第5話 聖都につきました。
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聖都に向かう途中で魔物や盗賊といった者達と出くわすことがあった、その為何度か戦闘になったがそれをカレンやタリア、そしてアガレスが楽しそうに蹂躙していき無事?聖都に到着することが出来た。
魔物や盗賊を発見した時は正直不安だった、遠く離れた位置にいるとはいえ自分の命を脅かす相手だ。
しかしその不安はすぐになくなった、なぜなら先に述べた3人の蹂躙劇があまりにも衝撃的過ぎたからだ、魔物や盗賊を発見するとカロンや護衛達の話を無視して3人は突っ込んでいくのだ、そして戦闘が終わればそこは肉片と血の海である、むしろ出会ってしまった魔物や盗賊に同情すら覚えてしまう程だ。
戦闘後にカレンとタリアはカロンから怒られていた、アガレスに至ってはカロンに加え獣王国側の護衛達にも怒られていた、しかも何度も同じことを繰り返すからどんどん怒られる時間が長くなっていく。
カロンや獣王国側の護衛達からすればたまったものではない、護衛対象が護衛を置いて我先にと戦闘に突っ込んで行くのだ、怒られて当然の事である。
因みにデイステン王国側の護衛達もいるそしてその中にセバスとミルも組み込まれているが彼等は何も言わなかった、ただカロンが怒っている時に力強く頷いていた。
そんな事がありつつも聖都に到着したのだ。
さて、聖都に到着したが祝福の義を直ぐに受けれるわけではない、何せ俺やリアナが祝福の義を受ける場所は聖都にある最も神聖な場所である大聖堂だ、その為手続きをして許可が降りるまで数日かかるとのこと。
今は王族や貴族専用のホテルで旅の疲れを癒していた。
大人達は昔話に華を咲かせているため俺はリアナと2人で別室におり読書をしている。
ふと道中にいろいろな話を聞いたことを思い出す。
まずはカロン、ロレンス、アガレスの3人だが若い頃セバスの弟子だったそうだ、アガレスが最初に弟子になりロレンスがその次、最後がカロンの順でセバスの弟子になったのだとか、3人が兄弟弟子なのに驚いたがその師匠がセバスなのにも驚いたものだ、昔から仲がよく良く共に苦難を乗り越えた仲なのだと教えてもらった、セバスから認められた後すぐカロンはエレノール領の領主にロレンスはデイステン王国の国王にアガレスはジュマ獣王国の獣王になり会うことがなくなってしまったらしい。
しかし今回のデイステン王国とジュマ獣王国の会談を気に久し振りにカロンに会おうと連絡を取り会談が始まる少し前からミルを使ってデイステン王国とジュマ獣王国を秘密裏に行き来しお互いの条件を擦り合わせていたそうだ、さらに会談を聖都でせずデイステン王国でおこなったのは俺が聖都で祝福の義を受ける事になったとロレンスの娘である聖女から連絡を受けたため急遽変更したそうだ、そして昔を懐かしみ共に旅をしようと思ったとのこと、振り回される周りは堪ったものではない。
ロレンスも今回の旅に同行しようとしていたが流石に無理だった、本当に悔しそうに見送るロレンスを今も鮮明に思い出せる。
次にセバスの話だ、セバスにも師匠がいるのだがそれがなんとカレンの母親、つまり俺の祖母であることがわかった、カレンから祖父母の話しなど聞いたことがないからてっきり亡くなっているものかと思っていたが両方元気なのだそうだ。
元々セバスは孤児でたまたまタリアの祖父母に助けられ世話になっていたのだそうだ、タリアの祖父母とカレンの母は知り合いだった為セバスの事を紹介しそれが縁でカレンの母に弟子入りすることになったと聞いた。
ここで皆の年齢が気になり聞いてみたのだが誰1人答えてくれなかった、特にカレンの母の年齢をセバスに尋ねたら顔を青くさせ身体がプルプル震えながら「世の中には知らない方がいいこともあります」と涙ながらに言われこれ以上聞いてはダメなことと理解した。
ミルの話しになりミルもセバスの弟子だった事がわかった、カロンにロレンス、アガレスの3人と兄弟弟子ではあったが弟子入りした時期が違い当時はセバスの弟子という以外殆んど接点がなかったそうだ。
そしてタリアの話しになりタリアもまたセバスの生徒としていろいろ教わっていたそうだ、勉強や礼儀作法だけでなく戦闘等のあらゆる事を教わったとのこと。
セバスには他にも多くの弟子がおりその多くがそこそこ名の知れた人物になっているそうだ。
なんだかんだ何処かしろで皆が関わりがあり昔から知っているとは驚きである。
最後にカレンだがカレンは全てを母から教わったと言っていた、勉強や礼儀作法は勿論戦闘や魔法等ありとあらゆる事を教わり、そして気づけば十二聖天の序列二位になるまで強くなっていた。
思い返してみてもなかなか濃い内容だ、その他にもいろいろ教えてもらった。
いろいろな話を俺の隣でリアナは聞いていた、物語や演劇ではなく本人達から語られる言葉にリアナが大興奮をしていたな。
