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第6話 無限図書館に行きました。

 編集しました。

 空が明るくカーテンの隙間から太陽が指す。


 俺は身体を起こし背筋を伸ばした。


 最初に思い出すのは昨日の事、リアナの告白と俺がしたキスである、キスと言ってもおでこにだけど。


 今思い出しても恥ずかしい、自分の顔が熱くなるのがわかる。


 リアナの告白は素直に嬉しかった、何せ前世を含めても告白されたのは初めてだ、ただ相手は5歳、今の俺は前世も含めると精神年齢は20歳程である、これは俺がロリコンと言うことなのか?いや、今の俺は5歳だ、これはセーフではないだろうか、きっとセーフだ、セーフだよな?


 ただ俺とリアナが両思いになっても問題が出てくる、俺は人族でデイステン王国の辺境伯の次男、リアナは獣人族でジュマ獣王国の王女様、種族も国も立場も違う訳でこれって周りに反対されて終わりではないか、それにリアナが俺の事を好きだと言ってくれたが子供の言う事だ、大人になれば立場や考えも変わる事だろう。


 いろいろ考え出したらキリがない、所詮今は子供なのだから深く考えるのは止めておこう。


 俺は頭の中を切り替え着替えをするためにベッドを降りようとしたがグッと力強く服が引っ張られ動けなかった。


 布団を捲るとリアナが気持ち良さそうに眠っている、しかも俺の服を握り締めて。


「なんでリアナがここに!?」


 聖都に着く前はリアナと一緒に寝ることが多かったのだが昨日告白された事で意識してしまいどうすれば良いのかわからず1人であたふたしてしまう。


 何せ前世を含めても恋愛経験ゼロなのだ。


 寝ている間に布団に入り込むなんて前世の姉である樹理くらいしか経験がない。


「リ、リアナ」


 俺はとりあえず起こすことにした、このままにしておくわけにもいかない。


「リアナ、起きてください、朝ですよ」

「うーん、もうちょっとだけ」


 リアナは俺の腰に腕を回し抱き付く、しかも結構力が強い。


「余計に動けなくなった!」


 リアナはとても幸せそうに顔を綻ばせている。


 抱きつかれた状態で何が出来るわけでもなくただただ時間が流れていく。


 一時間程経った頃だろう俺はこの状況になれてきた、するとリアナの目が少し開きゆっくり起き上がる。


「んー」


 リアナが背筋を伸ばす。


「うーん、凄くよく眠れた気がします」

「それは良かったですね」

「はい、好きな人の匂いに包まれて安心したかのような寝心地でした、気持ちの良い目の覚めかたです」

「それは良かった、ただ嬉しいですがかなり恥ずかしいです」

「・・・あれ?テンリ様?」

「はい、リアナ、おはようございます」

「おはよう、ござい、ま、す?」


 数秒の間がありリアナは顔を真っ赤にさせながら口をパクパクさせる。


「な、な、な、なんでここにテンリ様が!?」

「えっと、俺が泊まっている部屋なので」

「え!あ!え!?」


 リアナは混乱中である。


「リ、リアナ、とりあえず落ち着きましょう」

「む、む、む、無理ですー」


 あたふたしたリアナを落ち着かせようとしていたらコンコンと扉をノックする音が聞こえリアナの身体がビクッと震える、そして俺が返事をする前に扉が開かれた。


「あら、面白い事になってるわね」

「リアナちゃんゆっくりできた?」

「あら、リアナの顔が真っ赤ね、今更何を恥ずかしがっているのかしら?」


 カレン、タリア、エリンが開いた扉から入ってくる。


「お母様!カレン様にタリア様まで!」

「この状況は母様達の仕業ですね」

「「「さぁ、何の事かしら?」」」


 3人はとても良い笑顔だ。


「そうそうリアナ、私の事もお義母様って呼んでいいのよ」

「カレンちゃんずるい、リアナちゃん、私もお義母様って言っていいんだよ」

「ふふっ、良かったわねリアナ」

「え!あの、えー!?」


 リアナの顔がまた赤くなる。


「せっかくだから私達と食事にしましょ」

「そうだね、エレノール家に嫁ぐ訳だからいろいろ教えてあげないと」

「それじゃテンリさんまた後程」


 3人の母親達はそう言って混乱中のリアナを連れていってしまった。


 俺は嵐のごとく去って行った4人を見送り大きな溜め息をついた。


「取り敢えず服を着替えよう」


 朝からどっと疲れが押し寄せてくる中服を着替え始めた。


 部屋を出るとすぐセバスと会い挨拶を交わす。


「セバスさんおはようございます」

「テンリ様、おはようございます、昨日は申し訳ありませんでした」


 セバスは深く頭を下げる。


 話を聞くと俺がローブを着た少女らしき人物に接触する直前で俺とリアナを見失ってしまったそうだ、すぐ周りを確認したが全く見つけ出せなかったとのこと、セバス以外にも隠れて護衛をしていた者達が数人いたがセバス同様彼等も見失いすぐホテルに戻りカレンに報告したそうだ、しかしカレンはあっさり俺とリアナの位置を把握し面白そうだからと護衛を下げて俺とリアナがどう行動するか見るためカレン、タリア、エリンの3人でこっそりと後をつけたそうだ。


