END
END
それは物語の終わりを意味する言葉。
だが実際、その主人公にはまだまだ人生が続くわけで。
ハッピーエンドの物語も続けばバッドエンドになりえるというわけだ。
だから物語の終わりに添える言葉は、「END」ではなく「著者はそこで書くのをやめた」というのが正しいと思う。
これが毎晩読んでいた本を読み終えた僕の感想だった。
時刻は23時45分。
明日も学校があるので、本を閉じ、布団に入る。
僕は眠りについた。
目が覚めるとそこは自分の部屋だった。
…あたりまえだ。
この白い天井なんて何千回と見てきているのだから今さら思う事など何も無い。
ベッドから起きて顔を洗いに行く。
この部屋は2階にあるので洗面所のある1階へ降りなければいけない。
顔を洗ったら朝ごはんを食べにリビングへ。
いつも母親が作っていてくれる。
今日も和食。
父親はもう食べ始めているようだった。
いつも通り、おはようと挨拶を交わし席に着く。
食べ終わると父親は会社へ行き、自分は高校の制服へ着替えに部屋へ戻る。
これが自分のいつも通りの朝だ。
準備を終え、洗濯をしている母親に行ってきますと言って家を出る。
住宅街から抜け出すために路地を右に曲がる。
するといつもは猫が日向ぼっこをしているのだが、今日はいなかった。
代わりに男性が2人いた。
1人は横たわっており、もう1人は馬乗りになっている。
取っ組み合いでもしていたのだろうか。
馬乗りになっている方の人の手にはナイフが握られている。
その手は紅く染まっていた。
地面のコンクリートも同じく紅色が広がっていく。
馬乗りになっていた人がゆっくりと立ち上がった。
パーカーのフードを被っていて表情はよく見えない。
そしてそのままゆっくりとこっちを見た。
やばい!
急いで来た道を引き返す。
走る。
絶対これ、殺人事件を目撃してしまった。
足音が追ってくる。
それはそうだ、目撃者は口止めしなければ。
口止めにはどんな方法がある。
お金、恐喝、
殺害。
走る。
追いつかれたら終わりだ。
幸い、家から出てすぐのことだったので逃げ場はそう遠くない。
足音も遠くなってきた。
家だ!
門を開けて、閉じる。
急いでさっき締めた玄関の鍵を開ける。
あいつはもう追って来てないのだろうか。
震える手でようやく鍵を開けて家の中へ入る。
入った瞬間鍵を掛けた。
ふぅー。
一息つく。
「どうしたの?」
ビクッ
母親が戻ってきた僕を不思議そうに見ている。
「忘れ物?」
ふるふると首を振る。
「?」
不思議そうなは母。
「人が………刺されてた。」
それからは大変だった。
母親に説明し、警察に通報。
父親も帰宅し、事情聴取が行われた。
僕は唯一の目撃者だったため、犯人が逮捕されるまで警察の保護を受けることとなった。
どこへ行くにも刑事が付いてくる。
安心する反面、鬱陶しくもあった。
それから数日後、犯人が逮捕されたと報告があった。
やっとこの生活から解放される。
僕に付いていた刑事さんも通常の仕事へ戻るようだ。
一件落着だ。
僕はまたいつもの日常へと戻った。
朝起きて顔を洗い、朝食を食べる。学校へ行く。
無事に学校へ着いたことに安堵し、授業を受ける。
帰宅部であるため放課後はすぐに帰る。
あとはこの曲がり角を左へ行けば、何事も無く家へ………。
ドンッ
人にぶつかってしまったらしい。
「すいません。」
額を擦りながらとりあえず謝っておく。
顔を上げるとぶつかった男性と目が合った。
あの時の犯人にそっくりだった。
手にはナイフが握られていた。
その手で腹を殴られた。
違う、刺されたのだ。
金属の冷たい感触。
引き抜かれると、視界にはいつの日か見た紅色が広がっていく。
コンクリートの地面が近づいてくる。
目が覚めるとそこは自分の部屋だった。
…あたりまえだ。
この白い天井なんて何千回と見てきているのだから今さら思う事など何も無い。
そういえば自分が殺される夢を見た気がする。
寝覚めは最悪だ。
やたらリアルな夢だった。
ナイフが刺さる感触が起きた今でも思い出せる。
念の為、腹部を確認するが傷一つない。
今日がいつも通りだといいな。
そんな事思いながら僕は顔を洗いに行く。
この後、僕がいつも通りの日々を送っていくのか、はたまた夢が現実となるのかはこの時点ではわからない。
しかし、私はここで書くのを止めようと思う。