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第1話 僕が右手を上げると鏡に映る自分も右手をあげた

 いつもの朝、ではなかった。

 僕こと涼真りょうまは高校へ行く準備で部屋中を借り物競争し、クローゼットに備え付けられた全身鏡を見ながら髪を整えようとすると、おかしな事が起きた。


 僕が右手を上げると鏡に映る自分も右手をあげた。


 不気味というより面白さが勝って、鏡の中の自分とたわむれていた。


 遅刻のことを忘れスマホを取り、つき合ってる彼女、風花ふうかへメッセージを送る。

 高二の僕より一学年下の後輩女子。


 僕から送るはずが彼女から先に連絡が来た。


 >ねぇ涼真君、私が右手を挙げると鏡の私も右手を上げててヤバいんだけど!


 ウソ?

 これ、僕だけに起きた事じゃないのか。


 ふと、学校へ行く時間を思い出し、この話は後回しにして部屋のリビングへ足を進める。


 すると、両親が真剣な顔でテレビを見ていた。

 父母に挨拶して二人の間に入ってテレビを見ると、女性キャスターがとんでもないニュースをかます。


『日本全国で車両事故が相次ぎ、交通は完全に停止しました』


 意味がわからない。

 バスで通学してる僕はどうすればいいのさ?


 その日は僕も含め遅刻者が多く心強かった。

 何せ先生達ですら遅刻してたので、もはや怖いもの無し。

 学校では交通マヒの話で持ちきりだけど、話題に混じって"鏡"の話が出ていた。


 学年の違う風花とは休み時間に廊下で待ち合わせて、今朝、鏡で起きたことを話す。

 風花は折り畳みの手鏡を出して、はしゃいだ。


「ほら! 右目でウィンクすると鏡の私も右目でウィンクしてる。ウケる~」


 それから何日も交通停止のニュースが続く。

 洪水のように次から次へ情報が流れ込み、なんと日本だけじゃなく万国で交通停止が続いていたのだ。

 事故に駆けつけたパトカーや救急車まで事故を起こすなんて、異常事態だ。


 昔「地球が静止する日」なんて映画があったけど、僕はそれを体感している。


 ほどなくして、世界有数の頭脳を誇る学者が、この事件の調査に乗り出し、調査結果はネット、テレビ、広告。様々な媒体へ発信。


 難しいことを省いて、どの調査結果も共通してるのは、『車両に付属するミラーが反転したことで方向感覚が掴めなくなった』だ、そうだ。


 本来、鏡は人物の反射した光をありのまま写すだけなので、左右上下の概念がない。

 鏡に立った時、右手を挙げれば鏡の自分は左手を上げる。

 そもそも左右が反転してるのが、鏡の自然現象だ。

 なので、反転の反転というおかしな解釈になる。


 なら右手を上げた時に、鏡の自分が右手を上げると車のミラーは、どうなるか?


 バックミラー越しに後方の車が右に車線変更したと思いきや、現実には左の車線へ移っているので、左には車がいないと見て交差点の曲がり道や、高速道路の降り口で衝突事故が多発したのだ。


 車のミラーに限っては『ありのままを映す』役割があったのに、鏡の反転でその機能が失われた。

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