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いちにちひとつぶ  作者: おじぃ
複雑な日常と青春
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第ニ話:宮下家の事情

 あれから数ヶ月、気が付けばもう夏だ。俺はすっかり毎日ビーズを紡いでいくのが習慣となっていた。


 ビーズ細工をいくつか作っているが仙石原に、変わらないなぁと言われるばかり。俺の不器用具合に呆れているのだろうか。そもそも半ば無理矢理作っている物で、あまり力を入れて作っているわけではなかった。


 今日から三連休で学校が休み。台風が近付いているとのことで、外出は避けた。心身共に不健康な一日だ。


 リビングでは父親とは思いたくない男、正人(まさと)が一人でテレビを見ていた。


 宮下家の家族構成は祖父、祖母、母、俺(優成)、妹の瑞穂(みずほ)、ネコという名前の猫、そして家族とも父親とも認めていない正人だ。


 ネコという名前の猫とは、いくら拾ってきた猫とはいえ随分ぞんざいな扱いだ。もっとも名前を付けたのは俺だが…。


 この家庭では正人がいる所には肉親の祖父と祖母以外は近寄らない。近付いてきても避けるのだ。その理由は後々少しずつ明らかになっていくだろう。


 その日の夕方、外は強い雨が降っていた。今回接近している台風はかなり強いということで、仕事を終えて濡れて帰ってきた母は、濡れたついでに庭にある祖父が大事に育てている植物を家の中に避難させていた。


 翌日、思っている程この辺りに台風の影響はなかった。正人は外出していて家庭には、つかの間の平和が訪れていた。夕方になると、母と俺は昨日屋内に避難させていた植物たちを庭に戻そうとしていた。


 母は特に家の二階まで届く、背の高い向日葵(ひまわり)の扱いには注意するように俺に注意喚起していた。


 母と共に植物を戻そうとした時、正人が帰ってきてしまった。


「俺もやる」


 正人が母に言った。


「何もしなくていいから帰って来ないで!!」


 母が言うと正人は、何だよそれ訳分かんないよと言って意地を張り、一番大きい向日葵を持ち上げ外に出そうとした。


 その時、恐れていた事態が起きてしまった。持ち上げられた向日葵の頭が天井に押し付けられ折れてしまったのだ。


 後にそれを知った祖父は、折角大事に育てたのに、向日葵だって生きているんだ!! と、悔しさより悲しさで心がいっぱいになっていた。


 割と冷めた性格の俺にも、その気持ちは大いに伝わってきた。


 確かに植物は生きている。だからこそ向日葵は太陽に向かって朝は東に、夕方は西に頭を向けるのだ。

そんな様子を観察していると、小さな愛情すら芽生えてくる。冷めた人間にだって情くらいはあるのだ。少なくとも俺には。


 その夜、オタちゃんから明日電車でどこかに出掛けようと誘われた。気分がモヤモヤしていて気分転換をしたいところなので、快く誘いに乗った。電話を済ませると、いつも通りビーズをテグスに一粒だけ通し、少し漫画を読んで眠った。

今回は優成とその家族にスポットを当ててみました。今後は他のキャラクターにもスポットを当て、話が深くなって行きますので、是非ご覧下さいm(_ _)m

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