表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/89

第4話 王様達が来ました。

 5歳になりいよいよステータスを授かる年になった。


 ステータスを授かる為には教会に行き祝福の義を受けるのだがそれまであと3週間程、実に楽しみだ。


 今後の事に夢を膨らませているとコンコンとノックがして返事をする前に扉が開いた。


「テンリ、すまないが急遽大事な客人達が来ることになった」


 慌ただしく入って来たのはカロンである。


 扉が開いたことで部屋の外が騒がしい事に気付く。


「今すぐ正装してテンリも一緒に出迎えてくれ」

「えっと、はい、わかりました」


 普段慌てる事がないカロンにしては珍しくそわそわしている。


「父様、どのようなお客様なのですか?」

「陛下だ」

「・・・えっ!?」

「それにジュマ獣王国の獣王陛下と第三王妃、それと第三王女だ」

「はぁー!」


 カロンの口から出たとんでもない人物達に俺は驚く。


「一体なんで!?」

「デイステン王国とジュマ獣王国の両国で会談があったのだ、普段なら聖都で行われる会談なのだがなぜか今回デイステン王国側で行われる事になった、その会談が予定より早く終わりこのエレノール領に、と言うよりこの屋敷に来ることになった」

「意味がわからないんですけど」

「テンリの気持ちはよく解る、なんで会談が早く終わったからと言ってこの屋敷に来るのだか、はぁ、2人共王位をついで大人しくなったと思っていたんだがな」


 溜め息をついた後のカロンの最後の言葉は小さく聞こえなかった。


「取り敢えず直ぐに着替えて玄関ホールに来てくれ」


 カロンはそう言い残し素早く部屋を出ていった。


 一国のトップが会談が終わったからとなぜピンポイントでうちに来るのかは甚だ疑問であるがカロンに言われた通り取り敢えず素早く服を着替え部屋を出る。


 玄関ホールにつくとカロンを初めタリア母様やメイド達が忙しそうに動いている、そんな中で初めて見る2人の人物に目が止まる、1人は執事服を来た老人でメイド達に指示を出しておりもう1人はローブを被りカロンとタリアと話しながら動き回っている。


 俺が歩いていくと執事服を来た老人が気付き笑顔で近付いて来る。


「おぉ、これはテンリ様、大きくなられましたな」


 執事服を来た老人はどうやら俺の事を知っているようだ、しかし俺は会った記憶がない、この屋敷に勤めている人物なら把握しているつもりなのだがまったく心当たりがなかった。


「こんにちは、あの、失礼とは思いますがどこかでお会いした事がおありでしたでしょうか?」

「ほほっ、ありますとも、とは言えテンリ様が産まれて間もない頃にですがね、今まで王都の屋敷でマイン様のお世話をしながらメイド並びに執事の教育をしてましたから、こちらにはここ数年帰って降りませんでした、なのでテンリ様が覚えていなくても当然です」


 成る程、俺が産まれて間もない頃に会っただけならこの老執事の事を俺が知らないのは当たり前か、その頃はまだ前世の記憶も蘇ってない頃だ、ド忘れしている訳じゃなくて良かった。


「それでは自己紹介をしておきましょう、私はセバスと言います、このエレノール家で執事長をしております」


 なんとセバスと名乗った人物は我が家の執事長だった!


