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第六話 行程計画


私達はカフェの奥にある大きなテーブルを囲いつつ四人で相談し合っていた。


王子呼びはまずいという話の続きから……。


「でも、カンナ王子の事をなんて呼べば良いのかな?」


「カンナで良いよ〜」


私の言葉にカンナ王子が可愛い瞳で見上げて答えると、テーブルの上にあるホットミルクのカップに手を伸ばす。


「まぁ……カンナ王子がよいのであれは、そういたしましょうか」

リアが答えると、カンナ王子はカップをふ〜ふ〜しながら頷く。

(ふ~ふ~する姿も可愛い!)


偽名の案もマリーから出されたが、カンナ王子が混乱しそうとのことで最終的に『カンナ』となった。



「行き先としては『テッセン』だったかな? だとすると……」

テーブルの上に地図を広げていく。


一番南が私達のいるストケシア王国。


テッセンはそこから北に向かった所だ。


ストケシア王国への侵攻回数が一番多く、機械文明の国である。

国の大きさとしては小さいが有力な軍事力を持つ。



それでもストケシア国が幾度もテッセンを退けてきた理由としては大きく2つあるだろう。


一つは、ストケシアは国としては大きく、未開の地もある事から冒険者や傭兵などが多い。

また、魔法なども盛んに使われており、その力……人口の多さによってテッセン軍を何度も撃退していた。



また、もう一つはテッセンとの国境にあるブルースター霊峰である。

この霊峰は高く険しく雪深い。

その為、直接的な侵攻を妨げる天然の壁となっていた。


それでもテッセンは空から、トンネルからと色々な手で襲ってきたのだが……しかし、それだけに大軍を送ることができず、勢力としては脅威とまではならなかった。


魔族に襲われたりもあったらしいが……。




「でもブルースター霊峰はどうするの? 東西どっちから行く?」

マリーの声に暫し思案する。


ブルースター霊峰を迂回するルートとしては東周りと西周りがある。

東は道のりが長いが比較的安全。

西は東より短いが魔族の国ギタリスに近い。


魔族も王を倒されてからは比較的大人しいが、それでも襲ってくるものはいくらでもいる。



「まぁ、東周り一択でしょう」

私が答える前にリアが答えた。


私としても同じ意見なので頷いておく。


……リアのやつ、同意見なのに私と一緒だからか嫌そうな顔をしたな!

いいじゃんか〜同じ意見なんだから!



「じゃあ、東周りで行くんだね?」

カンナ王子……改めカンナの言葉に、


「そうですね。 霊峰を登るわけではございませんが、厚着を持って行ったほうが良いでしょう」

山を迂回するにしてもそれなりの高度に迂回ルートがあるせいで寒くはなるらしい。


それを考えると山の頂上ってどれだけ寒いのか……。



「では、出発前に服屋に行きましょうか。 それと道具屋に」


「道具屋って何を買いに行くの?」


マリーが訊いてくる……いつものトゲがある言い方では無い。

恐らく単純に興味や好奇心があるのだろう、目がキラキラしている。


(いつもこうなら可愛いのに……)


「旅には色々必要なものがあるのよ」

テントとか簡易スコップ、寝袋や着替え等はお城で準備してきたが、それでもまだいくつか足りない。


リアがカンナの手を引き立ち上がると、


「じゃあ、私がカンナと服屋に行きますので、あなた方お二人で道具屋に行くと宜しいですわ」


「却下」


何を言い出すんだこの聖女リアは。


「リア姉一人にカンナを任せられるわけないじゃないか」

マリーも反発。


「みんなで行こうよ〜僕も道具屋って言うの見てみたい」

カンナがワクワクした目でみんなを見上げる。


こうして全員揃って道具屋と服屋に行く事になった……筈なのだが。





「え〜っと? これはどういう事?」


私が少し混乱しながら後にいるリア達の方を向く、


「まぁ、みんな揃ってあれだけ王子の名前を連呼していればこうなりますわね」

リアが肩をすくめる。


カフェを出た私達を多くの人達が待ち構えていた。

いや、正確には『カンナ王子を』だ。



その人達の中から一人……若そうな女性の冒険者が人々の中から進み出ると、


「貴方達の誰かがカンナ王子と言うのは分かっているのよ。 素直に出てきてもらいましょうか」


どうやらこの四人の中で誰がカンナ王子か迄は分かってないらしい。


まぁ、マリーに次いで背が低く中性的顔立ちの……人の多さに怯えてキョロキョロしている人がカンナ王子とは気付きにくいだろう。



もちろん、素直に差し出すつもりはない。

私は一言だけ告げる。


「断る」


しかし相手もある程度予想していたのか、


「でしょうね。 でも私達だって妃の座が……この国を手中に収めるチャンスを易々と見逃すつもりはないわ」


そう言うと腰の剣を抜いた。

と言っても鞘が付いたままだ。


(なるほどねー痛い目は合わせるけど怪我はさせたくないってか? それとも王子を怪我させない為かな?)


私が見ている前で次々武器が構えられる。

私の後ろでもリアとマリーが杖を構える気配がする。



「悪いけど……王子を渡さないなら痛い目に合ってもらうわよ」


女性が言うなり剣を叩きつけて来た!



しかし踏み込みが浅い……これは。


(フェイント……本命は両方から襲い掛かってくる二人)


目の前の女性に気を向けさせ、両脇から横薙ぎに剣が振るわれる!


だけど、この距離なら……!



「え?」

目の前の女性が振り下ろした剣……鞘ごとなので斬られることはない……を掴み鞘を引き抜く!


そしてその鞘でそのまま両脇からの剣を受け止めた!


「!!」


目の前で瞬時に行われた動作に目の前の女性と、両脇の……仲間の男性達が驚愕の表情を浮かべている。



「そ、そんな馬鹿な! 貴方一体……」


「貴方達も冒険者ならこれである程度実力が分かったでしょ? 鞘のままだったりみねうち狙いだったことに免じて見逃してあげるわ」


「……そんな……」


目の前の女性が項垂れる……しかし、その横から別な女性二人が進み出る。


「だから言っただろ? 新参者が粋がるからさ!」


一人は盛り上がる筋肉を見せつける様なハーネス系の鎧を着込んだ女性で三十歳前後だろうか?

日に焼けて浅黒くなった顔をニヤニヤさせて項垂れた女性を押しのける。


「そうだぜ。 手加減とか考えるようじゃあねぇ。 まぁ最終的には俺が奪うけどな」


もう一人はがっちり鱗鎧スケイルメイルを着込んだ女性で、頬に大きな傷がある。

目はギラギラしており、好戦的なのが見て取れる。


しかし……。


(さっきの女性よりやっかいそうね)


恐らく冒険者レベルで言うと中堅かそれより少し上ぐらいに見える。

どうやら面倒な相手になりそうだ。


私は心でため息をついた。




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