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軍評定~それぞれの思惑

 波乱がありつつも論功行賞が終わり、会食となった。信長と彼に近しい家臣達は同室、それ以外の者達は各々に用意された部屋で食事をとっていた。

 

「お、この味噌汁旨いな」


 河津幸生は汁を啜り、ご飯を掻き込みながら唸る。具材は葱が刻んであるだけのシンプルなものだが、使っている味噌が現代のものと違うのか、味が濃くて美味しい。


「八丁味噌……昔は豆味噌だっけ?やっぱり信長って味噌の本場産まれだからこだわりがあるんだろうね」


 そう幸生に合わせたのは、隣で焼き味噌(味噌と野菜の和え物を香ばしく焼いたもの)をご飯に載せた星原織彦だ。


「ただ味噌汁と焼き味噌で味噌が被っちゃってるけどね。この時代なら仕方ないか」


 織彦は苦笑する。この時代の日常食は一日二食、朝と昼下がりに米主体の一汁一菜である。


「お前達の時代は違うのか?」


 仏頂面で訊ねるのは桜木星士郎(さくらぎせいしろう)侑虎(ゆうこう)だ。行儀良く食べてはいるが、常在戦場の戦国武将らしく、食べる速度が尋常ではなく速い。


「現代日本人は一汁三菜、平均寿命80越えの超健康体だぜ。豚肉鶏肉牛肉魚介何でもありだ」

 

 幸生は自慢げに言う。それに意見したのは最年少の桜木景太郎(さくらぎけいたろう)景正(かげまさ)らだ


「うちは仏教とか関係ないから、鹿とかとれたら出すけどさ、牛なんて狩ったら勿体ないだろ」


 味噌汁にご飯を混ぜてねこまんまを啜る少年。倫理的にではなく、あくまで損得での思考である。牛馬は太古の昔から昭和中期まで、日本の農作業の中核を担っていた。


「分業だよ分業。農業も軍事も、それぞれ専門的にやる人が専念することで、効率化して皆が恩恵を享受出来る。食うための肉作る畜産家や、その家畜が食うためだけの飼料を作る農家もいる。サプライチェーンだな」


「さぷらい……わっかんね?」


 首をかしげる景正。もっとも幸生もニュースで聞き齧った知識に過ぎず、詳しいことは語れなかった。


「織田のように兵と百姓を分け、更に兵も馬衆鉄砲衆と分けるようなものか……」


 単語の意味は判らなくとも、自身の知識で噛み砕く侑虎。


「未来がそうなるなら、どこも織田軍のように分業化が進むのだろうな……我が軍も」


「あ、軍と言えばですよ」


 織彦が思い出したように話題を変える。


「どうするんだい?あんなこと言って」

 

 先の論功行賞でのことだ。幸生は信長に種子島……火縄銃での戦術指南と戦働きを約束して褒美を得たのだ。その内容というのが……


「幸生、君火縄銃なんて触ったことないし戦術も知らないだろ。しかも桜木軍に今から鉄砲衆作るとか無茶でしょ」


 そう、信長から桜木家に与えられたのは種子島50丁。これを扱える鉄砲衆を鍛え指揮し、成果を挙げること。それが信長が幸生に課したことであった。


「『手柄を挙げれば更なる褒美と織田軍の鉄砲衆指南役を約束する。だが虚偽ならその場で首をはねる』って、相手は信長だよ。多分本気で殺される」

 

「良いじゃねぇか、成果出せば更に成り上がれるのも本気ってことだろ」


 心配する親友をよそに、幸生は自分の成功を確信していた。


「別に専門的なことを教えるわけじゃない。TVで特集してた塹壕戦の基本的な知識を伝授するだけさ。火縄銃の基本的な使い方くらいは教えてくれるみたいだしな」


 だろ?と幸生は侑虎と目を合わせる。平和な時代に生まれた幸生だったが、近年立て続けに起きている国家レベルの戦争に関するニュースは良く見ていた。悪意はないが、まるでゲームのようなエンタメ的な興奮が得られたからだ。


