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第五話 王城出発


旅支度を終えたカンナ王子の側には三人の王女達が立っていた。


(まだかしら?)

ライラも他の二人も旅支度を終えて、挨拶があるというアスター王を王城前で待っている所だった。 


普通は王直々に見送りなどないだろうが、そこは我が子の為らしい。



ライラはちらりとリアとマリーに目をやる。


ライラ含めてお互い微妙な距離を保ち無言で視線も合わさない。

何とも言えない微妙な空気が流れている。



カンナ王子はそんな雰囲気が分かっていない様だが、それよりもマントの裾が気になる様で、しきりに見ようとしている。


自分のマントの裾を見ようとして身体を回す。

そうするとマントも回転して視界から消える。

そしてまた回転する、マントが逃げる、回転する……自分の尻尾を追いかける犬のようだ。


(う〜可愛い……)

ライラが密かに見悶えるが、二人の手前、抱き締めたくとも出来ずもどかしさが募る。



暫くぐるぐる一人で回っていたが、しばらくして気付いたのか、


「ねぇ、リア。 マントの裾地面擦ってない?」

人に訊くと言う事を思い付いた様だ。


「あら? 大丈夫ですよ、カンナ王子。 擦っておりませんしお似合いです」


リアが優しく微笑みながらも返事を返す。


「良かった〜なんか擦ってるみたいで気になっていたんだよね」

ニコッとするカンナ王子に、


(くぅ〜あの笑顔が私にだったら良いのに!)

リアを羨ましそうに見ていると……。


「……ふふっ」

視線に気づいたのかリアがこちらを見るとドヤ顔で笑みを返した。

そうしてカンナ王子をナデナデする。


(むぅ〜! あれ私への当てつけでやってるな!)


周りから見ると天使のようなリアの微笑みだが、ライラからすると悪魔の嘲笑である。


ムカついたのでリアから目をそらしてマリーを見ると、マリーも複雑そうな顔でリア見ている。



実はライラ、リア、マリーの全員がカンナ王子と仲が良い。

だからこそ、その中で頼られていた事をライラは嬉しく思っていたのだが……。


(よりにもよってこの二人と一緒なんて……)

カンナ王子と一緒なのは嬉しいが……それだけに二人の存在ががっかりさせる。



「……ふぅ、全く。 カンナ王子の付添は僕だけで充分なのに」

ふと零れたマリーの言葉に噛み付いたのはリア。


「マリーのお子様に旅なんて務まるのかしらね? 私はお母様と一緒に旅していたから旅には詳しいけど」


「……どうせリア姉はただ付いていただけでしょ? それにカンナ王子を守る術を持っているのかな?」


リアとマリーの間で火花が散る。



「二人とも落ち着いて、カンナ王子がいるのよ?」

ライラの言葉に両者共矛を収める。


「「フン!」」


お互いに鼻を鳴らしてそっぽを向いてしまった。



(はぁ……全く。 途中でこの二人を撒いてやろうかしら……)

一番の年長者だし、私がしっかりしないと……そう思っていたライラはすでに投げやりになりつつあった。



「待たせたな」

アスター王が急ぎ足で現れると、


「一応充分だと思うが、お前達に旅費を預けておこう。 カンナの事を頼むぞ!」


「お任せください!」

「はい!」

「お任せを!」


三者三様の返事を返す。

そうしてカンナ王子もアスター王から別れの言葉をもらい、いよいよ旅立つ事になった。



「では、お父様。 行ってまいります」


「ああ、充分に気をつけてな」


可愛い子には旅をさせろ……正にそのままであり、アスターの目には涙が潤んでいる。

カンナ王子の目にも涙が浮かんでいるが……こちらは恐らく不安からじゃないかな?とライラは思った。


角を曲がりアスター王が見えなくなると、

「うぅ……大丈夫かなぁ?」

城を出て一分も経たずに不安そうな顔を見せるカンナ王子。


「大丈夫。 カンナ王子は僕が守るから」

マリーの言葉に、


「私がお側におりますから!」

「私もお支えします!」

私とリアも急いで続ける。


そんな三人をカンナ王子は泣きそうな顔で見上げると、

「お願いするね……頼りにしてるから」


目の端を軽く拭うのだった。




「カンナ王子、まずはどこに行きますか?」

ひとまず行き先を決めないと……。


「う〜ん、何処が良いのかな?」

あら? 質問に質問で返ってきたわ。


「では、先ずは一番近い国『テッセン』に参りましょう」


私がカンナ王子と行き先を楽しく話していると、


「それよりも大事な事がありますわ!」

リアが割り込んできた。


(む〜せっかくの話を……)

そう思っていると、

 

「カンナ王子、思ったのですが、旅に出るなら『王子』呼びは辞めておいたほうがいいかも知れません」


「あ、そ、そうだね。 王子王子言ってたら、周りの人が困っちゃうだろうし……」


「いえ、と言うよりあれです」


リアが指差す方には街の掲示板みたいのがあり、


『王子と初めてを交わした者を王妃として国を治めるものとする』


城からの触書が書かれていた。



「な、何これ!」

「うわっ! これって」

「どうして街中に……」


カンナ王子、マリーと一緒に覗き込んで驚いた。



「これじゃカンナ王子の指名手配じゃない!」

何を考えているのかあの王様は!


「なるほどね……カンナ王子が旅に出る事を見越していたわね……さすが賢王アスター」



(え、何その二つ名? 私初めて聞いたんだけど!?)

まさかあのカンナ王子を甘やかせて育てた挙句こんな企画をするアスター王にそんな名がついてるとは……。



「この前の成人の儀。 他国からの賓客も来てた。 他の国はこの国を狙っているし……もしかして絶好の機会と見るかも」


マリーに同意。

このまま他国巡りなど出来るのだろうか?



話を聞いて不安そうなカンナ王子に、

「大丈夫です。 私がお守りいたしますから」

安心させるように笑いかけ、その手を握ってあげる。


「う、うん」


不安そうにしつつも私を見てしっかりと頷いてくれる。



「ひとまず……何処か落ち着いた場所で今後の話でもいたしましょうか」

リアの提案は賛成だ。


「そうだね。 何事も計画大事」

マリーが同意し、近くのカフェで作戦会議となったのであった。


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