「王都の屋敷で指導をした者達が育ったので今日からまたこちらで働かせていただきます」

「そうなのですか、セバスさんこれからよろしくお願いします」

「こちらこそよろしくお願いいたします」


 俺もセバスもお互いに頭をさげた。


「へー、この子がカロンさんとカレンさんのお子さんなんすね」


 セバスとの挨拶を終えると次にフードを被っていた人物が話しかけてきた。


「えっと、あなたは?」

「自分っすか?」


 フードを取ると緑色の瞳に緑色の髪をした美青年が姿を表した。


「始めまして、自分ミル=ミハエレスって言います、陛下の護衛をやってるっす」


 ミルと名乗った青年はまさかの陛下の護衛だった。


 ミルは俺に顔を近付け興味深く見ている。


「こらミル、あまりジロジロ見るものじゃありませんよ」

「おっと、セバス先生、失礼したっす」

「テンリ様、ミルはまだ若いですが陛下の専属護衛でもあり十二聖天の序列十位でもあります」

「そうなんですか!」


 まさか天使から称号を与えられアロン大陸を代表する十二聖天の称号を持っている人物にこの場で出会えるとは思わなかった、感動である。


「まさか十二聖天の方にこんな形で会うとは思いませんでした、テンリ=エレノールです、ミル様よろしくお願いします」

「様は要らないっす、それに十二聖天って言っても自分したっぱっすけどね、よろしくっす」


 俺はミルと握手をする。


 ミルはふと回りを見回す。


「それにしてもテンリ君、君の回りって凄いっすね」

「何がですか?」

「今ここにいるセバス先生も元十二聖天ですし、カロンさんにタリアさんそれにカレンさんは現役の十二聖天なんすから」

「え!?」

「あれ?知らなかったんすか?」


 全然知らなかった!


「あれ、これ教えたらダメな感じでした?」

「問題ないでしょう、いずれ解ることですから」

「なら良かったっす」


 セバスの言葉にミルは安堵していた。


「父様と母様達が十二聖天?セバスさんも元十二聖天?え?え?えー!?」

「いやー、驚いてるっすね」

「そのようですね」

「せ、説明を!」


 衝撃を受けている俺にセバスとミルは苦笑いしている。


「説明って程ではないっすけど、例えばセバス先生は元十二聖天で序列が二位だったす、身体を壊してしまって十二聖天から外れてしまったっすけどそれでもかなり強いっす」

「序列二位だったんですか!」

「元ですけどね」

「次にタリアさんっすけど十二聖天の序列九位っす、カロンさんは十二聖天の序列八位になるっす」


 俺は驚いてカロンとタリアの方を見る。


「最後にカレンさんなんすけど」

「私がなに?」


 セバスとミルのすぐ後ろから声がかかり2人はビクッとしてゆっくり後ろを放り向く。


「お久し振りですカレン様」

「こ、こんにちはっす」

「セバスにミル、久しぶりね、それで、一体なにこの状況?」


 カレンは回りに視線を向け問う。


「陛下がいらっしゃいます」

「ふーん」

「獣王陛下、第三王妃、第三王女も来るっす」

「何しに?」

「両国の会談が早く終わったそうで」

「それで?」

「表面上は街の視察ってなってるっす」

「あぁ、要するに遊びに来るのね」


 セバスとミルは苦笑いをするが否定はしなかった。


「暇な連中ね、テンリお茶にしましょう」

「え!でも父様から一緒に出迎えを頼まれて」

「たかだか国の王を迎えるのにそのような必要ってあると思う?」


 とてもあると思います!俺は心のなかでそう言う。


「ないわ」


 しかしカレンはないと言いきった。


 良いのだろうか?いや、良くない、不敬罪で捕まるんじゃないか、下手したら死刑とか。


「カレン!」

「カレンちゃん!」


 カロンとタリアが急いで近付いてくる。


「カレン、すまないが」

「嫌よ」

「まだ言い終わってないのだが」

「どうせ今から来る王族達の出迎えをしろって言うのでしょ」

「そうだが」

「めんどくさい、それにタリアがいるから大丈夫でしょ」

「カレンちゃんちょっと」


 タリアはカレンを引っ張り隅の方に行く、そこでどこからか取り出した本をカレンに渡しカレンは驚きの後笑顔で頷きそれをどこかにしまう、数名のメイドがそれを見てカレンとタリアに素早く近付き少し話をして笑顔で仕事に戻って行く。


 やりきった顔のタリアととても満足そうなカレンが戻って来た。


「何をしているのあなた達、王族を迎えるのだから早く準備しなさい」


 先程までたかだか王族と言っていたのにこの変わりよう、一体タリアは何を渡したのだろうか?


