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第五十八話 大嘘つき

 無事に智子さんをこちらに引き入れることができた私たちは、どのように救うのか作戦説明を智子さんをした後、佐紀先輩を智子さんのメンタルケアに残して私たちは学校で残りの準備をした。


「後は佐紀の機嫌を直しをするだけだな」

「はは、頑張ってください」


 私は苦笑いしながら答える。


 佐紀先輩は残されることに非常に不満そうな表情をしていた。しかし、次にやることにはいてもらうと逆に不利になるので、後で色々と詫びをすること約束して機嫌を直した。主に雄大先輩が。


「それにしても見事な手腕だったよ、藤井君の様子を見る限り裏切ることはないし、親友を騙すことに躊躇うこともない。ある意味で最強の裏切り者を作り出した」

「智子さんも雄大先輩も素直に喜べない褒め方をしますね」


 私はため息しながら答える。


 作戦を聞いた智子さんは『私の時も思ったけど椿の作戦はエグいね。私、椿に恨まれるようなこと絶対にしないと誓った』と私を悪役が何かに思っているような感想を残してくれた。


「そう思うように褒めてるからね!」

「確信犯だったか」


 しっかりとリアクションをするのも疲れたので、私は棒読みで返す。


「素直に褒めても苦しむだけだろ?」

「・・・・・・」


(まあ、ここまでやれば気がつくか)


 雄大先輩のお節介が避けられないことを察し私は降参を示すように力を抜いたような姿勢をとる。


「押し付けた私がいえる事ではないが、無理をし過ぎないで欲しい。弓弦君は賢く聡い。だからこそ、最高の結果を目指しながらも、最悪の結果にならないように手札を用意している」


 こちらを配慮してなのか、羽のように軽い感じで話し、ものすごく冷静で感情的になっていない。


 言い換えるなら丁度いい距離感で話してくれる。


「今回だって持っていたんだろう?()()()()()()()()()()()()()を、もし智子さんがこちらを裏切るもしくはどうしようもなく敵対したときに徹底的に叩き潰せるように」

「……はい。持っていましたよ」


 雄大先輩は最悪の事態だけは避けるために入念な準備をしていた。


 その中には相手が反抗して大事にならないように抵抗心を折れるような証拠も当然あった。


「送られた資料には使わないで嘘をついて騙すとしか記載されていないかった。弓弦君、もしもの場合に一人で抱え込むつもりだったね?」

「はい、ここで生徒会のイメージダウンは大きな痛手です。しかし、私なら問題は対してありません。それに人の心はそこまで強くありませんから。」


 私は雄大先輩の言葉を素直に認めた。


 雄大先輩の前で自分の手札を使い過ぎた。


 私は今回、最高の結果に行くために多くの嘘をついた。


 チャイムのシーンでは聞こえているのが分かってたうえで、時間がないなどの嘘をつき智子さんを焦らせ、雄大先輩たちに苗字に呼ぶようにしてもらい密接な関係だと思われないようにした。


 証拠もあるし、加工写真も、精度の良さを注意してもなかなか分からない写真等、精度を3段階に分けたものを用意して、すぐに目につきやすい写真は精度が良いものを置き、種明かしの時は精度が悪いものを使うことでよりすごいことをしたと思わせた。


 生徒会の約束の件も勿論嘘で、そんなものは存在しない。雄大先輩の目的は春野を救う事と最悪の結果にならない事、その為には嘘をついても騙し討ちも全然やっても構わない。


 今回のようにバレなければ問題ないのだから。


 加工写真の件の小細工などは雄大先輩にも伏せていたが、ここまで私のやり方を見たのであれば勘付く。


 私はとんでもない大嘘つきだと言うことに。


「はぁ、厄介なのはそれがダメなことだと気が付いた上でやっていることだね」

「すいませんね、雄大先輩。しかし、こうでもしないと私もやっていくことができない」


 私は開き直ったように答える。


 悪いことをしているのは理解している。しかし、理想を叶えるのにリスクを負わないなんて都合のいいことを出来るほど、私は実力がない。


「今、悪いはところはいらない。必要なのは立ち上がるための明るい光です。人の心は強くない。両方を抱えきる事ができない。なら、耐えられるようになるまで私が全てを引き受けただけの話です」


 私はどんなに辛い事があっても諦めないが、他人は違う。


 私と同じ道を歩めば殆どの人が傷つき折れる。


 それも当然だ。100レベルが挑むところに10レベルが耐えれるわけがない。


 何でもかんでも一気にというわけにはいかない。まずは一つずつやっていくだけの話だ。


「耐えられるようになるまでか、つまり私は耐えられないと?」

「雄大先輩は耐えられますよ。しかし、いたずらに余裕をなくす必要もないでしょう。役割分担ですよ。雄大先輩も助けるためだとはいえ、いじめを放置した。その罪の重さを1人で背負っているじゃないですか」


