表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/258

第四話 王子救出


「カンナ王子!!」


ライラがドアを壊す勢いで開ける!

バキン!と何かが壊れる音がした様な気もする。



ライラの目にはベッドに縛り付けられたカンナと、ベッドの側で魔導書片手のマリーが飛び込んできた。


「……ドアには鍵が掛かっていたはずだけど?」

淡々と話すマリー。


「マリー! カンナ王子を返して!」


「『返して』……とは、また酷い。 まるで自分(ライラ)の物であるような言い方だね」


「そ、そうじゃないけど……」


「じゃあ、いいよね? さようなら」


「待って! 私はカンナ王子に守る事を約束しているのよ」


「……証拠は?」


「えぇ〜無いけど……カンナ王子はこの事を知っているわ」


ベッドのカンナ王子を見ると……気絶しているようだ。


「ライラ姉もカンナ王子を狙っているでしょ? だから……信用出来ないね!!」


マリーが指を鳴らす!



ライラとマリー達の間に岩の壁が湧き上がり分断する!



「僕がカンナ王子の心を掴むから。 ライラ姉はそこで見ているといい」


壁越しにマリーの声がする。

どうやらカンナ王子に何かしら魔法を掛けるつもりらしい。



(これは……不味いわね)


ライラは岩壁から少し下がると、


「華月流 三斬華(さざんか)


言葉と同時に剣を振る!


壁に一つの線が入り……そこから壁が崩れていく!


一振りに見えた剣閃だが三つの斬撃を重ねて一つの斬撃としている。

これにより硬い防御を打ち砕く事ができる。



崩れた壁から驚いた様なマリーの顔が見える。


壁を抜けマリーの手を掴んだ!

指パッチンさせない為だ。

「マリー、カンナ王子は返してもらうわ」


「……分かった、今回は僕の負けってことにしておく」

悔しげに言葉を吐き捨てると、部屋を出ていく。


(部屋……めちゃめちゃな事になってるけど、良いのかな?)


切った岩の残骸が部屋中に飛び散って砂や石だらけとなっている……。


(ま〜いっか! 私の部屋じゃないし)

ベッドに近寄ると、


「カンナ王子! カンナ王子!!」

声を掛けつつ体を揺さぶる。



だが、最近眠れないのもあったのかぐっすり眠っており、

「えへへ……猫さんだぁ……」

笑いながら寝言まで言い始めた。


「ぐはぁ!」

思わず叫んでしまう! 慌てて口を塞ぎ、


(はぁ……天使だわ……天使が舞い降りた)

ライラは起こすのも忘れてカンナの寝顔を見始めたのであった。



ちなみに一時間ほどして戻ってきたマリーから、

「まだいたの!?」

と言われて追い出されるまでそのままだった……。





「さて、どうしましょうか?」

ライラの言葉にカンナ王子がう〜んと唸る。


二人はライラの部屋に戻って来ていた。

ライラが気配を探るに、カンナ王子の部屋は色々ヤバそうであった。


城の中も安全ではなく、しかもリアとマリーもカンナ王子を狙っているようだ。

このままではいくらライラでも守り切れる自信がない。

怖いのはあの二人が組んだ時だった。



(いっその事、私と結婚なんてどうでしょう?)

と思わないでも無いものの、その言葉を出す訳には行かなかった。


それにはライラなりの理由もあった。



唸っていたカンナ王子だが、

「う〜〜、城を……出るとか?」

城が危険なら城を出ればいい……確かにそうなのだが。


「何と行って城から出るのですか? アスター王は恐らく許可しない気がしますが……」


「えっと……自分を鍛える?」


「ふむ〜」


カンナ王子と一緒に腕を組んで考える。



カンナ王子がハッと顔を上げた!

「そうだ! たしか前に……」


以前、アスター王からカンナ王子に他国への挨拶周りを進められた事があったそうだ。

その時は全力で拒否したそうだが……。


「ちなみにどうして拒否したんですか?」


「知らない人怖いから」


「……」


(これは……アスター王も苦労するわね)

アスター王に同情を禁じ得ない。



「たから、他の国に挨拶に行くと言えば、お城から出れるかも……」


「確かにそうですが……他の国に挨拶周りに行けますか?」


「うっ……そう言って逃げるとか?」


「う〜ん、カンナ王子がそれで良ければ私はお供いたしますよ」


「うん、それで行くね。 そしてお城から出て、ほとぼりが冷めたら戻って来よう!」


カンナ王子はウンウンと頷くと、早速ライラを連れ立ってアスター王の元を尋ねる事にしたのだった。




「構わんぞ」


アスター王からはあっさりと許可が出た。


あまりの展開に言い出したカンナ王子も聞いていたライラも唖然とする。



するとアスター王が不思議そうに、

「どうした?」


「い、いえ……」

ハッと我に戻るとカンナ王子が慌てて返事をする。


「他の国との関係も大事な国政の一つじゃ、しっかり頼むぞ」


「はい!」


嬉しそうにカンナ王子が返事をする。


(カンナ王子の計画通りになったかな?)

ライラも後ろで控えて聞いていた。



しかし二人が予想しなかった事が起こる。


「それではこれを……」

アスター王が側にあった封書を取り出す。



「?」


訝しげな二人に、


「これには各国への書状が入っている。 これを持ち、各国の代表から署名をもらってくるのじゃ」


「えぅ!」


「どうした? 何かあるのか?」

微笑みながらも目は笑っていない!


(これは……カンナ王子の作戦見破られているわね)


さすが父親、子供の考えなんぞお見通しと言う訳らしい。

これでは逃げる事ができない。


「それでは西妖せいようの国以外の五カ国を周り署名を貰ってくるのじゃぞ」


アスター王から告げられ、カンナ王子は泣きそうな顔で頷いた。


ちなみにこの世界には六つの国がある。


草花の国ストケシア

機械の国テッセン

魔法の国スノーフレーク

地底の国カタクリ

東邦の国サクラ

密林の国エーデルワイス


そして西妖の国ギタリス


私達のいるストケシア王国は大陸の一番南にあり、大陸で最大の大きさを誇る。

その為か他国やギタリスにいる魔族から侵略先として狙われる事がしばしばあった。


現在ではアスター王や先代により国家間での争いはなくなり、一応お互いに不可侵条約を交わしてはいる。

ただしギタリスの魔族達は人を狙い続けていた為、勇者アイリスによって魔族達の王を倒される事となった。



ちなみにストケシア王国は土地は広いが田舎で、主な産業は農業などだ。

ある意味広い土地を活かしているとも言える。



そして、そんな五カ国を巡る使命がカンナ王子に下されてしまったのだ。


さらに……、


「もちろん、カンナ一人に旅などさせる訳にはいかない。 王女の三人もついて行くように」


「ええ! 私はともかく、他の二人もですか!?」


「うむ、あの二人も聖女と大賢者の流れをくむ者。 実力は高く儂も評価しておる。 しっかり頼むぞ」

アスター王の目を見るに拒否権は無い様だ……。


もしかしたら、どうしても三人の誰かと結び付けたいのかもしれない。



(せっかくカンナ王子と二人旅だったのにぃ……)

よりによってあの二人とだなんて……、


思わぬ展開にガックリとうなだれるライラだった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