「テンリ様、どうかされましたか?」
俺がこの旅で聞いた話を思い出しているとリアナが不思議そうな顔で俺を見ていた。
「聖都に来るまでに聞いた事を思い出してたんだ」
「そうでしたか」
皆のいろいろな話を聞く事が出来て楽しかったが何よりこの聖都までの旅路でリアナと仲良くなれたのが一番嬉しかった。
「母様達父様達の物語や演劇をそれはもう熱く語るリアナがとても印象に残っています」
「わ、わ、忘れてください!」
俺の言葉にリアナの顔が真っ赤になる。
今思い返しても聖都に辿り着くまで常にリアナと一緒にいた、馬車の中も食事中も寝るときですら同じ布団で一緒に寝ていたくらいだ。
「それにしても、聖都まで来たのにいつまでもホテルにいるのは勿体無い気がします、せっかく聖都まで来たので街を見て回りたいですね」
俺は窓の外から聖都の街並みを眺める。
「それならお父様達に外出の許可を貰えるか聞いてみませんか」
「そうですね」
俺とリアナは家族達がいる部屋に向かう、部屋に入るとセバスがこちらに気付き近づいてきた。
「テンリ様にリアナ様、どうかなさいましたか?」
「聖都の街を見学したいのでその許可を貰えるか聞きに来ました」
「そうでしたか、この聖都には歴史的な物が多く観光スポットもあります、各大陸からいろいろな物が入って来るので変わった物もありとても楽しめると思いますよ」
「とても楽しそうですね」
なかなかに興味が惹かれるな、是非とも外出の許可を貰わなければ。
「ロレンス兄さんはいい加減立場というものをわきまえてくれ!」
カロンの荒れた声が聞こえ声の方に視線を向ける。
「ミル!お前もなんで連れてきたんだ!アガレス兄さんは腹を抱えて笑うんじゃない!」
カロンはとてもお怒りでロレンスとミルそれにアガレスの3人は正座していた。
「仕事は終わっておるのだから別に遊びに来るぐらい構わんだろう、今はプライベートの時間だし」
「自分は陛下の指示に従っただけっす、全部陛下が悪いんす!」
「ミル!貴様余を裏切るのか!」
「事実をありのままに伝えているだけっす、カロンさんに絶対怒られるって陛下に言ったじゃないすか」
ロレンスとミルは正座しながら言い合いを始める。
「カッハッハッ、カロン今更だ許してやれ」
「アガレス兄さん、なぜ自分も正座させられていると思っているんですか」
「さぁ?」
「貴方はもっと自粛して行動するべきです、なんで自分から魔物や盗賊に突っ込んで行くんですか、護衛の方達が困惑していましたよ!」
「暇だったからな、第一あの程度の相手に負けん!」
「一国の王としての立場を理解してください!」
カロンはお説教モードであった、ってか何でロレンスがここにいるんだ?話の流れでミルが連れてきたのはわかったが気軽に出歩ける立場でもないでしょう。
テラス席ではカレンにタリア、エリンの3人が笑いながらお茶を飲んでいる。
なんだろうこの状況。
「カロンよそろそろ終わりにせぬか?プライベートの時間が説教で終わるのは嫌だ!」
「カロンの説教も懐かしいもんだ、あの頃を思い出す」
「はぁ、まったく、あなた達は一国の王なのだからもっと落ち着いてください」
「自分は王様じゃないっす!」
俺はセバスを見る。
「今の父様から外出許可をもらえますか?」
「カレン様、タリア様、エリン様から許可を貰えば大丈夫でしょう」
俺、リアナ、セバスはテラス席に行きカレン達に外出の話をする。
「デートね、行ってらっしゃい」
「リアナちゃんをちゃんとエスコートしなきゃダメだよ」
とてもあっさり許可が降りた。
「リアナ応援してますから頑張りなさい、その為の方法を伝授します、ちゃんと落とすのよ」
エリンに呼ばれリアナは耳元でいろいろ何かを言われている、若干頬を赤く染めていたりもした。
「護衛をどの人に頼めば良いですか?」
「ならセバスに任せるわ」
「かしこまりました」
俺の質問にカレンはセバスを指名しセバスはそれを快く了承してくれた。
「後テンリにお金と、ポーチかバックを渡して」
「はい、それではテンリ様にこちらをお渡し致します」
セバスは手早く用意をして俺にウエストポーチと袋を渡す。
「これは?」
「こちらのポーチはマジックポーチと言ってポーチの中が亜空間いになっており見た目以上の物量が入るようになっております、テンリ様専用に登録しましたのでテンリ様しか使えないようになっております、袋の方にはお金を入れております」
「いくらか確認して良いですか?」
「どうぞ」
いくら入っているのか確認する為に一度中のお金をテーブルに出す。
「全部で、100万リル?」
「はい」
俺はその金額を確認して少し思考が停止した。
この世界のお金は全世界共通でリルと言われている、因みに1リルは日本円で1円である。
5歳時に100万も渡して一体何に使えというのだろうか?