 私だけが重いものを背負っているわけではない。雄大先輩も今回の件について色々と背負ってやっている。


「それを言われるのはかなり痛いな」

「そういう事です。まあ、互いに頼るべきタイミングは心得ていると思うので、気楽にやりましょう。」


 私たちは別に他人に頼る事が悪いことだと思っていない。ただ、目的上こうした方がやり易いだけの話である。


「結局はそうなるか」


 雄大先輩は諦めるようにいった。


「それじゃ、私は一足早く帰りますね」


 そうして、荷物を持とうとした時一通のメールが来る。


 送り主は晴人だった。


 私はすぐに内容を確認する。


「なるほど。晴人らしいな」


 内容を確認した私は雄大先輩の方を見る。


「あんな話をして早速ですが、一つ頼み事をしていいでしょうか?」

「なんだい?」


 仕方ないなといった表情をする雄大先輩に頼み事について教える。


 それを聞いた雄大先輩は「また、無茶なこと頼むな」と言いながら、明日までには用意しようというのだから、凄い人だ。


 そうして、私たちは解散した。


 帰り道、私は人気の無いところに向かい路地裏に向かう。


 周囲に人がいないことを確認する。


「ごほっごほっ」


 苦しそうに肩を上下させながら僕は激しく咳をする。


 僕は集中状態を解除する。


 非常にクリアだった思考は、音をあげて崩れていくと同時に疲労により世界が歪んだように感じる。


「はぁはぁ、鋭いな……」


 先程の精神状態は極限の集中状態と等しく、体力的にも精神的にも消耗が非常に激しい。


 それを半日も続けた代償はかなりのものだ。


 このことに雄大先輩も気がついて、あんなことを言ったのだろう。


(くそ・・・・・・次はなにをしないと)


 疲労によって思考が思うようにまとまらない。


 何かを考えようとすると頭が痛くなる。


(帰れない)


 極度の疲労状態では、春野の前で平気な自分を取り繕う事ができない。


 僕がボロボロな姿を春野に見せるわけにはいかない。


(休まないと)


 とにかく休まないといけない。


 思考があやふやの中、力を振り絞りやるべきことを考える。


 自分の家に戻るのも春野の家に戻るのもいけない。家という気が抜ける場所は今の僕にはない。


 現在の時間は四時過ぎで、遅れたとしても七時までには帰りたいから、休憩できる時間は約三時間、一人になれて気が休める場所。


(出てこないな)


 思考が鈍っていることもあり、そんな都合のいい場所を考えつくことができなかった。


 何かないか、一生懸命に記憶を辿ろうとした時に思い浮かべたのは夜空の中、何処までも美しく輝いていた春野の姿だった。


「はは、僕も馬鹿だな」


 そんなことを思いながらも僕は休む場所を決めた。


 バスに乗り、大体20分程度で目的の場所にたどり着く。


「昨日来たばかりだというのに、今日も来るなんてな」


 僕は公園を見渡すが誰一人通らず、非常に落ち着く静けさがあった。


 僕はベンチに座り、外を眺める。


 夕日が沈み掛かり、ゆっくりと今日の終わりを感じさせる光景は、疲労を少しだけ忘れさせてくれる。


「ニャー」


 夕焼けを眺めていると、いつものようにクロが近寄ってくる。


「すまないけど、今回は餌を持ってきてないんだ。今度、一杯持ってくるから勘弁してくれ」

「にゃ」


 クロは仕方ないなと言わんばかりの表情をした後、こちらから少し離れた所で寛ぎ始める。


 やっぱり、ここに来ると気が休まる。


「少し寝るか」


 現在の時刻は五時で七時に帰るなら一時間程度睡眠をとることができる。


 ここ最近は睡眠できる時間も非常に少なかったため、少しでも休むべきだろう。


 久しぶりにここまで気を抜けたこともあり、そこそこの睡魔も襲ってい来る。


 スマホのアラームを一時間後にセッティングする。


 ベンチに横になるのは誰かが来た時に不味いので、座った状態で自分の荷物を抱きしめて安定させて僕は仮眠をした。


 そして目が覚ました時、入り込んできた光景は昨日見た夜景だった。


(……やらかした)


 その夜景を見て六時に起きれなかったことを悟る。


 どうしようかと考えるその時だった。


「やっと起きたのね」

「にゃー」


 聞き覚えのある鳴き声と声が隣から聞こえてくる。


 隣を見るとそこには昨日と同じように膝に乗ったクロを優しく撫でながら、夜景に見惚れる春野の姿があった。

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― 新着の感想 ―
[良い点]  春野さん、椿くんへの愛を感じました♪  [一言]  嘘も方便。  はったり。  ブラフ。    そういえば、僕の木下くんも、スケールは小さいですが似たような事をしていました。  親近…
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