 カレンとタリアはカロンを捕まえて歩いていってしまう、一時の嵐のような状態に俺、セバス、ミルはどうしていいものかと数秒立ち尽くしていた。


「カレン母様って一体なんなんでしょう」

「十二聖天の序列二位です」

「二つ名は血染めの女王っす」


 俺の呟きをセバスとミルは拾い答えた。 


 ってか序列二位って!しかも二つ名が物騒ですけど!


 俺が驚いているとカロンがこちらに戻って来た。


「ミル待たせたな、こちらの準備ができたから迎えを頼む」

「了解っす、あっ、カロンさん、テンリ君に十二聖天なの黙ってたんすか?」

「なんだ、教えたのか?」

「ダメでしたか?」

「いやかまわない、伝える必要がなかったから言ってなかっただけだからな」

「なら良かったっす、ところでカレンさんとタリアさんは?」

「私達ならここよ」

「ひゃ!」


 ミルは真後ろから声がかかり変な声と共に飛び退いた。


「け、気配なく真後ろに立たないで欲しいっす、変な声が出ちゃたじゃないすか!」


 ミルは抗議の声をあげるがカレンはどこ吹く風だ、タリアは苦笑いをしている。


「まったく、あの程度気付けなくてよく護衛なんかが勤まるものね」

「うぅー、カレンさん酷いっす」

「悔しかったらもっと精進なさい」

「頑張るっす、ではさっそく陛下達をお連れするっす」


 ミルは手を前にかざす。


「ゲート」


 ミルがゲートと一言口にすれば大きめの扉程の空間が歪みその空間の中に違う景色が広がっていた、そこから数人の人物が歩いてくる。


「陛下、御待ちしておりました」


 最初に現れたのはどうやらこの国の王様みたいだ、名前はロレンス=デイステン。


「カロン、急に押し掛けてすまんな」

「いえ陛下、このような地においで頂きありがとうございます」

「そう固くなるな、公式の場ではないのだし今日は友として来たのだ」

「そう言われましても」


 カロンとロレンスが話していると大柄の人物が割って入ってきた。


「おうカロンよ、ロレンスと話すのもいいが俺がいるのを忘れるなよ」

「忘れてなどおりませんよ、お久しぶりですアガレス獣王陛下」


 どうやらこの人物がジュマ獣王国の獣王、アガレス=ジュマのようだ、力強く強者の風格漂うライオンの獣人だ。


「今しがたロレンスも言っていたが固いぞ、昔は俺達の後ろをついて回っていたのにな」

「まったくだ、私やアガレス兄さんの後ろを兄上兄上と言ってついて来ていたものだ」


 懐かしそうにする二人の王、いったいこの2人とカロンはどういう関係なのだろうか?


「記憶を捏造しないでください、あなた方について行かなければ問題を直ぐに起こすから仕方なくついて行くしかなかったのです、第一問題を起こした後の尻拭いをなん度させられたことか」


 カロンは大きな溜め息をつく。


「そうだったかアガレス兄さん」

「記憶にないな」

「「わはははっ」」


 ロレンスとアガレスの言葉にカロンは再度溜め息をつく。


「あなた」

「ん?おぉそうだ、こいつらの紹介をせぬとな」


 アガレスの後ろから金色の髪に金色の瞳を持つ狐の獣人が現れた。


「妻のエリンだ」

「始めまして、アガレスの妻のエリン=ジュマです」


 エリンと名乗った狐耳の獣人が頭を下げる。


「そして娘のリアナだ」


 アガレスに名前を呼ばれエリンの後ろから少女が顔を出す。


 俺と目が合ったので微笑んだのだが頬を赤くし直ぐに目を反らされた。


「リアナ自己紹介なさい」


 エリンに言われカチコチになりながら少し前にでる。


「あ、あの、リ、リアナ=ジュマでしゅ、よろしくお願いしましゅ」

(((((((((あ、噛んだ)))))))))


 リアナと名乗った少女は緊張のせいか噛んでしまい顔を真っ赤にし直ぐエリンの後ろに隠れてしまった。


 このリアナという少女、白髪で赤い目をした狐の獣人である。


 リアナの獣人としての特徴は母親のエリンから受け継いだようでとても似ていた。


 この世界ではあらゆる種族の婚姻が認められている、そして産まれてくる子供は基本的には両親のどちらかの身体的特徴を受け継ぎ産まれてくる、人族同士なら勿論人族が産まれる、これが人族と獣人族ならそんのどちらかの特徴を持ち産まれてくる。