「ああ、俺がとり扱い方だけなら教えてやれる」


 幸生の野心に侑虎も頷く。こちらも種子島の基本的な使用方法こそ嗜んでいたが、実戦で成果を挙げたわけでもない。軍としての鉄砲衆を持っておらず、時勢に遅れをとっていた桜木氏としては、幸生の提案は渡りに船だった。


「義兄上、俺にも種子島を使わせてくれよ!」


 景正が嘆願する。


「駄目だ。お前はまだ剣術を修めていない。基本の(まつりごと)、兵法を覚えた後の話だ。そうでなくとも近頃は草の真似事ばかりしているではないか。己の立場を少しは自覚しろ」


 義兄に窘められしゅんとする少年の姿は、まるで飼い犬のようだった。


「ともかく、昼餉の後は戦評定(いくさひょうじょう)だ。我らで出席するのは俺だけだろう。お前達三人は暫し休むなり、帰りの身支度なりしておけ」


 桜木家現当主にして未来人二人を預かる侑虎は、人一倍速く昼食を済ませ立ち上がった。


~~~~~~


 軍評定……それは後世でいう作戦会議のようなものである。今後の合戦や行軍を家臣達と決めるのだ。今回、織田軍は先の野村での合戦(姉川の戦い)に勝利し、浅井・朝倉の連合軍を敗走させた。その後の動きについての話し合いだった。


「集まったな。では始めるぞ」


 午前の論功行賞と同じ部屋で、信長は集まった家臣を見渡し宣言すると、傍に控える祐筆に筆をとらせた。


「まずは今回落とした横山城だが、朝伝えたように猿を入れる。貴様が欲しがっていた竹中を付けるゆえ、お前達が要となり小谷を攻めよ」


 信長の前には一畳程の大きな地図が広げられていた。その周囲を木下藤吉郎秀吉、明智十兵衛光秀、柴田権六勝家ら重鎮が囲み、部屋の入り口側にそれ以外の家臣が着いていた。

論功行賞と異なり、各氏代表のみ集えば良いので、朝より幾分か人は減っていた。


「承知いたしました!この猿、必ずや小谷城を落として見せましょう!」


 秀吉が威勢良く答えると共に、地図に書き込まれた横山城に白い碁石を一つ置く。横山城の北にある小谷城には、浅井長政を表す黒い碁石が置かれていた。


「浅井め、唐突に裏切りやがって。奴のせいで一乗谷が無駄に遠退いたわ。……猿、城を落としたら浅井家の者共は生きて連れてこい。俺直々に根切りにしてくれる」


 恨みと怒りを露にする信長。室町幕府将軍足利義昭を上洛させてパイプを作った彼は、事実上の二重政権状態を作り出した。朝倉義景に上洛要請を出し、相手が断ったことを理由に攻め滅ぼそうとしたのだ。

 しかしここで青天の霹靂となる自体が発生する。同盟を結んだ筈の浅井長政の裏切りと強襲により撤退を余儀なくされたのである。今でも朝倉の一乗谷城に向かう途中にある小谷城のせいで、織田軍が進軍できずにいるのだ。


「猿が南から攻撃し膠着状態にすれば、俺の本軍で西から潰す」


 信長は岐阜にある碁石を西に伸ばす。しかし……


「お待ちくだされ」


 そう言い話を遮ったのは初老の男だった。


「どうされた?弾正殿。殿の采配に不満があると?」


 柴田が問う。初老の男、松永弾正久秀は苦笑し首を振る。


「滅相も御座いませぬ。ただ少し小耳に入れたい話がありましてな」


 鬼柴田や信長に睨まれても一切臆せず、松永は黒い碁石を手に取った。


「三好三人衆が再び動き出しているとのことです」


「ははあ三好ですか、しかし連中は殿に負け京から追い出されたのでは?」


 秀吉が大袈裟なリアクションをとる。畿内一帯を支配していた三好氏、そのトップで合議制をとる三好長逸・三好宗渭・岩成友通の三名は、信長と次期将軍の推薦争いに負け、失脚したはずだった。


「左様、既に京にはおりませんが、どうも摂津にて兵を動かしている模様。近々挙兵をするかと」


 碁石を野田岬付近に置く。おそらくと枕詞につけてはいるが、実際はもっと踏み込んだ情報を持っていると思慮された。