「セバスさん、この金額はちょっと」
「ほほっ、少なかったですか?」
「違います!多すぎじゃないですか?」
「そうですか?あって困るものでもないので持っていてください」
「わ、わかりました」
本当に良いのだろうか?
「テンリ」
「はい」
カレンに呼ばれ返事をする。
「手を出して」
俺はカレンに言われるがまま手を出すとその上にドンと袋を渡され落としそうになり急いで抱える。
「こ、これは?」
「私からテンリにお小遣い、だいたい1000万リルくらいあるわ」
「1000万!」
俺は卒倒してしまいそうだった。
「すでに100万リル渡されていますけど」
「それはエレノール家としてのお小遣い分、この1000万リルは私からのお小遣い」
「流石にこの金額は受け取れません」
「気にする必要はないわ、持っていなさい」
良いのか?転生して人生初のお小遣いが1100万リルなんて、いや良くない、金銭感覚がおかしくなるわ!
しかしお金を返そうにもカレンは受けとるつもりがない、仕方ないので渡されたお金をポーチにしまった。
「それでは参りましょうか」
「「はい」」
セバスの言葉で俺とリアナはホテルを出た。
さて、ホテルを出たのは良いがどこに何があるのかわからない。
「セバスさんお勧めの場所ってありますか?」
「そうですな、2人共本がお好きなようですから無限図書館に行ってみてはどうですかな」
「無限図書館ですか?」
「はい、この世界のあらゆる書物が保管されている場所です」
「成る程、楽しそうですね」
「すぐ近くで蚤の市もやっています、そこを見て回るのも良いでしょう、何かしら掘り出し物が在るかもしれません」
「宝探しみたいで楽しそうですね」
「他には至福の時間という有名なカフェがあります、そこのデザートがとても美味しいそうで教皇様や聖女様御用達だそうです」
「是非行ってみたいです!これは悩みますね、リアナどうしますか?」
「私はテンリ様と全部回りたいです!」
リアナの言葉に俺とセバスは顔を見合わせて笑った。
「な、なんで笑うんですか!」
「俺もリアナと全部見て回りたいです」
「ではまず蚤の市を見て回られるのがよろしいかと、すぐ近くでやっていますから」
「「はい」」
始めに蚤の市を見ることにし会場に向かう。
蚤の市の会場につくとそこは多くの人で賑わっていた。
「凄い人だね」
「はい、まさかこんなに人が多いとは」
「リアナ」
「はい?」
俺はリアナに手を差し出す。
「はぐれるといけないので手を繋ぎましょう」
「え、あの、その」
リアナの顔が少し赤くなる。
「えっと、嫌でしたか?」
戸惑っているので俺は手を下げようとしたがリアナはその手をすぐに掴む。
「よ、よ、よ、よろしく、お願いしましゅ」
リアナは顔を真っ赤にしながらも嬉しそうに俺の手を握ぎった、尻尾がパタパタと世話しなく上下に動いている。
「では行きましょうか」
「はい」
俺とリアナは商品を見て回る、実用的な物からなんだかよくわからないような物までいろいろな物があった。
「いろんな物がありますね」
「はい、見ていてとても面白いです!」
「けっこう歩きましたから一度カフェにでも入って休憩しませんか」
「はい」
「さっきセバスさんが言っていたお店ってここから近いですかね?」
「至福の時間ですね、どうなのでしょう?」
俺とリアナはセバスに視線を向ける。
「近くにございますよ」
「それじゃそこに向かいま、ん?」
強い視線を感じ周りを見回す、するとある一画が不自然な人の流れをしていることに気づいた。
そこには何か壁でもあるかのように近づく人が避けていくのだ。
しかしそこにいるのは黒く禍々しいローブを着て深くフードを被っているかなり小柄な人物だ、その前には剣が1本だけある、あれは商品なのだろうか?
