巨頭オ 其の5
「来た来た来た!!」
ガサガサと進行方向右の草むらを分けて先程の化け物と同じ様な奴が飛び出して来る。
先程の個体とは違い、目や鼻といった顔のパーツがあちこち、てんでばらばらな箇所に存在している。
「なんだこりゃ…」
部長がそいつの目の前で懐中電灯を点灯すると「ギュっ」と声を漏らし、身体を丸ませる。
すかさず俺が蹴り飛ばし、尻もちをついてジタバタともがくそいつの横を駆け抜ける。
「これで乗り切れますかね」
「周りが明るいからね…懐中電灯も目の前で点けないと大した威力が期待出来ないのが不安ではあるね」
「アンタら怖くないのか…?」
「正直言ってめちゃくちゃ怖いんですけども…」
怖くないわけがない、何度か怪異と遭遇し、多少は耐性がついたとは言え、精々「怪異は実在する事を理解している」程度であり、恐怖心が無いはずがなかった。
「ほんの少しだけ、慣れている程度ですよ」
「あー、あとは今が昼なのも助かっているね…これが夜中だったらもうひとつ怖かっただろうね」
「それは同意です…」
「!!来るぞ!左前方!」
「今度は一体どんな………」
バサっと草むらを割って飛び出して来た個体を見て俺達はあまりの動揺に足を止めてしまう。
「なんだぁ!?」
「ぅわあああ!!」
それは先程同様に歪で巨大な顔面をしてはいるが、サイズは先の2体の半分程しかなく四足歩行で尻尾までついている。
涎を垂らしながらグルルと唸るそれはまるで毛の生えていない犬のような体格をしていた。
「人面犬だ」
「私の想像と違うんですけど…」
「奇遇だね、私も思っていたのとちょっと違っていたよ…」
「ちょっと?」
顔面を引きずりながら近付いてくる。
「懐中電灯!!」
「分かっている!」
だが部長が懐中電灯を構えるその一瞬で、目の前の犬型は飛びかかってくる。
かろうじてそれを躱すも、それはすぐさま俺達に狙いを定める。
「危ない!!」
更に先程蹴飛ばした一体が歯をガチガチと鳴らしながら突っ込んでくる。
「走れ走れ!!」
懐中電灯の眩しい光が一瞬辺りを照らすが、直後にガシャンという嫌な音と共に懐中電灯が砕け散る。
「くそう!犬にやられたぞ!」
「人面犬は害の無い都市伝説じゃなかったんでしたっけ!?」
「じゃああれは厳密には人面犬じゃないのかもしれないね!!」
「今はいいから走ってください!!」
全員が怒鳴りながら村に向かって走る。
その間にもどこに隠れていたのか様々な個体が俺達を追うために合流してくる。
「まだこんなのもあるぞ!!」
最後尾にいた部長がそう叫んで自身の真後ろに向かって何かを噴射すると、叫び声と共に奴らがその場で悶絶し始める。
「振り向くんじゃないぞ!くねくねにも使用した激辛スプレーだ!吸い込んだらただでは済まない!」
「やりますね!」
「まだ来るぞ!」
見ると村にある倉庫らしき建物の扉が粉砕され、中から奴等が姿を現した。
中には豚の様な個体も存在し、ここは元々は酪農家だったのだろうかと思わせる。
その豚型の怪異はこちらに興味が無いのか、その場で鼻をヒクつかせているだけだった。
「動物園ですねまるで…」
「どれだけいるんだこいつら…」
「来た時は気配すらしなかったんですけどねぇ…」
「もう少しだ、景君、千影君こいつを渡しておこう」
渡された物は連発式の手持ち花火。
着火すると炎が連続で発射される仕組みの物で、1本につき20発、発射されるらしい。
射程距離は4mほどとの事だった。
「効きますかね?」
「残念ながらこれが最後の秘密兵器でね…火傷する程の火力は無いが怯ませるくらいならなんとか…どうだろう」
「まぁ当たって砕けるしかないですかね」
「私が先行しよう!さあ行こうか!」
花火の導火線に火をつけ、走り出す。
「フハハ!我が怒りの炎を喰らうがいい!ライトニングフレア!!」
「全然ライトニング要素無いんですけど」
「景君、そっとしておいてあげてください」
ボシュ!ボシュ!と花火が発射され、炎の塊が巨大な顔面に命中する。
ダメージらしいダメージは無いようで、意に介さずこちらに向かってくるが、そいつに向けて放った炎のうちの1発が剥き出しの眼球に当たると、大きく叫んで身を捩る。
「いけるぞ!」
3人で花火を発射しながら駆け抜けるも、前方の家屋から、草むらから、まるで際限が無いかのようにワラワラとそいつらは現れる。
「強引に行くぞ!」
四方八方から奴等の唸り声とも咆哮とも分からない声が響いていた。
文章が…荒れている…