 ただ稀に先祖返りと言われる子共が産まれる事もある、例えば両親は人族ではあるが祖父母又は先祖の誰かが獣人族だった場合獣人の子共が産まれてくるケースもある。


 カロン達がこの場で軽く挨拶を交わしているとエリンの後ろから恥ずかしそうにリアナが顔を出しまた目が合う、しかし直ぐに又目を反らされた、俺って嫌われているのだろうか?


 ただリアナを見ていると不思議と懐かしい感覚に襲われる、これはアトレイアに会った時と同じ感覚だ。


「テンリ挨拶を」


 リアナを見ていたらカロンから声がかかる、どうやら周りにいた人達の挨拶が終わり俺に声をかけたみたいだ。


「はい」


 俺はカロンの声に素早く反応し返事をする。


「私はエレノール家の次男でテンリ=エレノールと言います、今年5歳になります、この度は両陛下並びに王家の方々にお越しいただき嬉しく思います、是非ゆっくりしていってください」


 自己紹介をしたのだがロレンスとアガレスの二人は何も言わず真剣な目で俺を見ている、俺ひょっとして何か粗相をしましたか?


「あ、あの」

「カロンとカレンの息子か」

「なかなかいい面構えをしてるな」


 不意にアガレスから殺気を感じ身構える、殺気事態は一瞬の事で合ったが殺気を向けられる覚えはない、やはり知らないうちに何か粗相でもしていただろうか?


「ほぉ」

「今のに反応するとは」


 2人の王はまるで品定めをするかのように目を細める。


「私の息子に殺気を向けるなんていい度胸をしているわね」


 カレンの声が聞こえた瞬間ロレンスとアガレスの2人がビクッと肩を震わせる。


「す、すまんな、お前達の息子だから少し試そうとアガレス兄さんがな!」

「な、ロレンス、貴様も乗り気だっただろうが!」

「王の首が2つ程家の門に飾ってあれば箔がつくかしら?」


 2人の顔がひきつる。


「ほほっ、立ち話も何ですからお部屋にご案内致します」

「そ、それがいい」

「早く行こう」


 セバスの言葉にロレンスとアガレスが食い付き他の者達は苦笑いをしていた。


 そしてセバスに先導され皆が移動する。


 部屋に入り皆が座るとセバスが直ぐにお茶やお菓子を出してくれた。


「それで、なぜ両陛下は我が屋敷に来たのですか?」

「「遊びに」」


 ロレンスとアガレスの言葉にカロンは天を仰ぐ。


「貴方達は一国のトップなんですよ、そんな気軽に出歩いていい立場でもないんですから」

「あー、わかったわかった」

「そんな事よりカロンには後2人子供がいるんだろ、どこにいるんだ?」

「確か長男のレインはラウスヴェル学園で長女のマインが王都にあるエレノールの屋敷だったかな」

「そうなのか?両方ミルに言って連れてこさせればいいではないか」

「止めてください」 


 ロレンスとアガレスは楽しそうにカロンは大きな溜め息をつき疲れた顔をする。


「おぉそうだ、テンリ」

「はい」

「リアナはお前と同じ年齢だ、まぁ仲良くしてやってくれ」


 俺がリアナを見ると直ぐに顔を反らされエリンの腕にしがみつく。


「リアナ、いつまで恥ずかしそうにしているのですか」


 エリンはリアナの腕をほどく。


「テンリ様、せっかくなので屋敷を案内されてはいかがですか、大人ばかりの部屋にいてもつまらないでしょう」

「そうですね」

「タリア様の研究塔の隣にある植物園に行って見てはどうですか」


 俺はセバスの提案に頷きタリアを見る、タリアはグッと親指を立てウインクをした、どうやら大丈夫なようだ。


「ではリアナ様ご一緒に屋敷を見学しませんか?」

「は、は、はい、よ、よろしくお願いいたしましゅ」

(((((((((あ、また噛んだ)))))))))


