②謝りギャル
【上映まで10分】
私は、ギャルの聖地だと知らずに入った。知らずに、この映画館に入った。だが、さすがに、ギャルがほとんどだということには、気付いた。ギャルが苦手とか、そういうのはなかった。でも、関わりがなかったから、怖さはあった。
【上映から00分】
ホラー映画の上映が始まった。未知の生物の映画だ。未知の生物は、現実にもいる。ギャルのことだ。映画に怯え、席でも怯えの状態だ。そこに、ギャルが来た。前を申し訳なさそうに、謝りながら通っていった。
【上映から10分】
10分前に、隣の席に座ったギャルが、すごくすごく怒られていた。ギャルの後ろの席に座っている紳士に、怒られていた。スマホの着信音が、鳴ってしまったのだ。ギャルは、何度も何度もペコペコと、丁寧に謝っていた。
【上映から30分】
映画に集中できていた。怖さに、のめり込んでいた。ホラーの世界に、引き込まれていた。しかし、轟音と共に登場した未知の生物に、ギャルが悲鳴をあげた。ものすごい声で悲鳴をあげた。ギャルは、未知の生物に驚いて、ポップコーンをぶちまけた。
【上映から60分】
ポップコーンぶちまけから、かなり謝っていた。それから、ずっとギャルは喋らず黙っていた。足元には、まきびしのように、白いポップコーンが散らばっていた。ドジではあるが、そこに引き込まれていった。ギャルと、映画の引き込まれ度は、ほぼ同じくらいだ。
【上映から90分】
急に、すみませんと言われた。ギャルに言われて、投げ出していた足を、引っ込めた。前を前傾姿勢で、ギャルが通っていった。そして、外に消えていった。トイレトイレと言っていた。だから、きっとトイレに行ったのだろう。
【上映から120分】
ギャルが、トイレから戻ってきた。でも、もうエンドロールだった。最後の、衝撃的な結末は、ギャルの目には映らなかった。ちらほらと、出ていくお客さんがいるなかで、席に戻ろうとしていた。足を引っ込めて、ギャルを通した。
【上映終わり10分】
席を立って、スクリーンにサヨナラした。全てのエンドロールを、見終わった後だった。ほぼ、二人きりになっていた。通路に出て、歩を進めていた。するとそこに「すみません」という声が聞こえた。ギャルだった。「内容をぎゅっとして、教えてくれない?」と言われた。ギャルが気になりすぎて、映画の内容をあまり覚えていないというのに。