UMA 其の2
「と!言うわけで!!」
「凄い…」
「これ海じゃないの!?すごーー!」
「初めて来ましたよ俺!」
「はい!騒がない騒がない!注目ー!」
はしゃぐ皆の前でパンパンと手を叩き、完全に静まるまでじっと待つ。
「はい、皆さんが静かになるまで1分かかりました!」
「うざ」
「こらっヒカルちゃん」
「今回は遠路はるばる琵琶湖までやってきた次第であります!」
「おー!」
「はい!」
勢いよく挙手する景君を指差し、こちらも勢いよく返す。
「はい景君!」
「色々あるんですけど…なんですか?部長のその格好は?」
景君は私の格好を指差しながら尋ねる。
「そりゃUMAを探そうってんだからこれくらいの用意は必要だろう?」
私は上下迷彩柄のカーゴパンツにジャケット、そしてサバイバル用のどでかいリュックサックを背負っている。
「そういやその格好…くねくねの時もしてましたね」
「よくお似合いです」
「だろう!?ふふん、自分で言うのもなんだがなかなかサマになっているんじゃないかなと」
バッと腰に装着したホルダーからエアガンを取り出して構えてみせる。
勿論、法律に触れない程度の威力の低い物だ。
「だっさ…」
「ヒカルちゃん!」
「ん?何か言ったかね?」
「あ、あの、今日はなんで琵琶湖なんですか?てっきりツチノコを探すもんだと思ってたんですが!」
「いい質問だね!まず私は本当にUMAが実在しているかどうかの確認が重要だと思うわけだ!」
「それはそうですね」
「確認するにあたって、最も発見難度の低い生物といえば!?」
「え?そんなに変わらないんじゃないですか?」
「いやいや、サイズの問題だけでも恐竜サイズの生物とヘビ程度のサイズなら明らかに大きい方が見つけやすいだろう?」
「ああ、まぁ確かに…」
「更に…ネッシーやその他の湖にいるとされているUMAの正体については諸説あるが、目撃談や写真に捉えられた形状から、恐竜時代に栄えた大型水棲爬虫類である首長竜プレシオサウルスの生き残り、あるいは世代を経て進化した姿という説が有力である」
「はい」
「となると、爬虫類である以上水面に浮上しての呼吸が必須になるわけだよ」
「おおー」
「ヘビは10分程度、ワニなんかは1時間も潜水し続けられると言う、ウミガメに至っては2時間もの時間潜水可能らしい」
「じゃあネッシーのサイズになるともっと潜ってられるんですかね?」
「どうだろうね、サイズが大きければ潜水時間が延びるという訳ではないからね、哺乳類になってしまうがクジラなんかは10分から2時間と幅が広い」
「およそ7mのアカボウクジラの潜水時間が最長2時間、世界最大のクジラと言われているシロナガスクジラは最大30mを越える個体もいますが、潜水時間は最長40分と言われていますね」
「さすが千影さん!」
なぜかヒカル君は補足した千影君だけを褒める。
「まぁ何が言いたいかと言うとだ、サイズ的にも大型で活動の予想が立てやすいと思われる湖のUMAが最初のターゲットには相応しいと!そう思ったわけだね!」
「なるほど、アッシーだかイッシーだか色々いるみたいですが…」
「琵琶湖はヌッシーだね」
「ヌッシーを選んだ理由は?」
「日本最大の湖だよ?可能性としては一番高い気がしないかい?…まぁ単純に一番近かったからというのもある」
「絶対に距離が一番の理由でしょ…」
呆れ顔のヒカル君の視線が痛いが、気付かないフリをしておくとしよう。
「さて!じゃあ貸しボートを借りてさっそく湖を探索と行こうじゃないか!」
私は決して安くない金額を払い、4人乗りボートと、釣り道具各種をレンタルする。
「釣り上げる気ですか?」
「釣り上げるのは無理でも大きめの魚を餌におびき寄せる事くらいはできないかな?と思ってね」
「大きめの魚は?」
「現地調達に決まっているだろう?」
「では基本は息継ぎを待つスタイルで、あわよくばおびき寄せるといった形ですね?」
「うむ」
「じゃあ見張りと釣り役は交代にしようよ、あーし釣りした事ないんだよねー!」
「実は俺も無いんだよな…部長あります?」
「はっは!舐めてもらっては困るよ!見たまえこのリールさばき!」
私は空中でクルクルとリールを回す素振りをしながら大言壮語を吐く。
「うえー!餌これ!?うえぇ!」
「生き餌が一番食い付きがいいからね」
「にしても気持ちいいですねー」
「そうですね、こうして湖の上にいると普段とは違う爽やかな気分になります」
「今日は天気も良いからね」
「はい、視界を遮る物もありませんし、かなり広範囲を見渡せます」
双眼鏡を目に当てたまま、千影君が答える。
「わー!見て見て!ほら!!引いてる!?これ釣れるんじゃないの!?」
「どうせ根掛かりだよ」
「ネガカリ!?それどんな魚?」
「魚じゃない!!」
「部長、あんまり騒がしくするとヌッシーも出てこないですよ」
「千影君!?」
なぜか私だけが窘められる。
ヒカル君だけ優遇されているのは納得いかないが、これも年長者の務めと思い諦める事にしよう。
大人の余裕とはそういう物だ。
「部長…立派です」
景君がそんな私を労ってくれるのだけが救いだった。
平和な回です




