第三十六話:今年もよろしくね
今年は白組の優勝か。
間もなく終わりを告げる2007年。紅白歌合戦が終わった後の、かなり大きな音だが、静けさを漂わすあの除夜の鐘の音に郷愁を感じる。今年はそれに加え雪景色だ。
俺の家では燃え盛る炎の中に人が飛び込む番組か、歌番組で新年を迎えていた。今年は未砂記の家で新年を迎える事になる。今回は音楽番組で新年を迎える事にした。この音楽番組は、正に新年のカウントダウンに相応しい番組名だ。
未砂記の家のテレビは地デジなので、今テレビに映っている時間空間と実際の時間に約2秒のラグタイムがある。アナログ視聴者より少し、ほんの一瞬だけ遅い年明けを実感するのだろう。
年明けまであと一分を切った。ソファーで寛ぐ俺の隣には、未砂記が内股でちょこんと黙って座っている。
おっ…。
『今年』が残り十秒を切った時、未砂記が俺の右腕を捕まえ、自身の胸に寄せた。俺は敢えて反応を表に出さず、黙っていた。
ごぉ、よん、さん、にぃ、いち…。
「わ〜い、あけおめぇ〜、今年は優成と密着して年越したぁ〜、今年もよろしくね!」
「あけおめことよろ〜」
こういう時にハイテンションになれない俺。
未砂記と迎えた新年。年越しそのものは何だか呆気ない2008年だったが、俺にとって、きっと未砂記にとっても一生忘れない瞬間になるだろう。この瞬間、さっきまで『今年』だった2008年は『去年』になった。
やっべぇ、眠くなってきた。いつもはこの番組が終わる迄は起きてるのに…。
このまま未砂記に寄り掛かっちゃおうかな…。
いや駄目だ、このまま寝たら初日の出が見れなくなる。
「優成ぃ、眠いんでしょ」
「あぁ、」
日頃から眠そうな顔してる俺が本気で眠いのをよく見破ったな。
「やっぱり、でも寝かせないから」
少し強気な口調だ。
「いや、まぁ寝たくはないんだけど…」
はふっ!
「っ!…」
何を思ったか、未砂記は急にキスをしてきた。その場のノリで未砂記の左肩甲骨を押さえて抱き寄せ、舌を絡めてみる。それが息継ぎをしながら何分間か続いた。
「目ぇ覚めた?」
そう言って、未砂記は俺の表情をうかがった。
あぁ、それが狙いか。
「覚めたかも、その先はダメ?」
すっかり目が覚め、下の方は異常に元気だ。
「その先やったら疲れて寝ちゃうでしょ?」
「はい」
「あっ、ちょっと部屋行って来るね」
未砂記は何かを思い出したようだった。
何だか訳分かんない年明けだなぁ。
「あっ、ちょっと部屋行って来るね」
それにしても軽いキスだなぁ。いや、未砂記は一見ただの馬鹿で無駄に騒がしい女だが、芯は俺よりずっとしっかりしている。きっと彼女なりの理由はあるのだろう。
◇◇◇
しばらくテレビを眺めながらボッとしてると、いつの間にか未砂記が自分の部屋から戻っていた。
「優成ぃ、年賀状あげる」
未砂記がそっと差し出したのは、大掃除の時に俺が引き出しから見つけた、ハート形のシールで封をされた手紙だった。
あけましておめでとうございますm(_ _)m
ただいま当作品では、お正月編をお送りしています。
お正月編が終わると、昨年七月から始まり、そこそこ長く続いたこの作品は、いよいよビーズの意味を公開する等、最終回に向けて動き出す予定です。