向こうはこちらが気付いた事がわかっているようだ、軽く手招きをしている。
これはちょっと気になるな。
「どうかしましたか?」
リアナは不思議そうに首を傾げる。
「あそこを少し見ても良いですか?」
俺はフードを深く被った人物がいる方を指で指す。
「あそこにはなにも、え!あれは、人、ですか?」
「いいかな?」
「は、はい」
俺はリアナの同意を得てフードの人物の下に歩いていく。
「よく気がついたね」
声を聞く限り少女のようだ。
「流石にあそこまで強い視線を向けられていれば気づきます」
「そうか、これを手に取ってじっくり見るといい」
1つだけある剣を俺に渡す。
俺は剣を受け取り鞘から抜こうとしたが全く抜けない。
「あれ?全然抜けないんですけど」
「ん?そんなはずは、ひょっとして祝福の義を受けてないのか?」
「えっと、はい、まだ」
「そ、そうか、なら祝福の義を受けたらもう一度来るがよい、よいか絶対来るんだぞ!」
「え、あ、はい、絶対来ます」
「来なかったら呪うからな!」
「は、はい」
かなり強引にまた来ることを約束させられた。
テンリとリアナが離れていくとローブを纏った人物の後ろに更に2人ローブを纏った人物が現れる。
「まったく、聞いてた話と違うではないか」
「祝福の義を受けに聖都に来ると言っただけで受けただなんて言ってませんよ」
「それよりリアナさんはテンリさんにベッタリでしたね」
「貴様はリアナが羨ましいのか?」
「リアナさんが羨ましいですって!そんなこと、ありますわ!」
「そ、そうか」
「素直で良いことです」
「それより祝福の義はいつ受ける事になるんだ?」
「明後日に受ける予定です」
「ならまた明後日にでも来る事にするか」
「そうですね」
「そういたしましょう」
話しを終えた3人はその場がらフッと姿を消した。
一方テンリとリアナの二人だが。
「あのような約束をされて良かったのですか?」
「大丈夫ですよ、たぶん」
「とても不安です」
「ならリアナは行くの止めとく?」
「私も一緒に行っていいのですか?」
「そのつもりだったけど、不安なら止めとく?」
「行きます!」
初めてリアナに会った時はかなり消極的な印象だったけど今はとても積極的だ、自分からグイグイ来る。
「ところでセバスさんがいないみたいですけど、はぐれましたかね?」
「先程のローブの方の場所までは要らしたんですけど、気付いたら居なくなってしまいました」
さてどうしようか、目的のカフェは今目の前にある、お金も持っている。
「とりあえず中に入りましょうか、無闇に歩き回るよりここで待っていた方が合流できそうですし」
「そうですね、わかりました」
お店の中に入り席に案内される。
「聖女様お気に入りスペシャルパフェ」
「教皇様が絶品、伝説のフルーツタルト」
「教皇様もホッと安らぐブレンドコーヒー」
「聖女様が周一で食べたくなるふんわりパンケーキ」
「ほぼ全てのメニューに聖女様と教皇様の名前が入れてありますね」
「これっていろいろな意味で大丈夫なのでしょうか?」
メニューを見ながら俺とリアナは苦笑いをした。
「たくさん歩いたので少しお腹も空きました」
「私もです」
「ならドリンクとこの教皇様がべた褒めお手軽スペシャルサンドウィッチも頼みましょう、デザートはその後で」
「はい」
定員にドリンクとサンドイッチを頼む。
「早くセバスさんに見つけてほしいですね」
「私はずっとこのままでも」
「えっ?」
「じょ、冗談です、あははっ、あ、料理が運ばれてきましたよ」
リアナに言われ運ばれて来た料理を見る。
「え!?」
運ばれて来たのはお皿に積み上げられたサンドイッチの山。
「お待たせしました、教皇様がべた褒めお手軽スペシャルサンドイッチとドリンクになります」
テーブルの上にドンと置かれたそれを見て俺は固まる。
「これ、お手軽ですか?」
「美味しいそうですね」
俺の疑問はリアナの笑顔で考えるのを止めた。
結果として大量に積まれたサンドイッチは食べきった、そのほとんどをリアナが食べたのだがその後ちゃんとデザートも食べていたのに驚愕した、一体その身体のどこに入っていったのやら。
カフェに入ってからそこそこの時間がたち空が暗くなるがセバスが来る様子はない。
「セバスさんが来る気配ないので自分達でホテルに戻りましょうか、道は覚えていますし」
「そうですね」
店を出た俺とリアナはホテルに向かって歩き出す。
