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いちにちひとつぶ  作者: おじぃ
ラブコメ編
22/52

第二十二話:ミンミンゼミみたいに鳴くアブラゼミも居る

サブタイトルと本編の関連性は殆どありませんので予めご了承下さいm(_ _)m

 すっかり酔い潰れた彼。普段クールな彼。しかし酔い潰れると平静な時は絶対に言わないような本音を何の躊躇いもなく言います。私はそれが楽しみなのです。


「未砂記ぃ…? そこに居るのはだぁれ? あっ、みしゃきちゃんだぁ〜」


 意味不明です。人格が変わってます。それともこれが彼の本性?


 彼は酔ってる。そこで私は思い切って彼は私が好きなのか訊いてみる。


「ねぇ優成ぃ、あのさ…あの…私の事、好き?」


「ん〜? 好き! だぁ〜いちゅきでちゅよぉ? みちゃきが居ない人生なんて有り得まちぇ〜ん!」


 良かった。ちゃんと好きでいてくれたんだ。


 彼のその言葉で私は自然に表情が柔らかくなりました。


「未砂記ぃ、ごめんね、俺のせいで…。でも俺は、未砂記が好き。責任とか関係ない」


 やっぱり彼の心の底にはあの事件が引っ掛かっているようです。


「気にすんなよ。そんなの。私は優成が傍に居てくれるだけで最高に幸せだよ」


 事件の責任なんて関係なく私の事が好き。本当に良かった。私の最大の悩みはあっさり解決しました。


「ありがとう! 本当にありがとう! 未砂記」


 その夜、私には新しいノルマが出来ました。それは彼が背負っている不要な事件の責任感を取り払う事。そんな事気にしないで接して欲しいし、何よりずっと彼を苦しめてきた父親のせいであんな事になったのだから。一番の被害者は刺された私ではなく彼なのだから。


 彼も過去の私のように辛い現実を背負っている。彼にだってそろそろ幸せが来たっていいじゃない。だから…。


「よ〜し! 私も呑むぞぉー! ワインの次はチューハイだぁー!! 果物バラダイスだぁー!!」


「お〜う! 呑んで呑んで潰れるじょ〜!! みしゃきぃ〜!!」


 こうして二人は夜明け前まで暴れた。しかし優成はいつのまにか眠ってしまったようです。


 ◇◇◇


 気が付けば午前五時。


 …俺、いつの間に…?


「ふぁぁぁ…」


 呑んだ時の記憶がねぇ…。


 未砂記、酔ってるなぁ。何か歌ってる。


「み〜んみんうるさいぞぉ〜私は鳴いちゃう雌のせみぃ〜彼は鳴かない雄のせみぃ〜♪♪」


 相変わらず意味不明だ…。


 一曲歌い終えてまた一曲。またセミの歌?


「みんみんぜみぜみあぶらぜみぃ〜♪♪ 私の前世はあぶらぜみぃ〜♪♪ うるさいしつこい暑苦しい〜♪♪ ごめんねこんなカノジョでぇ〜!!」


 そんな未砂記が好きなんだからわざわざカタツムリの歌の替え歌で謝んなくても…。ってか未砂記ってセミ好きなのかなぁ?


 うっ、気持ち悪…。二日酔いだ。飲み物買ってこよ…。


 そういえば俺、酔ってる間なんか変な事言わなかっただろうな?


 飲み物買って帰ると、未砂記は自分の部屋のベッドで寝ていた。気が付けばもう昼。毎年恒例のあの昼ドラでも見るか…


「おはようじむし〜。」


 短い睡眠を終え、未砂記が起きてきた。二日酔いの時にウジムシとかやめろよ…。


「こんにちは。冷蔵庫にアミノ酸入りの飲み物入れといたよ」


「ありがと〜気が利くね〜」


 夕方からここで勉強会。オタちゃんと大甕おおみか、そして新しく俺らの仲間に加わった石神井しゃくじいさんが来た。


シャンシャンシャンシャン…。


「ウナァーン。ナャーン。ニャッ!」


 大甕たちが家の中に入ってきた時、どこかに隠れていたネコがみんなの輪の内に入って来た。


 そして俺を除くみんなの膝にズリズリした。


 あ〜そうですか。どうせ俺なんて…。


「あっ、石神井さんだね!? はじめましてぇ〜!! 未砂記です! よろしくっ!」


「はいっ、はじめまして。石神井さやかです。よろしくお願いします」


 未砂記は同じ学校なので顔は知っていたようだ。


「でさ、二人とも、酒臭いよ?」


「うん。確かに大甕さんの言うように…」


「失礼ですが、私もそんな気が…」


「だって、夜明け前まで呑んだもん!」


「うん。なんだか眠くなってきた」


 結局俺と未砂記は寝てしまい、勉強会は三人だけでやったようだ。


 ◇◇◇


 ここから先は僕、小田博文オタちゃんがナレーション。


 勉強会を適当な所で切り上げ、大甕さんはキッチンを勝手に使って食事の準備を始めた。部屋には僕と石神井さん。僕と石神井さんは小学校からの知り合い。お互いに遠慮せず話が出来る数少ない人の一人。久しぶりに会った時は顔を見ても誰だか分からなかったけどそれはそれ。


「ねぇ小田君、ちょっと話があるんだけど、いいかな?」


「どうしたの?」


 何だろう? かなり不安げな表情だ。


「あの…実はね…」


 彼女の相談内容は僕が想像もしなかった、いや、出来る訳無い事だった。


「そう…か…。本当なんだね?」


「うん。…どうしよう。小田君、どうすればいいの…?」


「大丈夫だよ。きっと分かってくれる。よく話してくれたね」


 とは言ったものの、これは大変なんてもんじゃない。僕がその立場だったらきっとストレスで死んじゃう。彼女を救うにはどうすれば…? 早くどうにかしてあげないと。掛け替えのない友達を見捨てるなんて出来ないよ。

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