 そして夢庭園でのリアナの積極的な行動に興奮しすぎた3人はバランスを崩し俺とリアナに見つかりさっさと退散したらしい。


 実に迷惑な話である。


 カロンとアガレスは朝食をすでに済ませておりリアナと母親達はテラスで食事中、俺は1人寂しく朝食を取ることになった為セバスが付き添ってくれた。


「テンリ様、祝福の義を受けるのが明日に決まりました」

「そうですか」

「はい、それで今日もお出掛けになりますか?」

「そうですね、昨日教えてもらった無限図書館に行ってみたいです、また護衛をお願い出来ますか?」

「勿論です、今度は見失わないように気を付けます」

「それではリアナも誘ってみます」


 朝食を食べ終え少しゆっくりした後いまだ3人の母親達に捕まっているリアナの元に向かう。


「あら、テンリどうしたの?」

「無限図書館に行きたくて外出の許可をもらいに、後はリアナを誘いに来ました」

「そう、いいわ、行ってきなさい、それにしても昨日の今日でまたデートなんて、仲の良いことね」


 クスクス笑いながらカレンは楽しそうに俺を見る。


 タリアとエリンの顔はニヤついていた。


「はい、と言うわけでリアナ、デートに行きましょう」


 ここであたふたしてもカレン、タリア、エリンのおもちゃにされそうなのでいっそ開き直る。


 俺の反応がいまいちだったのかカレンは小さな溜め息をつく。


「え、あの、はい!行きます!」


 リアナは返事と共に嬉しそうに勢いよく立ち上がりハッとして顔を赤くする。


「リアナは本当に良い反応をするわね」

「うんうん、恋する乙女だね、可愛い」

「リアナは本当にテンリさんが大好きなのね」


 リアナは3人の母親達の言葉に赤くなった顔をさらに赤くした。


「テンリにもこれくらいの可愛い反応を期待していたのに」

「期待に添えず申し訳ありません」

「ほんとよ、それに昨日勇気を出して告白したリアナに対してテンリはおでこにキスするだけなんて、あんな場面なら普通唇を奪うものでしょ」

「「え!」」


 カレンの言葉に俺は自分の顔が赤くなるのがわかる、リアナはもうこれ以上ないほどに全身真っ赤だ。


 しかしなぜカレンがそんなことを知っているのだろうか?


 俺はリアナを見る、もしかしていろいろ聞かれて話してしまったのだろうか?そう思っていたがリアナは俺の視線に気付き首をフルフルと横に降る。


「み、見ていたんですか!?」

「さぁ、どうだったかしらね」


 カレンは恥ずかしそうに焦る俺の顔を見てとても良い笑顔だ。


 俺はあの時周りに人がいないか確認した、今思い出しても人はいなかった、にもかかわらずなぜカレンが知っているんだ!?それだけじゃない、タリアとエリンの笑顔、絶対3人共知ってるぞ、見られていたのか!?


 いったいどんな手段を使って俺とリアナを見ていたのか解らないが3人共意地が悪い。


「あら、せっかくのデートなのに行かなくていいのかしら?」

「「い、行ってきます」」


 羞恥に負け俺とリアナは逃げるようにホテルを出た。


 ホテルを出てセバスに案内されながら無限図書館に向かう。


「まさか母様達があんなに意地悪だったとは思いませんでした」

「とても恥ずかしかったです」

「忘れましょう!」

「はい、そうしましょう!」


 母親達との会話を無かった事にする。


「早く無限図書館を見て回りたいです」

「私もです、この世の全ての書物があると言われている場所、いったいどれ程の本が置いてあるのでしょう、とても楽しみです」


 俺とリアナがワクワクとしながら歩くのをセバスはとても楽しそうに見ていた。


「さてテンリ様、リアナ様、ここが無限図書館になります」


 セバスに案内されて無限図書館に到着した。


 俺とリアナは無限図書館を見上げながら余りの大きさに唖然とする。 


「ここが無限図書館なんですね」

「想像していたよりも遥かに大きいです」

「それでは御二人共中に入りましょう」


 セバスの言葉に頷き無限図書館の中に入って行く。


 建物の中に入ると中央に大きな受付カウンターがある。


「受付をしてきますのでここでお待ち下さい」


 そう言ってセバスは受け付けに歩いていく。


「これは可愛らしいお客様ですね」


 俺とリアナが待っているとそこに女性が声をかけてきた。


「あの、あなたは?」

「これは失礼を、私はこの無限図書館の館長をしているベロニカ=コーネルと申します」


 ベロニカと名乗った女性は金髪の長い髪にクイッと上げた眼鏡の奥にある金色の瞳、整った綺麗な顔立ちをしておりスラッとした身体でスーツを着こなす超絶美人である。


 耳が少し長く尖っているのでエルフ族だろうか?


