第二十二話 一緒に考える
赤菜友梨視点 前回の続き
椿君が信用できる人だと知っても、私の抱えている問題も、私がどうすればいいのかも分からない。
(何が正解なの?どうすれば愛佳ちゃんを助けられるの?)
その答えを見つけない限り、状況は何も変わらない。
「ああ、それに関してだが、俺からは手助けできるようなアドバイスは出来なそうだ。俺が出来るのは精々一緒に考えてやることぐらいだ」
大山君は申し訳なさそうな表情をしながら言った。
「ただ、春野さんを助けたいなら諦めないで頑張り続けるしかない、と言うことは分かる。」
「……」
確かにそうだ、諦めたらそこで終わりだ。
どんだけ苦しくても私は愛佳ちゃんを助けたい。その気持ちだけは嘘にしたくなかった。
「とにかく、一緒に考えてみないか。どう向き合えばいいのか」
「そうだね」
そうして、私たちは考えるがそう簡単に解決策は浮かんで来ない。
助けたい気持ちはあっても、どうすればいいのかが分からない。ただただ、いたずらに時間がなくなっていくだけ、この時間でも愛佳ちゃんは苦しみ、椿君と大野君は助けるために頑張っているのだ。
私だけが何も出来ていない。
結局、私は弱い人間なのだ。
「ごめんね、迷惑かけて。大野君は本来関わらなくていいはずなのに、私があの時、無理矢理頼み込んだから、こんなことになってる。本当にごめんね」
隣で一生懸命考えてくれている大山君に申し訳なく思い謝る。
私がもっとしっかりとしておけば、こんな問題にはならなかったのだ。
(私がダメだから)
「ひゃい」
落ち込んでいると突然髪を掴まれぐちゃぐちゃにされる。
そして、少し怒ったような顔でこちらをみて言った。
「俺を見くびるな、そして謝るな」
大山君は真剣な眼差しでこちらを見る。
「この件に関わることを決めたのは、俺の意志だ。赤菜と出会わなくても俺の選択は変わらなかった。ここで一緒に悩んでいることも同じだ。俺がそうしたいと思っているからやっているんだ。それに俺はこの程度でイラつくほどの漢じゃない。だから、謝るな。俺がカッコ悪いやつに見えるだろ」
大山君の言葉は力強く、たくましかった。
自分の決めたことを突き通す、人のせいにするなんていうカッコ悪いことはしない。そんな人でありたいと思うのがよく伝わる。これが大山君なりの信念だろうか。
女性の私にはその意味を完璧に理解することはできないけど、しないといけないことは分かった。
「分かった!私、晴人君にはもう謝らないから!」
「なんか、微妙に勘違いしてない?まあ、いいけどさ」
私の精一杯の宣言に微妙に違和感を覚えたような表情をしたが、特に気にしていないようなので問題ないだろう。
(気にしない気にしない)
「だが、手詰まり感は否めないな。俺は春野さんとはほぼ他人だし、これは友梨の問題だから俺ができることは少ないんだよな。とにかく、意見を出してもらえないと何もできない感じだ」
「そうだよね。私が意見を出さないと」
晴人君の言う通り、これは私の問題なのだ。自分で考えて決めなければいけない。
だけど、助けると言っても私に何ができるのだろう。
「晴人君、私は何ができるかな?」
「何ができるか・・・・・・・」
1人で考えても答えは出てこないと思い、晴人君に聞いてみる。晴人君は腕を組んで悩む。
「自分の長所を活かすとか?」
「長所かー」
私は自分の長所を探してみる。
「ピアノと、愛佳ちゃんが明るくて元気で可愛いところがいいって言ってたことぐらいかな?」
「なるほど。他には何かある?」
「うーん、特に思い当たらないよ」
いざ考えてみると、自分の長所と言えるものがかなり少ない。
「俺が何ができるか聞くから、答えてくれるか?」
「うん分かった!」
質問形式なら見つかるかもしれないと晴人君は考えたようで、私に一つずつ質問する。
「料理とかは?」
「愛佳ちゃんに止められるぐらいには、下手です」
「勉強は?」
「大体全部、平均ぐらいかな。数学が少し苦手かな」
「運動は?」
「空気になって隠れるのは得意だよ!」
「家事系統は?」
「あははは、何もないかな」
「イラスト系は?」
「塗り絵は好きだよ!」
「なるほど、長所って見つけるのは大変なんだな・・・・・・・」
「うん、そうだね・・・・・・・」
愛佳ちゃんを助けるために使えそうな長所が見つからず、2人で落ち込む。
「てか、もうこんな時間か」
気が付けば時間は6時を回っている。外も大分暗くなっている。
「また、明日2人で考えよう。今日は帰るぞ」
「明日も一緒に考えてくれるの?」
「当たり前だろ。友梨だって1人で考えるよりも2人の方がいいだろ?」
「う、うん。そうだね! また明日、一緒に考えよう!」
今日だけだと思っていたから、私にとっては嬉しい展開だ。
私1人では、どうすればいいか分からなかった。
けど、晴人くんと2人で考えることで小さいけど少しずつ前進することができるような気がする。
それに椿君に自分の間違っているところを教えてもらうことができた。
怒られたらりマイナスなことばかり起きていたが、全体で見れば確実に流れが良い方に変わり始めているような気がする。
「早く行くぞ」
「うん、今行く!」
愛佳ちゃん待ってて!私、諦めないから。必ず助けるから。
自分の気持ちを再確認しつつ、ドアの前に待ってくれている晴人の方に向かい、家に帰るのだった。
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『いつ支配されるんだー!』と思う人が居るかもしれませんがもうしばらくお待ちしてください。しっかりと支配したいと思う気持ちが自然だと思えるように、主人公の椿君が頑張る予定なので。
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それでは引き続き、天才美少女の自殺を幾度か止めていたら、惚れられ支配されそうになっている件のご愛読よろしくお願いいたします。