第5話#我慢できないよ
ナナちゃんから言われたコトバは、
『1日中、てつを無視して』
というのだけだった。アタシは1日だけ?それだけ?と思っていた。最初は。
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無視って結構難しいかもしれない。好きな人と話せない。話しに行けない。でもそれが普通なのかもしれない。だって、哲也の彼女はナナちゃんだから・・・。
アタシじゃないから。邪魔されても大丈夫。たった1日。ほんの少し――・・・。
「じゃあ、今日貸そうとしてるCDアタシに貸して」
「だっだめ!!!」
だめだよ。これだけは・・・。約束をしたから・・・。
「じゃあ、ばらしていいの?」
「貸す・・・よ」
約束だけど、ごめんね。まだキミを好きでいさせて?だって、もしバレたら、キミを見れないから。キミを好きでいられなくなるから。
「ありがとー。てつに貸してもらったって言ってくる」
「それだけはやめて!」
「そんな約束してないでしょ?」
ナナちゃん・・・。もう前のナナちゃんなんかじゃない。まるで別の人みたい。
「あっ。てつこんな所にいたー」
「これオレ好きなんだ」
「このCDね、」
やめて!!!
「麗菜ちゃんが貸してくれたの」
もうヤダ。許せない。いくら・・・ナナちゃんでも。もうどう思われたっていい、“ヘンナヤツ”でいい、もう我慢できない。
「えっ?それってオレが今日貸してもらうはずの・・・・」
言われるくらいなら言ってやる。
「麗菜ちゃんて、てつを好きなんだって〜」
このやろ〜。
「あぁ、そうだよ。それが何?ナナちゃんなんかよりもずっと前から好きだった。ナナちゃんにおどされてた!好きになっちゃいけなかった?」
全部吐き出した。キミを好きでいられるなら、ヘンナヤツでもいいかな。