百物語 其の6
非常に有名な都市伝説の一つに『コインロッカーベイビー』という話がある。
ある所に若くして妊娠し、子を産んだ母親がいた。
けれど父親であるはずの男性には逃げられ…そして何より、彼女は母親になるにはまだ早く、未熟であった。
自身が思っていた以上に一人の人間を育てると言うのは困難な事だったのだ。
「ごめん…ごめんね…」
限界を迎えた彼女は…駅のコインロッカーにまだ赤ん坊であった我が子を押し込み……そのまま迎えに来る事はなかった…。
それから幾歳か流れる。
年月が経つにつれ彼女の記憶も罪悪感も薄れていく。
そんなある日、彼女が駅の前を通り過ぎた時、メソメソと泣く一人の男の子を目にする。
「どうしたの?」
彼女がそう声をかけるも男の子は答えない。
「迷子?」
そう聞いても男の子は泣くばかりだ。
「お母さんは?」
そう聞くと男の子は顔上げこう叫んだ。
「お前だーーーー!!!!」
とまぁ、怖い話が好きな人も、苦手な人も、誰もが一度は耳にした事があるのではないだろうか?
それほどまでに有名なこの都市伝説、これは実際に日本国内で起こった事件が元になっている。
1971年にコインロッカーから乳幼児の遺体が発見された事を皮切りに、日本全国で同様の事件が発生した。
1973年にはバラバラ殺人の被害者遺体が発見された事を契機に、全国のコインロッカーの一斉調査がなされると、へその緒がついたままの乳幼児の遺体等、実に46件もの遺棄事件が発覚。
当然大きな社会問題になり、日本国有鉄道では同種の犯罪を防止するため、同年より使用期限の短縮を実施した。
さて、なぜ私が急にそんな話をするかと言いますと…。
「ゲホッ!だ、大丈夫か?!千影君!」
千影君の肩を抱きながら部屋の隅のヒカル君達の様子を窺う。
「K!!」
「景さん!!」
同様に身体の自由を取り戻した2人は景君に必死に声をかけている。
「部長…見てください…コホッ…火が…」
「ああ、なんとか…ルールの裏をつけたようだ…」
先程まで猛威を振るっていた炎は、まるで嘘だったかのように消え去り、ブスブスと煙を上げているのはロウソクの倒れている絨毯だけであった。
すぐさまロウソクを立て直し、部屋の電気をつけると、かなり部屋は荒れているものの、あれだけの火事が起こった後だとは思えない程に焼け焦げている箇所は少なかった。
「皆無事かね…?」
「僕は大丈夫です…」
「あーし達は平気だけど!Kが!」
「落ち着いて下さい、ヒカルちゃん…景君は大丈夫…」
景君の口元に手を当て、呼吸している事を確認した千影君が続ける。
「少し気を失っているだけです、大丈夫」
「…よかった…タクも…だいじょぶ?」
「お姉ちゃん…うん…」
「千影君、落ち着くまで2人を頼む、私は念には念を押しておくよ」
私はそう言って、まだ燃えているロウソクを消えないように慎重に手に取る。
数本残っていたロウソクを火がついた状態で短く切断し、あと数分もすれば勝手に燃え尽きて消えてくれるように調節する。
「意味があるかは分からないけどね…ロウソクも私達が消すのと燃え尽きるのでは後者のほうがよさそうだ」
「そうですね…誰かがロウソクを消すという行為も儀式の一つかもしれません…」
「二百物語の途中で時間切れになってしまった…という事ならば仕方無い」
「そうですね…まだ儀式の途中ですから…災いが起こるには早いです」
そうなのだ、我々が最後にとった手段、それは101話目を開始する事により、まだ百物語を終えた訳では無い!というかそもそも我々がやっていたのは百物語ではなく二百物語だから!このまま200話まで続けるから!と強引に儀式を続けるという事だった。
非常に不確実な方法ではあったが『百物語は百話で終わり』と言うルールを破る事には成功したようだった。
そして記念すべき101話が冒頭で語らせていただいたコインロッカーベイビーだったという訳だ。
「ニッシー…さっきのって…」
「うむ、集団ヒステリーと言うのが一番平和的な説明であるだろうね」
「ありえるの?あんな…ハッキリ…」
「ロウソクを倒してしまい、予想以上に炎が上がってしまった…それにパニックを起こした我々が作り上げた共通の妄想…」
「ニッシー…」
「そんな目で見ないでくれたまえよ…」
「部長、ヒカルちゃんには…」
「………うむ、そうだね…変に誤魔化すほうが危険かもしれないね…」
我々の活動による危険に巻き込みたくは無かったが、今体験した怪異を誤魔化す事は、かえって2人を危険に晒す事になりかねない。
それに昨今の怪異の増加を考えると、2人には今回の事は発表を諦めて貰う他無い。
これを知った誰かが我々の知らないところで同じ目に遭うかもしれないのだ。
「少し長くなるがいいかね?」
コクリと頷いた2人に我々の体験した今までの事を説明する。
普通なら信じるはずもなかろう突拍子もない話だが、先程の体験はその突拍子もない話を容易に受け入れさせた。
話が終わる頃には先程立て直したロウソクもとっくに消えており、外からは朝日が差し込んでいた。
「タクは内緒にできる?」
「うん」
「せっかく研究発表の為にやったのに無駄になってしまったね、すまない」
「いえ、友達がさっきみたいな目に遭ったら怖いし…」
「そうだね、もし今後もおかしな事があればすぐ言うようにね」
「はい、ありがとうございます」
「良い子ですね」
「あーしの弟だから」
「ヒカル君の唯一の良い所は弟が良い子だって所だね」
「それあーしの良い所じゃないじゃん」
ヒカル君はそうツッコミながら、自身の膝を枕に眠る景君の頭を優しく撫でる。
「しかしなんだ…今回も疲れたね」
「本当に…」
「…ん…」
「タクももう限界みたい」
「私もです」
「とりあえず…寝ようか」
「だねー」
そのまま皆でバタリと身体を床に投げ出すと、あっという間に睡魔がやってくる。
無事に全員で夜を越えたことに安堵しながら私はその睡魔に身を委ねるのだった。
これ大丈夫かな
読んだ人はちゃんと理解できるんだろうか
いつまで経っても文字にする事の難しさに振り回されています
申し訳ありません
あと英数字と漢数字が入り混じっているのもすいません…名詞は漢数字で…とか思っているのですがややこしいかもしれない…