手を繋ぎ歩いているとリアナが立ち止まり俺も歩くのをやめる。
「どうかしましたか?」
「少しでいいのであそこに寄っても良いですか?」
「あれは?」
「夢庭園といいます、あの場所で結婚式を挙げると幸せになれると言い伝えがある場所なんですよ」
「そうなうなんですか、それじゃちょっと見ていきましょう」
「はい」
俺とリアナは夢庭園を見て回る。
「思ったより人は少ないですね」
「はい」
「ただ所々にいるカップル達のスキンシップがちょっと目のやり場に困ります」
「そ、そうですね」
リアナは顔を真っ赤にしながらキョロキョロ周りを見ては俯きまたキョロキョロ周りを見ては俯くを繰り返している。
ここはリアナの教育上よろしくない。
「大丈夫?」
「は、は、はい、だ、大丈夫でしゅ」
まったく大丈夫ではないな、刺激が強すぎたのだろう顔が真っ赤に茹で上がっている。
「そろそろホテルに向かいましょう」
「あ、あの、もう少しだけここにいたいのですが」
俺はどうしたものかと悩むがリアナの手に力が入る。
「ならもう少しだけ」
「は、はい、あそこに座る場所があるので少し座りましょう!」
「わかった」
俺はリアナと共に2人掛けの椅子に座る。
「今日はどうでしたか?」
「とても楽しかったです」
「蚤の市はいろいろな物がありましたね」
「カフェも美味しくてまた行きたいです」
「そうですね」
「あの」
「どうかしました?」
「いえ、その、明日も一緒にお出掛け出来ますか?」
「どうでしょうね」
「い、嫌ですか?」
「嫌じゃないですよ、リアナと一緒にいるのは楽しいですから、ただ明日もし祝福の義を受けるなら出掛ける時間がとれなさそうだなと思って」
「そ、そうですか、そうですね」
「さてそろそろ帰りましょうか」
「あ、ま、待ってくだ、きゃ!」
立ち上がろうとした俺をリアナが引っ張り2人で倒れてしまった。
しかも俺が押し倒される形である。
めちゃくちゃ顔が近い。
「わ、わ、私は、テンリ様を一目見たときからずっと好きでした!」
「え!リアナ?いきなり何を!?」
「テンリ様」
リアナの顔が近づいて来るがそこで少し離れた位置で話し声がしていることに気付く。
「ちょっと二人共押さないで」
「だってよく見えないんだもん、カレンちゃんもうちょっとそっちにずれて」
「リアナそこです、そのままキスをしてしまいなさい」
「ちょっと2人供いい加減、あ」
ガサ、ドン、と音がする方に顔を向け俺とリアナは倒れた人物達と目が合う。
「ちょっとばれたじゃない」
「わ、私のせいじゃないよ」
「もう少しだったのに」
母様達だ、俺もリアナも顔が真っ赤になりすぐに立ち上がった。
「いったい何してるんです?」
「親として子供の成長を見なければいけないとタリアとエリンが言いだして」
「ちょ、カレンちゃん、酷くない」
「あら、カレンさんも面白そうだからって」
まったくこの母親達は。
俺は母様達からリアナに顔を向ける、すると顔を真っ赤にしプルプル震えているリアナの姿が目に入った。
「リアナ、大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫じゃないですぅ」
リアナは顔を真っ赤にして泣きながら俺の胸で顔を隠す。
「さりげなく中々大胆な事をするわね」
そう言いながらカレンがニヤリと笑う。
「母様」
「あ、私用事を思い出したわ」
「わ、私も」
「では私も」
母様達は気まずくなってさっさと逃げてしまった。
「まさかお母様達が見ていたなんて、穴があったら入りたいです、恥ずかし過ぎて死んでしまいそうです」
これは精神的に相当ダメージが深い。
俺はキョロキョロ周りを見て誰もいないことを確認した。
「リアナこっち向いてください」
「恥ずかしくて無理です!」
俺はその言葉に苦笑いだ、ただいつまでもこのままでいるわけにはいかない。
俺はリアナの顔を手で俺の顔に向けおでこにキスをした。
リアナは何をされたのか一瞬わからず固まり、それを理解した瞬間顔がまた真っ赤になった。
「か、帰りましょう」
「は、はい」
俺はリアナと手を繋ぎながらも顔を見られないように少し前を歩いた、信じられないほど顔が熱く心臓もドキドキしている。
リアナは顔を赤くしているが嬉しそうに手を引かれていた。
お互い恥ずかしくそのまま無言で俺とリアナはホテルに戻ったのだった。