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てけてけ 其の10


来客用の学校案内図を確認し、音楽室の場所を把握する。

カタカナのコの字形になっている校舎の奥に目的の部屋はあった。


「どこいった…あいつ」


俺が掃除用具入れに隠れてメモを読んでいる間に、奴が玄関から校舎内に入ってきたのは音や気配で感じてはいた。


「どうやって鍵のかかった玄関を…」


ガラスが割れたような音はしなかった為、そちらを見やると、鍵の部分が見事にへしゃげていた。

ガラスを割ること無く、(ふち)の鉄枠だけをバール等で無理矢理こじ開けたような、そんな印象を受ける。


「やっぱり…あれに捕まったらミンチにされる…」


ゴクリと唾を飲み込む音が大きく感じて、辺りを見回す。

今更ではあるが、警備システム等は無いようだ。

今の状況の俺には警備システムが適応されないのか?とも思ったが、部長達が先にここに入っている事から警備システム自体が無いと考えるのが自然だろう。


「部長はどうやって鍵開けたんだろうか…」


なにやら違法な棒を鍵穴に突っ込んでカチャカチャとする部長の姿が在り在りと想像できてしまう。


「千影さんに不法侵入で突っ込まれてそうだな…」


間違いなく行われているであろう、二人のやり取りを想像して思わずほくそ笑む。

姿は見えないが、2人が近くにいてくれるというだけで心に余裕が生まれる。

短い期間の付き合いではあるが、俺の二人に対する信頼というのは思ってた以上に大きいようだ。


「!!」


そんな事を考えながら慎重に音楽室に向かっていると、どこからか、決して遠くない場所でペタペタと素足で歩くような音が聞こえた。

直感的にてけてけだと思い、近くの教室に身を潜める。

そういえばこの教室にも鍵はかかっていなかったが、窓や玄関は施錠しても教室1つ1つにはわざわざ鍵をかけない学校は多いんじゃないだろうか。


「…………」


息を殺して奴が行き過ぎるのを待つ。

ペタペタと音が近付き、ごくごく自然に俺の隠れている教室の前でそれは停止する。

ホラー映画等でいつも思うのだが、何故あいつら化け物は人間の隠れている場所が分かるのだろうか?独特な匂いでもするのだろうか?

カラカラと教室のドアが開かれて、ペタペタと奴が入ってくる。


「…………」


じっと身じろぎせずに奴が引き返すのを祈るが、そもそもこの教室にピンポイントで入ってきた時点で奴には確信があるんじゃなかろうか?

俺がここに隠れているという確信が。

それともたまたまこの教室を怪しいと思い入ってきただけなのだろうか…?

クンクンと自分の匂いを嗅いでみるが特に変な匂いがするとかではない……と思いたい。


ズズ


と奴が教壇の下を覗き込む。

残念、そこに俺はいません。

キョロキョロとしながら教室の後ろのロッカーに向かいガチャリと開ける。

もひとつ残念、そこにも俺はいません。

それを確認すると奴はカーテンや天井を一通り一瞥した後、教室を出ていった。


「あぶねぇ…」


俺はふぅと息を吐く。

ただ油断は禁物だ、こういう時に行ったと見せかけて実はまだそこにいました!というのがホラーの定石だからだ。

口裂け女さんの時にそれは体験済みである。


「俺は成長しました」


さらに念入りに警戒した後、俺はようやく窓の外から教室に戻る。

そこは教室の窓の外、そこにはベランダと呼べるような上等な物ではないが20cm程の足場がある。

落下防止の為かただのデザインなのかは分からないが、俺の通っていた学校にもあったのでもしかしたらと思ったのだ。


「よし、後は音楽室に」


カラカラとゆっくり教室の扉を開けると…


「うわああああ!!!!」


奴はそこでジッと待っていた。

こちらをじっと見つめている生気のない真っ黒な瞳と目が合う。


「ふ、ふ、ふ、ふざけんなああああ!!!」


バンっと扉を閉めバタバタと教室の後ろの扉に向かう。

冷静に考えるとそれも危ないのだが、その時の俺にそんな判断力は存在しなかった。

ただ、俺にとって幸運だったのは奴がそのまま前の扉から教室に入ってきた事だった。


「何も成長してなかったですー!すいませんでしたー!」


後ろの扉から這いずるようにして教室を飛び出し、そのまま一気に駆け足で音楽室に向かう。

誰に対してか分からない謝罪を叫びながら俺は走った。


「!?」


音楽室が近付くと微かにピアノの音が聞こえてきた。


「千影さん!」


こいつをこのまま連れて行っても大丈夫なのだろうかとも思う。

けれど俺は2人を信じる事にした。


「入りますけど!危険なら窓の外に逃げてくださいよ!!」


そう叫びながら音楽室の扉を勢いよくバンと開く。


そこには誰もいなかった。


けれどピアノの鍵盤だけが自動演奏のように押され、音を奏でている。

小気味よい軽快なピアノの音が響く音楽室。


「いる!」


ここに千影さんがいる!

異次元がどうのこうのなのか、てけてけの能力なのかは分からないが、確かにここに千影さんはいる。

姿こそ見えていないがなぜかその確信があった。




迷走してないか…自分?


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