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その(2)

私立嵯峨乃原高校しりつさがのはらこうこう。今回の私の転校先。転校はこれで4回目になるが関東地方に来たのは初めてだ。関東の夏も暑い。転校初日に遅刻なんてカッコ悪いからかなり早く家を出たけど、早朝にも関わらず駅から学校までの坂道を上ると汗が噴き出してくる。

結局予定より1時間ほど早く学校に着いた私は、担任の先生が来るのを職員室で待つことになった。思ったより早く現れた先生はあらかじめ用意していたプリントを私に手渡すと、チャイムの音と共に職員室を後にする。教室に向かうであろうその後ろ姿を私は少し距離を開けて追った。


「京都から転校して来ました佐野信長です。よろしくお願いします」

自己紹介を終えた私は、私しか知らないであろうこの独特の空気を敏感に感じとった。やっぱ名前気になるよね…女で信長なんてギャグでも笑えないし。私はこの名前が大大大嫌い!!それからこの中身だって。いや、今回は…今回だけは余計なマイナス思考になるのは止めよう。この学校では「フツーの」女子校生としてエンジョイするんだ!


私の転校生デビューの日は順調に終わった。と自己評価したい。早速、携帯アドレスを交換する友達もできた。彼女の名前は津田雪音つだゆきね。女の私から見ても「かわいらしい」という表現がぴったり当てはまる容姿で、大きくぱっちり開いた黒い瞳はチワワのそれを想像させる。

「何か解らないことがあったら何でも聞いてね。」

終礼を告げるチャイムが鳴り終わるより早く、隣の席の彼女がそう私に告げた。

「うん、ありがとう。」

「私は津田雪音。いきなり話かけてびっくりしちゃった?私ってばおせっかいな性格でさ。転校生が隣に座っていたらこう何かいろいろ教えてあげなきゃとか勝手に思っちゃうわけよ。」

不思議とおせっかいだなんて思わなかった。彼女のやんわりとした雰囲気が逆に好印象にさえ感じさせた。

「よかったらメアド交換しようよ。学校もそうだけどこの町の事もまだ何もわからないでしょ?何かあったら私に連絡してくるのだよ。今から私達は友達だからね。」

そう言って彼女はアドレスの書かれた小さなメモを私に渡すと、

「今日は放課後予定があってさ。そのアドレスにメールちょうだい。友達に遠慮は無用だから何でも言ってね。それではさらば。」

立ち上がった彼女は足早に教室から出て行った。


その夜、お風呂から上がったあとにメモに書かれたアドレス宛に早速メールを送てみることにした。

「転校生の佐野です。今日は津田さんが話しかけてくれてホントに助かったよ。誰とも話せないんじゃないかって不安だったんだ。いい友達になれそうだし明日からもよろしくね。」

そう打ち込んで携帯電話を閉じた私は、妙に浮かれた気分になっている自分に気付く。初日からいい感じの友達もできたし、今度こそ「フツーの」女子高生としてやっていける気がする。そんな考えがどうやら私の気分を舞上げているようだ。


今日も熱帯夜になるらしい。関東地方はここ1週間連続して熱帯夜だそうだ。にも関わらず、私は目を閉じて1分もしない内に深い眠りの奥へと沈み込んでいった。





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