第九十一話 進む勇気
生徒会長の言葉が私の中に残り続けていた。
失った人の辛さと憎悪は簡単には消えない。
立場を失いそうになり、何もかも失いそうになった私がしたことを考えると、とても実感ある言葉だった。
私も春野さんの大切な何かを失わせた。
その怒りや辛さはどこにいったのだろうかと、それを考えると自殺という言葉が出てくる。
大切なものを失う経験を今、経験している。
耐えるがとても辛い、いっそのこと楽になってしまいたいと考えてしまうほどに、わたしは辛かった。
きっと、私が行った行為は春野さんと赤菜さんにその数倍辛いことを体験させたのではないか。
そう思ってくると吐き気がしてくる。
(わたしは・・・・・・わたしは・・・・・・)
「大丈夫・・・・・・?」
真美ちゃんが心配そうな表情をしてこちらを見てきた。
「生徒会長に呼び出さらたんだよね。何かあった?」
「・・・・・・」
真美ちゃんの言葉にすぐに答えることができなかった。
分からない。
私はどうすればいいのか分からないのだ。
色んな考え巡る。
怖い、辛い、そんな思いが私を駆け巡る。
「わたしはどうしたらいいの?」
「・・・・・・」
「私には分からないよ・・・・・・わたしは酷いことを沢山して、みんなを傷つけた。辛い、辛い、わたしはどうすればいいの」
私は真美ちゃんに泣きたく。
どっちにいっても辛い。
分からない、分からない。
「凛奈ちゃんは何もしなくていい。私がなんとかするから。ただ笑っていて欲しいの」
真美ちゃんは優しく語り掛けてくれる。
それでも私の中の棘は取れることはなかった。
そうして迎えた水曜日、一つの手紙が入っていた。
『 春野愛佳と赤菜友梨を虐めていた証拠をわたしは持っている。
放課後、音楽室に来い。
来なければ全ての証拠を撒き散らして、お前たちを破滅させる。』
その手紙を見た瞬間、わたしは周りを見渡すがそこには誰もいなかった。
(どうしよう、どうしよう、どうしよう)
わたしは駆け込むように誰もいない教室に向かった。
そこで震えた。
「凛奈ちゃん!」
真美ちゃんの声が聞こえた。
教室のドアの方を見ると、真美ちゃんだけではなく綾香ちゃんや安奈ちゃんまでいた。
「みんな・・・・・・」
私は弱々しい表情でみんなを見る。
「凛奈っち、心配する必要はないから」
「え?」
予想外の言葉に私は驚く。
「心配する必要がないて、どういうこと?」
「そんなの逆にやり返してやるんだかだよー」
「やり・・・・・・返す?」
「うん。だって凛奈ちゃんは悪くないから。私たちでどうにかする。だから、安心して」
真美ちゃん達の言葉に私は困惑する。
もっと焦っているものかと考えていた。
だけど3人は違った。
どこか余裕があった。
「どうにかするって・・・・・・何をするつもりなの」
「それはまだ決めてない」
「証拠を出さないようにさせる」
「まあ、相手が証拠を持っているかどうかも怪しいけどね」
「それもそう」
「どちらにしろ、証拠があるかどうかの確認が必要ですね」
「真美っちの言うとおりだね」
3人はどうするべきか話し合う。
わたしはその様子をただ見ることしか出来なかった。
私には分からなかった。
どうして真美ちゃん達は平然と対策を組めているのだろうか。
私は、わたしは辛くて仕方ないのに。
「とにかく、手紙の件は私たちでなんとかしておくから、凛奈っちは疲れてるし、休んでいていいよ!」
「え・・・・・・」
予想もしていなかった言葉に私は困惑さらに。
「それがいい」
「凛奈ちゃんは頑張ったから」
真美ちゃん達は優しく語りかける。
私のためにしてくれていることは伝わる。
だけど、私にはそれがとても歪なものに見えてしまう。
何かが決定的に違う。
わたしは声を出してそれを訴えようとした。
「・・・・・・」
(声が出ない!)
それを指摘したら何かが壊れてしまうのではないかとそんな恐怖が私から勇気を奪い去った。
『それは間違ってるよ!』
(え・・・・・・)
智子の声が聞こえたような気がして後ろに振り向くがそこには誰もいなかった。
(そういえば、こう言った時にいつも注意するのは智子だったけ)
間違えそうになった時、いつも最初に動いていたのは智子だった。
嫌われることも構うことなく正しいと思ったことに常に真っ直ぐだった。
だからこそ、グループのブレーキ役を担っていた。
智子が今この場にいたら間違いなく止めていたはずだ。
(智子・・・・・・)
幼い頃から友達でいつも一緒だった。
だからこそ、こんなに会っていないのは初めてだった。
しばらくあっていない親友を思ってさらに胸が苦しくなる。
(私はどうすればいいの)
『前に進むんだよ!
どんなに辛くても前で一歩でも前に進むの!
そうすれば次があるから』
何か辛い時があった時、常に智子は私にそう言ってきた。
機会を逃したら何もできなくなるから。機会を逃さないように前に進めと、そうすれば次があると。
「わ、私も行く」
固く閉じた口をなんとかこじ開けて私は言った。
「真美ちゃん、無理する必要はないよ」
「そうだよ、真美っちは無理する必要なんてない」
「同意」
3人とも心配そうな表情をしながら休んでと言ってくる。
「なんて言っても私も行く。私も関わってるから」
「・・・・・・無理しないでね」
真美ちゃん達は折れてくれて、私達は放課後指定されたところに向かうのだった。




