⑥おすそ分けギャル
【上映まで10分】
私は、ギャル映画館というネット記事を見て、ここに来た。今話題とか、色々書いてあった。たしかに、興味がわいてきて、実際来てしまったから。それだけ、魅力的ということだ。やっぱりすごい。色んなギャルがいる。ギャルのなかにも、いろんな分類があるんだな。そう思った。
【上映から00分】
ギャルは、テレビで見て好きだった。まわりにたくさんいるから、テンションが上がった。包まれていて、幸せだ。映画館の座席にいるのに、映画館の座席感がない。どこかの待ち合いスペースみたいな感じだ。映画が始まってから、ここはやはり、映画館だ。そう思った。
【上映から10分】
スクリーンより、右や左や前にかなりいる、ギャルを見てしまっていた。すると、ポップコーンやら飲み物やらを、抱えたギャルが右隣に座った。派手な感じだ。原色系の、今はあまりいない感じのギャルだった。その間にも、しっとりと進んでいく、映画の登場人物たちの人生。
【上映から30分】
ポップコーン食べる?と聞かれた。右隣に座ったギャルが、話し掛けてきた。嬉しくて、たくさん貰った。キャラメル味だった。いつもの数倍美味しかった。甘さが広がっていき、幸せにまで届いた気がした。ポップコーンまではいかないが、いくつか、幸せの種が弾けた気がした。
【上映から60分】
切ない系の親子愛の物語。すれ違ってすれ違って、愛を放って愛を放って。もう、涙があふれそうになっていた。右隣のギャルが、私以上に泣いていた。涙もろい私だけど、それ以上だった。すすり泣く声が、全体から聞こえてきた。普通に独り言を言う、ギャルまで現れた。自由な感じで、微笑ましかった。
【上映から90分】
チェロスだか、チュロスだか、チョロスだか忘れた。そんな感じの名前の棒のお菓子を、ギャルから勧められた。あまりよく知らない。でも、食べてみることにした。美味しかった。ドーナツ系で、美味しかった。チロスだか、チルスだか、チョルスだか分からない。でもこれは、また食べたいと思った。
【上映から120分】
映画の主人公の、さわやかな微笑み。それと、棒状のお菓子のシナモンは、しばらく消えない。そんな気がする。今消えていないってことは、映画が終わったあとも、消えない。感動のストーリーが、とても素晴らしかった。映画館の空気感もよく、来てよかったと思った。お菓子をギャルはまだ、たくさん隠し持っているみたいだ。
【上映終わり10分】
エンドロールが終わって、席を立とうとすると、ギャルに呼び止められた。袋に入ったグミを3袋くれた。1袋でもいいのに、3袋はうれしい。ギャルの心と一緒で、柔らかいグミらしい。どれだけ、お菓子を隠し持っているんだよ。そう思って、おかしくなった。お菓子だけに。尾頭付きの魚の煮付けよりも、お菓子の方がテンションは上がる。