「松永、貴様どこでその話を?」


「排斥されましたが私も三好とは長い付き合いですからな。伝手はまだ残っておりますゆえ」


 信長の問いに核心を伏せながら答える久秀。信長は考え込む。心情的にも戦況的にも今は疲弊した浅井・朝倉を攻めたいところである。しかし久秀の情報が正しければ、織田の経済力の要である堺の目と鼻の先に、三好三人衆が迫っていることになる。


「……よし、まずは松永、貴様が三好を抑えろ。俺は兵を揃えてから動く」


 岐阜に置かれた白い碁石が西に向かう。


「横山城に猿の援軍を置いて行く。単独になるが最低でも小山城からの進軍は食い止めろ」


「はは!必ずや。隙あらば某で浅井を討って見せましょう!」


「意気や良し」


 ついで信長は己の石を更に西に動かす。


「横山から琵琶湖の南を迂回する。長光寺城にて柴田と合流するぞ。次は瓶を割らんで良いようにしっかり準備を済ませとけ」


「はっ!」


「次に京だな。まだ義昭の奴は俺に付くはずだが、念には念をだ。おいキンカ頭、義昭に先んじて文を出してくれ。貴様名義で上手くやれば奴も動きやすかろうよ」


「……承知いたしました」


 やや不機嫌そうに答える明智光秀。何もあだ名が気に食わなかっただけではない。


「将軍への進言はお任せを。ただ二点気になる点が御座います」


「何だ申してみよ」


 口煩い教師の小言を聞く、不良学生のような口振りで促す信長。


「京に寄られた後に堺に入り、三好と対峙なされるならば、随分と戦線が伸びます。道中には味方以外の勢力も多い。危険では御座いませぬか?」


 光秀の指摘はもっともだった。つい先日も、金ケ崎で浅井の裏切りにあい撤退を余儀なくされたばかりだ。


「金ヶ崎や野村では同盟の徳川の助力を得られましたが、今あちらは浜松城築城と武田との睨み合いで動けぬ様子。その上で東に木下殿、西に松永殿と戦力を分散させるのは……」


「煩いわキンカ頭!」


 我慢できずに怒鳴る信長。ただ合理的な意見であるが故に無下にはできない。


「浅井を調子づかせぬために小谷は攻めねばならん。戦力が足りぬならば、雑賀衆を雇うなり義昭に頼むなりお前がしろ」


「御意……ではもう一点を」


 並の人間なら震え上がる信長の癇癪を受けきり、光秀は更に意見を述べる。この頑固さもキンカ頭の由来だった。


「当初の二方向から小谷を包囲するならともかく、木下殿単独で南から攻めるならば、敵が北に抜ける可能性が御座います」


 光秀は小谷の黒石を北に動かし、琵琶湖の北部から西にぐるりと迂回させる。


「この場合京に逃げ込まれたり、最悪摂津の戦線が挟撃される恐れがあります」


 もっともそれは浅井朝倉が三好と組めばですが……と光秀は付け加える。

 

「ったく戦力分散が愚策だと言っときながら、てめぇでも戦力更に分散させようとしやがる」


 信長は苛立ちながらも白石を琵琶湖西側、迂回させた黒石の真下に置く。


「浅井が南進した場合は、宇佐山城で食い止める。森」


「はっ!」


 宇佐山城を守護する男、森可成が威勢良く答える。


「弟の信治をつけてやる。万一の際は摂津から駆けつけてやるからそれまで粘れ」


「ははっ」


 その後信長は軍の振り分けを行っていった。秀吉の小谷城攻略部隊、信長、久秀と同行する三好討伐部隊、そして宇佐山城での迎撃部隊である。


「……青地は宇佐山、和田は摂津……ん?」


 ふと気付く。宇佐山城の少し南西に小さな城が描かれている。


「琵琶湖城か、確か星士郎の城だったか」


「はっ」


 会議の場、後方に座る侑虎が静かに頭を下げる。


「なら貴様らも宇佐山城援護だ。自前の城に籠るか兵を宇佐山城に出すかは森と話し合え」


「御意」


 こうして、織田軍は来るべき次の軍に備えていったのだった。


