表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

1話

確かに学校が終わって、帰宅して、部屋で寝たはずだった。

目を開けると、そこは見慣れた六畳の天井ではなかった。

背中に硬さを感じる。固めのクッションのベンチだ。

ゆっくり起き上がると、吹き抜けの高い天井と、等間隔に並ぶ白い照明が目に入った。

無印のロゴ。ZARAのマネキン。遠くに見えるフードコートの看板。

……ここはショッピングモール?

寝る前に着ていた、少しくたびれた無地の半袖と短パンのままだった。

裸足。当然スマホも財布もない。

さすがにこの格好でうろつくには羞恥心を感じる服装だ。

そう思って辺りを見回したところで、ようやく気づいた。

——人がいない。

買い物客どころか、店員も、警備員も、だれ一人もいない。

照明はすべて点いている。

エスカレーターも動いている。

だが、足音がしない。

自分の呼吸音だけがやけに大きく感じた。

「……閉店後?」

いや、そんな雰囲気じゃない。

シャッターは開いているし、BGMも流れている。

——流れているはずなのに、音楽のメロディが微妙におかしい。

知っている曲のはずなのに、どこか逆再生のように聞こえる。

ぞわりとした。

とはいえ、立ち止まっていても仕方がない。

出口を探そう。

ショッピングモールならば館内図があれば場所は分かる。

場所が分かれば帰れる。たぶん。

裸足のまま歩き出す。

タイルの冷たさが足裏に刺さる。

やけに広い。

近所のイオンなら、もう出口の一つくらい見えてもいい頃だ。

だが、歩けど歩けど、ガラス扉も案内板も見当たらない。

(……出口なくない?)

同じ場所を回っているわけではない。

確実に違う店の前を通っている。

それなのに、出口がない。

案内板すら見当たらない。

「いくら何でもおかしいだろ。設計どうなってんだよ……」

気づけば一時間は歩いていた。

ほんとーに、なかった。

ふと、頭に浮かぶ。

(そもそも、これ夢じゃない?)

家で寝ていた。

今はショッピングモール。

人はいない。

むしろ夢以外に説明つかなくない?

「じゃあ、好きにしていいよね」

急に気が楽になった。

先程、通った靴屋に入る。

前から欲しかったブランドのスニーカーが並んでいる。

そのなかから普段はいているサイズの靴を手に取った。

「夢だし」

とおもってその靴を履いて店を後にした。

次に自分の貯金では手に入らない服屋に入る。

ファッションショーを一人で開催する。

「夢だし」

とおもって一番気に入った服に着替える。

生まれて十数年。穢れない綺麗な経歴に窃盗罪が追加されたが、夢なのでセーフ。

そういうことにした。

次は家具屋。

夢の中で寝たら覚めるかもしれない。

ワンチャンある。

「お値段以上」の店で、一番値段が高そうなベッドに潜り込む。

天井の照明が、やけに白く感じた。

静かすぎる。

……いや、静かじゃない。

微かなノイズが聞こえる。

耳鳴り?

いや違う。

天井のスピーカーだ。

——ザ、ザザ……。

『ログイン認証……失敗しました』

その声に、聞き覚えがあった。

私の声だった。

心臓が跳ねる。

「……は?」

夢、じゃない?

恐る恐る目を閉じる。

意識が沈む。

そして——目が覚めた。

さっきと同じ天井。

同じ照明。

同じ静寂。

服も、靴も、変わらない。

(夢じゃなかった)

その瞬間、背中に冷たい汗が流れた。

ここは——

本当に、どこなんだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