表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/258

第八話 王都出発


服屋と道具屋を巡り、いよいよ王都の外に出る時がやって来た。


目指すは北東……ブルースター霊峰を避けつつ北の『テッセン』を目指す。



王都の大きく頑丈な門を通り抜けると、街道沿いにどこまでも広がる畑が目に飛び込んできた。


「うわぁぁぁ……」


カンナ王子が目の前の景色に言葉を失っている。

今まで城をほとんど出たことが無く、王都から外に出たことは一度もない為、目の前の景色に心を奪われているようだ。


(可愛いよ王子! マジ可愛い!!)

感動している王子に感動する私。

ああ~これが王子と二人旅ならなぁ……。


「いつまで突っ立ってるのですか? 邪魔なんですけど?」

「畑の真ん中で立っててよ、ライラ姉。 案山子として人の役に立てるから」


可愛いけど子憎たらしい二人の年下から辛辣な言葉が飛んで来る。

くぅ~ゆっくりカンナ王子を見る事も出来やしない!



「さぁ、カンナ。 ライラ姉は放っておいて行きましょう」

リアがカンナの手を握る。


「でも、僕はライラも一緒が良いな。 守ってくれるって言ってくれたもの」


(カンナ王子!!)

私が嬉しさで目を潤ませていると、


「駄目だよカンナ。 ライラ姉は剣を振るう事しか頭にないから、頼りにならないよ」


マリーのやつぅ! カンナ王子に何を言ってくれるんだ!

……いや、ここは年上の余裕を見せるんだ! 落ち着いて……深呼吸して。


スーハー深呼吸する私に、


「ほら、カンナ。 ライラがフゴフゴ変態みたいな呼吸しておりますわ。 あれはもう末期なのですよ」

リアが私を指さして見せる。


「って誰が末期よ!!」

う~つい反応してしまったじゃない!


「ほらほら、いい加減いくよ!」

マリーが先を促す……あんたも参加してたくせに!




そうして広く続く畑の街道を進み始める一行。

ライラ以外は体力がなく休憩を多く挟み進んで行く。


王都から離れるに従って、続いていた畑は荒れ地に変わり、整備された街道はあぜ道の様に変わって行った。

そして街道を行く人達もライラ達だけになる。



「ねぇ、ライラ。 あれって何て言うの?」

「ああ、あれはですね。 トンボっていうのですよ」

「ふ~ん、じゃああれは~?」


見るもの聞くもの全てが新鮮なカンナは目につくもの片っ端から質問してくる。


「じゃあ、あれは~?」

「あれはキノコと言うものですよ。 食用もありますが、毒の物も多く種類も多く見極めが難しいです」

「へぇ~……ちなみにあれは食べられるの?」

「いえ、あれは毒キノコですね。 あの特徴的な……」


色々は質問が飛んできては真剣に食い入るように説明を聞いてくれるカンナ。



(ああ……幸せだわ)

見上げてくる王子が眼福で、質問してくる声が聴福で……とライラは嬉しくなり、つい王子に返す言葉も弾みがちになる。


ちなみにリアとマリーの二人は体力がなく会話するどころではない様だ。


(フフン! これは私の土俵の様ね)


「ねーねーライラ。 じゃああれは~?」


私達の前方から小人の様なものが走ってくるのが見える。


醜悪な顔に大きくひね曲がった鼻。

ボロボロな衣服を纏い、手には骨を削って作った剣を持っている。


「ああ、あれはですね~……ってあれは!!」


ポヤポヤしていて反応が遅れた!

急いで王子の前に立つと、


「あれは魔族のモンスター、ゴブリンです!!  カンナ、私の後ろに!」


そして、


「リア、マリー! ゴブリンよ! 戦闘態勢を……」


振り返ると二人して杖に寄りかかりはぁはぁしている。


(も~!)


正面に目を向ける……どうやらゴブリンは五匹いるようだ。


知能が低いせいか正面からの突撃をしてくるようだ。

回り込むといった知識がないのである意味楽ではあるが……。



であれば……、


ライラは剣を抜き放ちゴブリン達に駆け寄る!


回り込まないのであればこれで全員。

こいつらを倒せば問題ないであろう。



「華月流 一輪刺いちりんざし」


先頭のゴブリンにぶつかる直前で体勢を沈ませ、一気に下から上に剣を突き出す!


ゴブリンの喉から後頭部に掛けて剣先が突き抜けた!!


「ごぼっ!」


ゴブリンが変な声を上げて絶命する!



「ぎぎゃ!」


その凄惨な最後に、他のゴブリン達が浮足立つ!



剣を振るって刺さったゴブリンを投げ捨てると共に、残りのゴブリン達に素早く走り寄る!!


「華月流 四龍しきみ


走りながら袈裟斬り、逆袈裟、袈裟斬り、逆袈裟と四匹のゴブリンにそれぞれ一撃ずつ入れていく。


一度も止まらず走り抜ける様に上から下、下から上そして繰り返し……まるで龍が体をくねらせて通り過ぎる様に剣を叩きこんだ!



最後のゴブリンを斬り捨て、デュランダルを一振りして血糊を払う。

ゴブリンの青っぽい血が地面にタタッと跡をつける。


そして、ゴブリン四匹が続くように倒れていく……。

確認したが全て致命傷……四匹とも絶命していた。



「くっ……はぁ~」


止めていた息を吐く。


ハーデンから教わった剣技『華月流』は少し特殊なものであり、使用したあとは体に若干負荷が掛かる。



周りを警戒するが……他にゴブリンはいない様だ。


(やっぱり今ので全員かな? 単細胞で良かったわ)


魔族の中でも最下層の下っ端であるゴブリン。

それでも数で来られたりすると厄介だし、戦いに慣れていない農民や市民は苦戦するだろう。


カンナ王子は……血を流して絶命したゴブリンを見て気絶してしまったようだ。

リアとマリーは息を整え終わったようで、どちらが気絶した王子に膝枕をするかで言い争っていた。


っておい! 人に戦わせるだけ戦わせておいて~……全く!


最初からこんなので旅なんて出来るのかしら?


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