~~~~~~


「あ~、会議長ぇな」


 畳の上で寝転がりながら幸生は呻く。既に帰りの支度を済ませていたのだが、まだ侑虎は帰ってこない。


「そりゃ戦争するんだもん、細かく決めてるでしょ」


 景正と談笑していた織彦が答える。幸生は立ち上がる。


「待ってるのも飽きたなあ、ちと小便してくる」


「あ、なら僕も行く」


 織彦も立ち上がる。


「連れションかよ、ガキじゃあるましいしキモいぞ」


「だって怖いじゃん、ここ侍ばっかだよ」


「侍だからって、屋敷の中で斬りかかっちゃこないだろ」


 幸生は嘆息すると、傍に座り込んでいる少年を見る。


「景正、トイ……小便する場所って、何て言うんだっけ?」


「雪隠のことか?俺は行かないよ」


「せっちんね、あんがとよ」


 近くを歩く女中を捕まえ雪隠の場所を聞き、織彦と共に向かう。中世のトイレは扉や敷居こそあるが、現代ではお馴染みのウォシュレットやトイレットペーパーはない。しゃがむ敷居から下は穴が掘られており、そこに糞尿が溜まる仕組みのようだった。


『ボットン便所と思えばガキの頃田舎で使ったことはあるから良いが、これ清掃すんのは大変だろうな』


 そんなことを考えながら用を足す。扉が四つ並んだ内の一番奥を織彦、奥から二番目を幸生が使用していた。と……


「いやぁ、長い評定でしたなあ」


「戦力分けであれほどかかるとはなあ。我が軍が大きくなった証ではあろうが」


 話ながら手前二つの扉が空く音がする。どうやら軍評定が終わり、織田家家臣が連れだって入ってきたようだ。侑虎も戻るかもしれないと思い、幸生は出ようとするのだが……


「しかし訳の分からない輩も増えて困りますな、特にあの桜木とかいう若いの、あれは何なのでしょうな?」


「……!」


 思わず息を潜め、会話を聞く。


「未来人だのなんだの、気が触れたとしか思えない連中だ」


「ああ、あれか……先代の頃はまだまともだったんだがな」


「何か御存知で?」


「確か十三代将軍義輝様に仕えていた時は並の国人だったようだがな、永禄の変で三好や松永に殺されとる。その後跡継ぎとなるはずだった嫡男がいたのだが、これが大層出来の悪い(わっぱ)だったようでな。姉の長女に婿をとらせそいつに家督を譲ったんだと」


