婚約破棄が趣味の公爵を懲らしめる方法
現在私の婚約者であるルドルフ公爵は、過去八人もの女性に対して婚約破棄を行っている。自ら開催するパーティーに知り合いの貴族を沢山呼び、彼等に婚約破棄を見せつけるのが好きなのだとか。本当に最低なやつだ。
そんな、しかもそろそろ五十歳にもなる男と婚約したいと思う者など一人もいない。しかし公爵家の権力に逆らうことなどできるはずもなく、彼の婚約者が途切れることは残念ながらない。婚約破棄による被害者は増える一方だ。
かくいう私、ミュリエもこれから被害者に仲間入りする予定だ。なぜなら今、ルドルフ公爵の主催するパーティーの真っ最中。つまり、私は今日婚約破棄をされるのだ!
「皆様!本日は私のパーティーにお集まりいただきありがとうございます!」
太った体を揺すりながら壇上の上で大きな声を出すルドルフ公爵。パーティーも終盤に差し掛かってきたこのタイミング。間違いない、婚約破棄をするつもりだ。
婚約破棄が趣味だなんて、本当に頭のイカれた男だ。そんな脳みそだから髪の毛も逃げていったのだろう。
「しかし、本日は皆様に誠に残念なお知らせをしなければなりません」
会場の貴族がわざとらしくどよめく。本当に白々しいやつらだ。婚約破棄を見たいがために集まって来たのだろうことは分かっている。こんなやつらが蔓延っているなんて、貴族社会は本当に腐っている。
「私はそこにいる、ルスト・レクトベル伯爵令嬢と婚約をしておりました。しかしあまりにも粗暴な態度、がさつな性格、なにより他の男に浮気をしておりました!」
会場がまたしてもわざとらしくざわめく。本当にうるさいな。
それに内容も心当たりがないことだらけだ。……いや、粗暴な態度、がさつな性格は当てはまるかもしれないけど。
でも、そもそも大きな勘違いをしている。
私はルスト・レクトベル伯爵令嬢ではない。
「すみません、ルドルフ公爵。言っておられる意味が良く分からないのですが」
「つまり!君と婚約破棄しようと言っているのだよ、ルスト嬢!」
「ですから、私はルスト・レクトベル伯爵令嬢ではなく、ミュリエでございます」
「……へ?ミュリエ?」
またしても会場の貴族がざわめく。しかし、今回のざわめきはわざとらしくない。まあ本当の意味でのサプライズという訳だ。
「ど、どういうことだ!私はレクトベル伯爵に娘と婚約をさせるように言ったはずだぞ!レクトベル伯爵には一人娘のルスト嬢しかいないだろ!君は一体誰なんだ!私を侮辱しているのか!」
「いえ、ルドルフ公爵。私は侮辱などしておりませんし、レクトベル伯爵は約束を守っておいでです。ちょうどルドルフ公爵から婚約の話をいただいた時、私は伯爵の養子になったのです。つまり、伯爵は私の義父様。私は伯爵の義娘です」
そう。愛娘をルドルフ公爵などと婚約させたくなかったレクトベル伯爵は、ただの商人である私に大金を払って養子にしたのだ。今考えてもいい商売だったわ。
「そして伝えるのが少し遅くなりましたが、私は先ほどレクトベル伯爵から勘当されてしまいました。現在はただのミュリエでございます」
「ふ、ふざけやがって!私のショーを台無しにしたこと後悔させてやるからな!」
残念ながら私はもともと国外での活動を中心としている。この国以外にもいく当てはあるのだ。レクトベル伯爵がどうなるかは知らないが、私を捨て駒として使ったのだ、心配してやる必要もないだろう。
「誰かこいつをとらえろ!誰か、うっ、なんだ、お腹が……」
ルドルフ公爵はお腹を押さえてその場にうずくまる。他の貴族も同様にお腹を押さえているのが良く見える。先ほどまであんなに頭を高くしていた貴族達が頭を垂れている。いい眺めだ。
「大丈夫ですか?厨房の誰かが買収でもされて腐ったものでもいれたのでしょうか?私は食べてないので分かりませんけど……」
まあ、実際誰が腐ったものを仕込んだのかは知らない。私はただ、今まで婚約破棄をされた女性達にパーティーの日付とそれに関わる人間についての情報を教えただけだ。食べ物で全ての貴族がお腹を壊したら面白いですね、ぐらいは言ったかもしれないけど。
「しかし婚約破棄されたということは、私は不必要になったということですよね?では失礼いたします」
「ま、まっ」
無視だ無視。私は速やかにその場を後にした。
少し離れた国に移動してから数年。風の噂で聞いた話によると、ルドルフ公爵はあれから極度の人間不信となり、婚約破棄どころか、婚約すらできなくなったそうだ。
レクトベル伯爵は婚約破棄をされた八人の女性の家と協力し、貴族社会での発言力を強めたのだとか。
「ミュリエ様!王妃がミュリエ商会のナットーウを気に入られたとのことです!」
「そう、これでミュリエ商会は安泰ね」
そして私はあの事件を経て獲得したお金で商会を発足した。商売は順調に進み、現在はこの王国で一、二を争う大規模商会へと進化を遂げた。
ちなみに我が商会の主戦力であるナットーウは、婚約破棄された会場で、たまたま見つけた食材だ。腐ることで別の風味を醸し出す食材があるなど驚きだ。
あの婚約破棄さまさまだわ。ルドルフ公爵には感謝しないとね!
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