第二話 深夜訪問
第一話 サブタイ変更しました。
爆弾発言があったその夜。
コンコン
控えめにライラの部屋がノックされた。
「はい、どうぞ」
(多分……カンナ王子かな?)
控え目なノックと昼間の事を考えると、恐らくそんな気がしていた。
そしてそれは正しい。
恐る恐るドアを開け、カンナがちょっとだけ顔を覗かせる。
(ふぅわう! 可愛すぎか!!)
顔にはおくびにも出さず心の中で叫びまくる。
「大丈夫、遠慮しないでいいですよ」
ライラが笑顔をみせると、ようやく安心したように部屋に入って来た。
カンナ王子が部屋に来てくれた事に心の中でガッツポーズしながら跳ね回るライラと、眉をハの字にして泣きそうな表情のカンナ。
(に、にやけそう……頑張れ私!)
ライラは優し気な表情を(頑張って作り)カンナに向ける。
「さぁ、そちらの椅子にお掛けください。 丁度今紅茶を入れてもらったんです」
暖かな湯気を立てて紅茶がカップに注がれる。
それを二人分準備して、カンナの前と自分の前において椅子に座った。
カンナはだいぶ顔色が悪い。
それはそうだろう……アスター王の発言により、色々な人達に狙われるとなったのだ。
カンナは俯いて暫く手を弄んでいたが……思い切って顔を上げると、
「どうしよう? ライラ……僕怖い。 あれからみんな見る目が違ってて……」
潤んだ目で見つめられる。
カンナは本当に参っているようだ……。
(う~ん、潤んだ瞳のカンナ王子も可愛くて好きだけど、このままじゃ精神的に参ってしまうかも……何とかしないと)
ライラは少し考えると、
「分かりました、私がカンナ王子の事をお守りいたします」
ライラの言葉に少し顔を明るくすると、
「本当!? 僕を守ってくれる?」
「もちろんです。 これでも剣には自信がありますから」
「良かったぁ。 ありがとう、ライラ!」
ホッとしたように笑顔を見せると、紅茶をコクコク飲みだした。
緊張していて喉の乾きにも気付かなかった様だ、紅茶を一息に飲みほした。
「ライラはいつも優しくしてくれるし、僕の事狙ったりもないだろうから安心だよ!」
(……う、心が痛い)
カンナの事が好きなライラは複雑そうな表情を見せるが……信頼しているのかカンナは気付かないようだ。
「え、えっと、ひとまず明日の昼前にお迎えに上がれば宜しいでしょうか?」
「うん、お願い〜」
ぱぁとあかるい笑顔を向けてくるカンナ。
(ぐはぁ!! 可愛い……もうどうしようか、この子は!)
今夜は興奮して眠れないかもしれないわ……。
カンナは紅茶を飲み干し、ピョンと椅子からおりると、
「ありがとう、ライラ。 夜にごめんね」
「いえいえカンナ王子の為ならいつでも大丈夫です!」
「ううん、助けられてばかりで……。 それじゃおやすみなさい」
部屋のドアを開けて出ていく。
「おやすみなさいませ」
カンナは手をピコピコ振ると、ドアを閉めて出ていった。
「くふふふ……カンナ王子が私を頼ってくれる。 これはもはや独占出来るのでは!!」
ライラが犬なら嬉しすぎて尻尾が千切れるほど振っている事だろう。
(このままじゃ寝れないわ!! 腕立て伏せ1000回もう一回しようかしら)
そう思っていると……。
ガタッバタッ!!
ドアの外、廊下の方で音がした。
ライラの耳が微かな声を拾う!
(カンナ王子!!)
咄嗟にデュランダルを掴むと廊下に飛び出した!!
すると、
「ん〜! んん!」
猿轡をされて体を縄でぐるぐる巻きにされているカンナ王子。
そしてその近くにはライラの登場に驚いたのか固まっている給仕の姿があった。
「貴様! カンナ王子に何をしている!!」
体から怒気が溢れる……すぐにでもデュランダルを抜きそうなライラに、
「お、お待ちください! こ、これは……ぞ、賊です! 賊が現れ、私はカンナ王子を助けていたのです」
慌てふためく給仕に、
「カンナ王子、本当ですか?」
カンナが首をブンブン振り回す。
「チッ!」
給仕が舌打ちして地面に煙幕を投げつけ……その前にライラがすれ違った。
「!?」
給仕の手から煙幕のアイテムが転がり落ち……それは柔らかい絨毯の上を転がっていく。
そして、給仕は驚きの表情を浮かべたままグラリと体を傾けそのまま廊下の床に倒れ込んだ。
「フン! 本当なら斬ってやりたいが……カンナ王子の手前、みねうちにしてやる」
鞘に入ったままのデュランダルをブン!と一振りすると、
「カンナ王子! 大丈夫ですか!?」
すぐに駆け寄り縄をほどく!
「ぷはぁ! はぁはぁ……うぅ、ライラぁ……怖かったよぉ!!」
縄と猿轡を外すと、泣きながらライラの胸に飛び込んでくるカンナ。
「おぶぅ!」
(危ない! 変な声出た!)
大声で泣くカンナを抱きしめつつ、「もう大丈夫ですよ」と声を掛ける。
(……私もう嬉しすぎて……鼻血出てないよね?)
さらっと鼻の下を撫でて確認する。
王子が攫われかけたのに不謹慎な事を考えているライラだった。