「それが今日の星士郎とかいう輩ですか?」


「だろうな、堅物な剣客と聞いていたが、あんな未来人だのなんだのと法螺を吹くとは、結局はうつけだったな」


 扉を開ける音がして、織田の連中は外に出ていく。


「……織彦、終わったか?」


「……うん」


 親友も気まずい顔をしながら出てきた。二人して何も話すことはなく、控え室に戻っていった。


~~~~~~


「こうして茶の湯をするのは始めてですな」


 幸生達が噂話を聞いていた頃、侑虎は別室で一人の男と対峙していた。


「先代の桜木景親様とは幾度かこうして茶をしておりましたが……いやはや、寂しいものですな」


 湯呑みを立てているのは、松永弾正久秀だった。

 

「……何が狙いだ?」


 年齢差で三回りも違う相手に対し、侑虎は真っ直ぐ見据える。その瞳には怒りにも似た剣呑な光が宿っていた。


「何もやましいことはありませんよ」


 その視線を意に介さず、久秀は柔和な笑みのまま、抹茶を泡立てていく。


「過去にはすれ違いが御座いましたが、今は織田軍に忠を尽くす一武将同士、こうして友好を深めようと、殿に場を用意していただいたのです。殿も茶の湯を大層気に入られましてな。某がお誘いしてからというもの、堺で茶器集めに夢中だそうですよ」


「そうして今度は織田に取り入る気か?」


 世間話にも乗らず、侑虎は梟雄と呼ばれた男を睨み付ける。


「貴様に忠義等という言葉は存在せぬだろう。将軍すら駒にしか考えていない」


「……義輝様については、誠に残念で御座いました。倅が三好に唆されたばかりに」


「子がしたことであり、親の自分は関せずと?それが通ると思っているのか?」


「まさか、親として責を全うしたいと感じております。故に義昭様を守護するべく、織田の配下に加わったのです」


 茶筅を静かに上げ、茶碗をこちらに差し出す。


「どうぞ、毒など盛ってはいませんよ。某は茶道を心から愛していますし、何よりここは岐阜城。騒ぎを起こせば一族郎党根絶やしにされますからな」


 侑虎は警戒は解かないまま、茶碗を両手で持ち上げる。抹茶の素晴らしい匂いが鼻腔をくすぐる。


「景親様、ひいては義輝様に忠義を尽くしていた貴方にとって、某が信用できぬというのは無理からぬこと」


 茶を静かに口に運ぶ。まろやかな泡と抹茶の仄かな苦味が口の中に広がる。


「しかし戦国の世において、(まこと)の忠義とは何を指すのでしょうな」


「何?」


 柔和な笑みは変えず、久秀は面白そうに言葉を紡ぐ。


「元を正せば天下は帝のもの。その威光を受け征夷大将軍に仕えるのが武士の本分。だというのに、守護は任じられた領地の民を戦に駈り出し、領地の奪い合いに明け暮れ、奉公すべき武士達も裏切ってばかり」


 老境に入りつつあるというのに、その目と声には野心と愉悦が満ち溢れていた。


「将軍家もそうです。義昭様は朝倉の庇護下にあらせましたが、織田に鞍替えして上洛を果たされた。そして織田は朝倉を討たんとし、朝倉を守るため浅井は織田を裏切った」


「何が言いたい?」


「時期は(たが)えど、我らは共に将軍家を守るべく三好から離れ織田についたもの同士。今この場における我らの忠義は同じでありましょう」


 自身にも作っていた抹茶を優雅に口に運ぶ梟雄。侑虎は茶碗を置く。


「貴様が某と敵対をする気が無いと言いたいのは承知した。某が知りたいのは、既に織田に取り入り重鎮側に付いているにも関わらず、一国人に過ぎぬ某に近付く理由よ」


「星士郎殿に対しては先程申したとおり……ですが貴方は真っ直ぐな性根をなさる。多少腹の底を素直に吐き出した方が信じていただけるのでしょうな」


 久秀も茶碗を置いた。


「あの河津とか申す男、今後織田の要にも忌避すべきものにもなるかも知れませぬな」


 以外な名前を聞き侑虎は驚く。


「奴の戯れ言を信じるのか?」


「信じるからこそ殿に拝謁させたのでしょう?」


 それは道理だ。だが侑虎には引っ掛かるものがあった。


「某はあの者達の素性を知らぬ。だが貴様は何か知っておるのか?」


「まさか、確信を得ていれば某はもっと巧妙に近付き調略していますよ」


 柔和な笑みの奥、瞳の中に一瞬だけ剣呑な光が宿る。


「ただ近頃『未来』に関する噂話を聞きましてな。関連があるやもと思った次第です」


「なんだそれは?」


「さてそこまではなんとも……今後星士郎殿とこうして話す場を設けられれば、更なることもお話しできるやも知れませぬな」


 これ以上の情報を知りたければ松永と組めということか。


『何をどこまで知っておるのだ、こやつは……』


「そちらの申し出は承知した。あの者らは某の配下ではないため、本人らの意思を確認したい。返答はその時で良いか」


「構いませぬが……戦が近いことをお忘れ無く」

 

「……茶は馳走になった。我流で済まんがこれにて失礼させていただく」


 茶碗を改めて手に取ると全て飲み干し、畳に置く。


「それで良いのです。戦国の世と同じ、まだ決まった作法などはない。己が楽しく飲めればそれが何よりです」


 侑虎はその言葉には答えず、一礼し部屋を後にした。




 御読了ありがとう御座いました。プライペートの都合更新が遅くなり申し訳ありません。

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