第一王妃と婚姻契約
短かいです。ごめんなさい。
私たちは恋愛結婚ではない。
契約によって結ばれた結婚なんだっけ?
政敵を追い落とし、実兄を病死させ、王座奪い取った直後の男性ーアルバート陛下と最初で最後の個人面談をしていた。
「王妃として生きて俺の横で矢面に立つか、いつ殺されるかもしれない後宮の奥で息を潜めて待ち続けるか?」
昨日まで陛下の実兄が国王であり、私の婚約者だった。20歳も離れていたし、父が権力にすり寄った結果だったので、私が生きていくためには他に方法はなかった。神経質で、狭量で、何も信じるものがなく、自分を脅かすと感じた者を次々と処分していった前国王。
十分すぎる警護。そのルートに乗る限り、生命の保証だけはされていた。処分されたくなかったから、ただそれだけで目の前の課題をこなしてきた。
今回、父はギリギリで陛下に乗り換えたらしい。が、娘のことまでは考慮されていなかったようだ。
前国王の婚約者という立場。今後の自分。
先程国王となった陛下が選択を迫る。
どっちもどっちだという心のつぶやきが表に出ていたらしい。
すると、甘くいい声が優しく耳に響く。
「では、王妃をやってみない?」
ずっと俯いていたアーリアは、顔を上げた。
興味深げな表情を浮かべ、すべてを見抜くような目で見つめられていた。
目が離せない。なんて綺麗な目をしてるんだろう。
アーリアがアルバートの顔をはっきり見たのは、この時はじめてだった。
衝撃的だった。
『なにこの人!大天使様みたい。キャー、この人の妻ですか!!やるやる。絶対やりたい。』
「王妃、やらせてください。根性だけはあります。がんばりますから。」
目をきらきらさせながら、アルバートに迫った。
「…ああ、このタイプだったのか…」
アルバートはぼそっとつぶやいた。
そうして私は彼の正妃になる契約を締結した。
「アルバート、彼女でいいんですか?」
サインしたての契約用紙を丸めながら、秘書官ウォルガーは廊下を歩く。
「やる気があるので、いいよ。根性もあるらしい。時間無いし、条件の整っている他の女性をすぐには用意できない。」
アルバートは、次の仕事の段取りを考えていた。
「…頑張ってください。おそらく、初夜はないですね。白い結婚。またまた、生殺し」
「それ言うな。現実になりそうだから」
考えないようにしてた。仕事が忙しすぎる。
しばらく帰れない。
たまに、深夜前に帰れたとしても、睡眠不足でベットに吸い込まれる。
同じくベットに吸い込まれるように倒れ、そのまま眠りに落ちる生活を続ける王妃は、多少の物音では起きない女性だった。