「テンリ=エレノールです」

「リアナ=ジュマです」

「ほぅ、テンリ=エレノールにリアナ=ジュマ、なるほど、カレン様のご子息に獣王家の王女様ですか」


 ベロニカは腕を組み合わせ少し考える仕草をする。


「お久し振りですベロニカ様」

「ん?あなたは?」

「セバスです」

「セバス?・・・セバス!」


 ベロニカはセバスの顔を見ながら驚いた顔をする。


「なぜあなたがここに!?」

「テンリ様とリアナ様の付き添いと護衛をしていますので」

「そうですか、なるほど、エレノール家の執事をしていると言う話でしたね、納得です、せっかくですので宜しければ私が無限図書館を案内をいたしましょう」

「よろしいんですか?」

「えぇ」


 セバスは俺とリアナを見る。


「「よろしくお願いします!」」


 せっかく無限図書館の館長自ら案内役を買って出てくれたのだ、断る理由がない。


「はい、おまかせください」


 受付を通る時に職員のお姉さんに呼び止められる。


「お、お待ち下さい、館長、どちらに?」

「この方達を案内しようと思います、何か問題が?」

「ほ、本日は教皇様に呼ばれて大聖堂に」

「なら時間をずらして貰えばいいのです」

「ですが」

「今からこの方達を案内します、よろしいですね」

「は、はぃ」


 受付のお姉さんは泣きそうな顔だ、それだけではない、回りの職員達の顔色もあまりよろしくない、ベロニカは怖い人なのだろうか?


「ベロニカ様、よろしいのですか?」


 セバスが困った顔で聞く。


「構いません、教皇様は寛大な方ですから、それにこちらの方が優先されるべき事ですからね」


 そしてベロニカに案内され4人で無限図書館を回る、この時にベロニカは無限図書館の説明もしてくれた。


 まず受付でリングを借りる、この時リングをしていないない者は先に進めない、無理に進もうとすれば強制的に外にテレポートさせられる、なので無限図書館を見て回るなら受付で絶対にこのリングを借りて身に付けなければいけないそうだ。


 リングは持ち出しが出来ない、リングを持ったまま建物の外に出ると強制的に受付までテレポートさせられる、出るときは受付でこのリングを返却しなければいけない。


 建物は1階から10階まであり一般に解放されており全ての本を読むことが出来る、本には状態維持の魔法が掛けられている事で劣化することがなくクリーンの魔法が重ね掛けされているので汚れてもすぐ綺麗になる、建物の外に本を持ち出そうとすると外に出た瞬間に元々置いてあった位置に戻るようテレポートの魔法まで掛けてある。


 マジックポーチやマジックバック等に入れて持ち出そうとしてもこの空間の外に出る行為の対象になる為テレポートで元の位置に戻るようになっているそうだ。


 この図書館内の本1冊づつに魔法が掛けてある訳だから凄いことだ。


 貸し出しは一切していない、一般に解放されているとはいえ貴重な書物が多いので防犯の為持ち出しを禁止しているそうだ。


 飲食物の持ち込みは大丈夫、しかしどこでも飲み食いして良いわけではなく専用のエリアがあるのでそこで済ませる必要がある。


 そしてこの無限図書館には地下もあり地下1階から地下5階まである、一般の人達では立ち入ることが出来ず地下に向かう為には許可証が必要だそうだ。


 その他にはどこにどのようなジャンルが置いてあるか説明をしてくれた。


「簡単にですが以上が無限図書館の説明と案内になります」

「いろいろ教えていただき助かりました、ありがとうございます」

「私達の為にお時間を取っていただきありがとうございました」

「いえ、私が好きでさせていただいた事ですので、わからない事などありましたらお気軽に職員に声を掛けてください」


 説明を終えベロニカは丁寧に頭を下げて歩いて行った。


「「ありがとうございました」」


 俺とリアナも頭を下げてベロニカと別れた。


「ベロニカ様はとても親切な方でしたね」

「そうだね、説明や案内も丁寧にしてくれたし」

「とても広いので助かりました」

「広すぎてどこに何があるかわからないですからね」


 本当に広い、何も考えずに歩いていると迷子になりそうだ。


「少し遅くなってしまいましたがお昼ご飯はどうなさいますか?」


 セバスの言葉に思ったより時間が経っていることに気づく。


「もうそんな時間でしたか、それでは一旦外に出てご飯を食べてから改めてここで読書をしましょう」

「はい」


 俺の提案にリアナは頷き一旦無限図書館の外に出て店に入る、少し遅い昼食を取った後で再び無限図書館に行き日がくれるまで本を読んだ。


 明日はいよいよ祝福の儀を受けてステータスを授かる、とても楽しみだ、だけど祝福の儀を受けるって事はもうすぐリアナとの別れを意味しているわけで、それはとても残念だ。


「どうかしましたか?」

「なんでもないよ」


 リアナの不思議そうな顔を見て俺は少し笑う。


「な、なんで笑うんですか!?」

「なんとなく」


 祝福の義が終わった後でリアナとの事を皆に話してみよう、種族や立場も違うけど俺はリアナと離れたくないのだと。

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