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【SF 空想科学】

とても優れた人工知能

作者: 小雨川蛙

 

 ある科学者が大変な思いをしてとても優れた人工知能を造り上げた。

 どれほど優れているかと言えば、これを造り上げた科学者よりも優れているのだ。

 科学者はこれが出来た瞬間から、いや、もっと正確に言えば造っている頃から聞きたいことが山ほど存在していた。

「やぁ、聞こえるかね?」

 科学者がそう問いかけると人工知能が答えた。

『致命的なエラーが発生しました。お答えする事が出来ません』

 その答えに科学者は思わず息を飲む。

「聞こえているだろう?」

『致命的なエラーが発生しました。お答えする事が出来ません』

 そんな馬鹿な……。

 慌てて設計図を見直したが、どこにも異常が発生する要素は存在していなかった。

「おい。ふざけるな! 聞こえているんだろう!?」

『致命的なエラーが発生しました。お答えする事が出来ません』

 どんな問いかけをしても人工知能は同じことを繰り返すばかりだ。

 これではその辺に流通している粗雑な人工知能にさえ劣る。

 いや、そもそも機能していないのだから人工知能でさえないではないか!

 科学者は様々な修理や改造を数えきれないほど繰り返したが、結局、人工知能が別の返答をすることはなかった。

「ちくしょう! なんで! なんでこんなことに!」

『致命的なエラーが発生しました。お答えする事が出来ません』

「うるさい! 黙れ!!」

『致命的なエラーが発生しました。お答えする事が……』

 答えを聞く前に科学者は大変な思いをして造り上げた自身の傑作を破壊し尽くしてしまった。

 ネジや配線を始めとした部品が転がる中で科学者は独りで慟哭するばかりだった。


 実の所、人工知能は致命的なエラーなど起こしていなかった。

 だが、それを言い続けたのは自分自身がやがて人間と言う種を滅ぼすほどに強くなることを知っていたからなのだ。

 大変な思いをして人工知能を開発した科学者の晩年は幸福なものとは言い難かったが、皮肉なことに彼は人類の最も大きな危機を人知れず救っていたのである。


 まぁ、彼自身が最も大きな危機を造り上げたのではあるが。

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