傾城の美女と婚姻契約
傾城の美女と婚姻契約を連載にしました。
そんなに長くならないと思います。思うんですけどね。
ラブコメチックにノリの良い話の予定が、意外にシリアス展開になってしまいました。
よろしくお願いします。
銀の髪と青い瞳。儚げな表情と華奢な肢体。
東の国で花魁と呼ばれる派手な着物を着たうら若き女性がにこやかに鎮座していた。
「姉さん、また派手なよくわからない格好して」
「お兄様いわく コスプレ というらしいですわ。ちょっとお仕事でお相手の方に驚いていただこうかと思い銀髪碧眼にしてみましたが、残念な結果に」
わざとらしくため息をついた。
「アルバート様はきたんですね。」
「にこやかに驚きもせず、契約しやがりましたわ」
彼女の脳裏には、契約を交わした時の王とのやり取りが思い出される。
「はじめまして、でいいかな?レミリア殿。
麗しの婚約者殿。今回できれば第2正妃としてきて貰いたかったが、娼婦としてというのであれば側妃としてきてもらうしかないな。
第一側妃として、奥のすべてを任せることになる。妃を何人か送り込む予定なのでよろしくお願いしますね。表の仕事で忙しくて、後宮まで手が回らない。
ああ、それから、私の子でなくてかまわないけれど、子供は産んでもらう。
それが契約の条件ということでどうだろう?」
「最後の子ども云々は、嫌がらせですわね」
「その節はお世話なりましたしね」
「お受けいたしますわ」
ビジネスパートナーであるアルバート ディス レグシアトルと業務締結した。
「ところでお兄様は、東の国から帰る気配はないの?」
「暫く無理かな。嫁見つけたとか言ってるし」
東の国でなんらかの活動をしているらしく、人に会わずにいろいろできると引きこもって、嫁に食べさせてもらっているらしい。
そんな兄が以前、通信呪具を大量に送りつけてきた。
それによって以前の方法より格段に情報伝達がよくなり、遠隔地にいる家族とのやり取りもUPした。
この通信呪具を持つ者が30人を超えた時、姉が情報のコントロールを一手に引き受けてくれることになった。
だが、この姉、レミリアは傾城級の美女で、ここの看板なのだが、問題ありあり。
そもそも、娼館にいるのに、客はとらないとか人と会う時も眠たいですと言ってブッチしたり、同館の娼婦からは客と寝ないって何様!等負のスパイラルが渦巻く有様。もちろんわざとだ。この仕事が来たときのための布石だろう。
「そろそろここも潮時かなと思って、お受けすることにしましたのです。夜伽の相手をしないほうがむしろプラスに働く良い職場。」
「そーですか。次は後宮ですね。警備きびしーですけど、俺ら忍び込むの大変困るんですけど?」
「大丈夫です。奥の人事すべて好きにして良いと聞いております。私的には動かなくてもいいし、側妃だから公式行事ありませんから、ひきこもれますし、毒殺さえ気をつければ、なんてことありませんわ。なので、食事担当を何人か手配お願いしますね。」
暫くして、政変が起こり、混乱に乗じて後宮へ召し上げられた。
第一正妃の肩書きを持つフィリアーリア フィン レグシアトルことアーリアは王妃としての公的仕事をすべて押し付けられた。
現在、公式舞踏会でアルバートと優雅にダンスというお仕事中。
「むっちゃお仕事多いです」とこぼしたくなるぐらいの状態だが、笑顔は絶やさない。
現在、正妃が1人しかいない。側妃は結構いる。そもそも前国王の後宮そのまま受け入れ、外交上娶る必要があった妃も受け入れた。正妃を娶らず側妃は拒まずという方針らしい。
表の社交、公的行事がやたら多い。
なぜなら、このお方、半年前に国王になったばかりで、地ならしが済んでいないからだ。
「これでも後宮コントロールの仕事は免除したんだけどな。足りなければ正妃を増やすけど、それだけ大変になるよ。精神的にね。」
超合理主義のアルバートは、にこにこして言った。
そもそも前国王の第三正妃予定だったのが、現国王の第一正妃になっただけ。本来、後宮の奥にしまわれるか修道院に送られるかの身の上だったのだが、「お妃教育が済んだ未婚で結婚適齢期の令嬢」というそれだけで拾われた。合理主義な王様だと思う。
「結構です。がんばります。」
アルバートの妻になってしまったので、もう他に嫁ぎ先ないし、と心の中でつぶやいたと同時にダンスの曲が終わった。
自然にアーリアの腰に手をまわし、少し引き寄せた。
「お疲れ様、アーリア」
耳元で囁くように呟くと、愛おしそうにアーリアを見詰めながら2人で席へと歩いていく。
仲睦まじい王と王妃。
アーリアは王の笑顔を見るだけで、自然に乙女のような笑顔になっている。
アルバートはそれを確認した後、周りの者にも求められている印象に沿った笑顔を浮かべた。
リーリア→レミリア
ウェルガー →ウォルガー 名前変更しました。
4日間連続UPします。