出しから何かを探していた。
「言っとくが、丁度風呂から上がっただけだ。襲うとかそんなん考えるか馬鹿が。…取り敢えずそれ飲め。久しぶりに人間用に作ったからな。口に合わんかもしれないが、栄養はあるはずだ」
探し当てた小さな金属スプーンを私に投げてよこした。
少し警戒したが、冗談抜きで死ぬ寸前だったので、スープを一口飲んだ。
……おいしい。少ししょっぱいコンソメスープだった。ゆっくり、すぐに無くならないように飲んで…
「スープはまだあるから別にそんなにゆっくり…」
「おかわり‼︎」
悪魔の言葉を聞くや否やスープを一気に胃に流し込んで皿を突き出した。
4杯目のスープを飲んでいると、悪魔が
話し始めた。
「お前の兄…ギルティアのことだが」