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契約神霊と霊術師  作者: 瀬乃そそぎ
第二章 魔術学園編 Nullam_turpis_Edition
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#8 初日Ⅳ Primo_dieⅣ

 アウラの言葉に、北條達は一等級の教室を出て別の教室に移動していた。辿り着いたのは術装室じゅそうしつ一。一と言う事はやはりこの部屋も幾つかあるのだろう。

 中は普通の教室と殆ど同じ構造になっていて、違う所といえば教壇の周りに広いスペースがあり、教卓の上には、何枚か重ねられた厚さ三ミリメートル程の透明の板が置かれている。


「ちょっと待ってくれ、この学園どれだけ広いんだよ? こんくらいの部屋がまだ幾つもあるんでしょ? 一人で歩いたら絶対に迷う気しかしないんだけど」


「ここはあくまで一学年の階層だよ。この学園――と言うより魔術学園は大抵四年制だから、この規模の階層が四階まである。本当に広いよねえ」


 北條の言葉に、近くにいたシーナが両手を後ろに回して室内を見渡しながらそう言った。

 この学園の部屋には所々『空間操作魔術』と呼ばれる超高度な術式が施されているところもあるが、それを差し引いてもかなりの広さを誇っていた。

 設備も上等。

 授業に使うための術装も揃っている。

 まさに充実した学園と言っていいだろう。


「あそこに重ねて置いてあるのは術装。アレは魔力量を示すものだから、実技試験って言うよりかは検査だね」


「まあ、二・三時限目って言ってたし。他にも何かあるんじゃない?」


「そうだろうねぇ。でもあたし、魔力量にはあまり自信ないんだよねえ」


「へぇ。これまたどうして? 確か等級検査には魔力量も関わって来るって聞いてたんだけど……」


「あたしの場合自分で言うのもアレだけど、一等級になれたのは魔力量って言うより技術面の方が大きかったんじゃないかなあって。霊力と魔力を同時に持ってる所為で、その合計は多くてもそれぞれの量はそこまで多いわけじゃないんだよね」


「……でもシーナはまだいいでしょ。僕なんてきっと、また魔力がないから反応してもらえないんだよ。いつしかの魔法石みたいにさ」


「それは仕方ないよ。それよりさ、あたし教えてくれる人がいなかったから今まで手を出さなかったんだけど、近いうちに霊術教えてよ!」


「あぁ、そうか……。分かったよ。休みの日とかでいいなら付き合うよ」


 苦笑する北條の言葉にシーナが小さくガッツポーズをした。

 彼女の場合、契約した霊獣もいなければ、霊獣だった親も既に死んでしまっている。教えてもらえる相手が居なかったのだろう。


「やったね。それじゃあよろしくね?」


「上手く教えられるかはわからないけどね」


 北條も、全ての属性が完璧という訳ではない。元々炎と氷を司る神霊イヴに霊術を教わったため、その二属性は完璧と言える程の実力を持つが、その属性以外は至って普通である。

 魔術の修練の合間に霊術の他属性にも手を付けようと思い至った北條。

 その直後、アウラが手を叩いた。


「はい、こっちに注目してね。実技とか言ったけど、これからするのは貴方達の魔力量測定。名前を呼ばれた者から前に来てこのプレートを手に取って。これまた五段階に分かれてて、AからEまで測れるの」


 どうやら緊張感というものは一周回って何処かに行ったらしい。噛む事なくスラスラと説明を終えたアウラは満足気な表情を浮かべると、生徒の名前を呼び始めた。


「……で、僕はやっぱり最低ランクのEなんだろうね」


 そんな中、北條は相変わらずといった表情で肩を落として呟いた。

 あの術装もおそらく魔力によって作用するモノだろう。だとすれば、霊力しか持っていない、魔力がない北條やイヴがどれだけ触ったところで反応無しの透明だ。


「仕方がないですイツキ様。術を使えば右に出る者はいないのですから、気にする必用はありませんよ。……それとも、やはり私何かと契約しなかったほうが良かったですか……?」 


 薄らと涙で潤ませた目を北條に向けるイヴ。


「だぁーっ! そんな訳ないでしょ。本当に感謝してるんだからその涙で濡れた顔を僕の制服に擦りつけたりしないでーっ!」


 くっついて来るイヴを剥がしながら、自分たちの番を待つこと数分。

 やがて彼の出番はやって来て、アウラに言われた通りにプレートにその手を触れた。


「……はい。分かってましたよ覚悟してましたよ」


 やはり反応無しの透明のまま。魔力を持たない北條は相手にもしてくれないらしい。

 プレートを睨みつける北條を見てアウラはクスリと笑うと、耳元に顔を近付けて小さく呟いた。


「大丈夫だよ。私は貴方が凄いこと、学園長に聞いてるから」


「ひうっ!」


 耳に吹き掛かる吐息を感じて身体を震わせた北條を笑うアウラ。イヴの険しい視線をスルーしてそのまま続ける。


「あの学園長があんなにベタ褒めするんだもん。相当な魔術師なんだよね? ……等級とか魔力量とかは訳あって低いんでしょ?」


 無情にも最低ランクのEを示したプレートを指でつつきながら笑う。

 対する北條は話していい所と悪い所を見極めながら、


「まぁ、そんな感じです」


「うふふ。この後の実技演習も楽しみにしてるよ」


「……へ? 実技演習?」




 という事で三時限目。

 場所を移動していつしかの修練場一――ではなく修練場Ⅱに来ていた。

 どういう訳か修練場Ⅱの方が修練場一よりも広い。壁に例の灰色の素材――一等級程の威力の術なら防ぐと言われるモノが使われていないからだろうか。

 一等級の集まりがわざわざⅢ等級までの術しか防げない素材で出来た狭い空間に行くくらいならば、そうでなくとも広い場所を選んでもおかしくない。

 ――修練場一は決して狭くはないが、比較の問題である。


「凄いなあ、屋内が外みたいだ……」


「イツキ、その発言は矛盾しすぎてるの。屋内なのか外なのか分からないの」


「あ、あはは。でも、実際にそんな感じじゃない? 土、草、木……ジオラマの中にいるみたいだ」


 修練場二は、言ってしまえば平原だった。

 確実に空間操作魔術を使っているだろう広大な草原を見て驚く北條。周りの生徒も、広がる草原を見て驚きを隠せないでいる様だ。


「それではこれから実技演習を開始します。ここには今から魔力変換フィールドって言う、身体的ダメージを魔力の消費で代わりに受け継ぐ結界を生み出すから、思う存分ハッスルしてね。相手は私を含めた職員五人」


 アウラはそう言うと、いつの間にか姿を現した職員五人を手で指し示しながら笑った。


「……隠蔽術式ですか」


「あらイヴさん、ご名答~」


「セリアには何倍も劣りますわね」


「あの人と比べないで! あの人闇属性魔術の超人なんだから!」


 イヴの毒舌に涙目で訴えるアウラ。反応を見るに、今の隠蔽術式はアウラが施したものなのだろう。


「コ、コホン。それじゃあ気を取り直して」


 アウラはニヤリと笑うと、手をパンと鳴らして言った。


「使用する魔術は自由。さあ、掛かってきなさい」





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