第三十九話:明かされる謎、残る謎
いよいよビーズの謎、公開です。
このビーズがどんな物なのか、その全貌が、いよいよ俺に告げられる。
早く知りたい、でも知ってしまうのが勿体ない。俺の脳内でそんな矛盾が交錯する中、末砂記は早速気になるそれを語り始めた。
「このビーズはね、テグスに通した日に起こった使用者にとって悪い事を吸収して、幸福に変換するの。一言で言うと不幸の分だけ幸福が訪れる。でも幸福の概念は人それぞれだから、心が汚い人にこれが渡ると世界が目茶苦茶になっちゃうかも知れない。
だから私は絶対に信用出来て、尚且つ不幸に見舞われていたヒタッチ、オタちゃん、そして優成にこれを渡したの。
一日一粒ずつなのは、ビーズ一粒の記録容量が一日だから。
わざわざテグスに通して手芸作品を作ってもらってるのは、それに通す事で使用者の不幸な記憶を読み取るのと、作品を一つ作り上げるとボーナスとして生きている間に訪れる幸福が、その作品に使った粒の数の二倍訪れる事が保証されるの」
あれ? 何だか単純で随分都合良くないか? と思いつつ話の続きを聞く。
ってか幸福を保証? 確かに幸福感はあったが。
「あの〜、質問です」
「なぁに?」
「なんでそんな物を未砂記の姉さんが?」
問い掛けると未砂記は、ぽか〜んと困った顔をした。
「………きっと、姉貴は魔法使いだったんだよ! そうそう! うん! きっと!」
うわ〜、何の根拠もねぇよ。
「せめて姉貴をあっちの世界から呼べればなぁ。でも幸せを享受するのって、人、もしかしたら動物にとっても永久の課題だよね。それを手に入れられるなんて凄いよ」
確かに、幸せというものには結論などないだろうし、感じ方も人それぞれだ。ただ一つ、結論があるとすれば、それは不平や不満、満たされない気持ちがあって初めて成り立つもの。だろうか。
それを手にする自体凄い事で、幸せな事だ。
そういえばこのビーズ、未砂記の姉さんの形見だとか。
「あとね、このビーズには禁忌があるの。それは作品を仕上げる前に投げ出したり、壊したりする事。もしそんな事したら大変な事になるらしいから、最後まで頑張ってね。出来上がったら捨てたり故意に壊さなければ大丈夫だから」
「え? それだけ?」
他に何かあるの? とでも言いたげに未砂記は目を丸くして答えた。
「うん、そんだけ」
じゃあ暫く俺は幸せ?
でももし禁忌を破ったらどんな大変な事が? 未砂記も何が起こるかは知らなそうだ。どのみち俺にとって不幸な事には変わりないだろうが。
念のため何が起こるか尋ねた。何度か本当に知らないの?と、念を押したが未砂記はそれでも頑なに答えなかった。きっと教えられない程の何かがある。俺の勘がそう告げている。
次回は無事にビーズを完成させたオタちゃんの話です。
実は新作小説を幾つか貯めていまして、この小説が終わったらどれを公開するか迷ってます(ノ_・。)