 リアナは顔を真っ赤にさせうつむいてしまう、それを見て大人達は微笑ましく笑っていた。


 リアナのメンタルが終わりを迎える前にここを離れよう。


「それでは行ってきます」


 俺はリアナの手を取りこの場を直ぐに離れる。


 それを生暖かい目で見送られた。


「さぁリアナ様こちらになります」

「は、はい」

「少し歩きますがなかなか良いところですよ」


 そう話しながら屋敷を出て植物園に向かった。


 植物園に向かったのはいいが直ぐに無言になってしまった、何を話せば良いのか思いつかない。


「あ、あのテンリ様は普段どのようにお過ごしなのですか?」


 何か話さなければと思っていたところでリアナが話を振ってくれる、話題が思い浮かばなかったので正直助かった。


「普段ですか、そうですね、大半は部屋で読書です」

「読書、ですか、私もよく本を読むんです!」


 共通の話しが出来たので少し安心した。


「その、本を読むと言ってもロマンス小説が多いのですが」

「ロマンス小説ですか?」

「はい、最近出た物で言えば赤き戦乙女を読んでいるんです」

「赤き戦乙女ですか?」

「お知りになりませんか?有名なシリーズ物のお話なのですが」

「家の書庫にはありませんでした」

「そうなのですか、では主役がどんな人物かも」

「わからないですね」


 リアナは驚いた顔をしている。そんなに有名な話なのか、残念ながらまったく知らない。


「どのような人物が主役なのですか?」

「この物語の主役はカレン様なのです」


 リアナの言葉に一瞬固まってしまった。


「あの、その人物は?」

「もちろんテンリ様のお母様です」


 まさか自分の母親が主役の本が出回っているとは、しかもシリーズ物で。


「他にもカロン様やタリア様、ミル様の本や演劇等も多くあるんです、その、お父様の物も多くあるんですよ」


 最後は少し恥ずかしそうに答えた。


「それにセバス様のお話もとても有名です、シリーズは完結しているのですがいまだにベストセラーなんですよ」

「そ、そうなのですか」

「はい、天から与えられた称号を持つ方達のお話はどんな大陸でも有名なのです、私はその中でカレン様のお話が一番大好きなんです」


 マジか、俺の知らない所でそのような本が出回っていたとは、探せばこの屋敷のどこかにありそうだ。


「テンリ様はどのような本をお読みになるんですか?」

「えっと、薬学や魔法書、世界の歴史が書かれた本等を読んでいます」

「凄いです、とても難しい本を読んでいるのですね」


 若干引かれると思ったがそんな事がなく安心した。


「将来は冒険者になろうと思っているので今のうちのいろいろな知識を身に付けて置こうと思いまして」

「冒険者ですか、テンリ様は将来この領からお出になるのですか?」

「そのつもりです、幸い皆に自分の人生なのだから好きにしていいと言ってもらっていますし」

「そうなのですね、羨ましいです」


 リアナは頷きながら少し寂しそうな顔をした。


「ついたようですね」


 話している間に目的地である植物園に到着した。


「ここがタリア母様が管理している植物園です」


 扉を開けると一面花や植物等が綺麗に手入れされて佇んでいる。


「凄いです」

「ここには花や植物、果物も多数あり品種改良もおこなっている施設になります」

「綺麗な所ですね」

「はい、我が家の自慢できる場所の一つです」


 花を一輪手に取りリアナの髪に挿してやる。


「とてもお似合いですよ」

「あ、ありがとうございましゅ」


 リアナは顔を真っ赤にしてまた噛んだ。


「では見て回りましょうか」


 俺とリアナは植物園の中をいろいろと見て回る、花や植物を見ていると職員達がこちらに気づき説明をしてくれて助かった、それに取れたての果物を試食したりとなかなか充実した時間を過ごせたと思う。


「植物園はこんな感じです、いかがでしたか?」

「とても楽しかったです、花はとても綺麗で薬にになる植物等は勉強になりました、果物も美味しかったですし働いている方達も優しくて良い人ばかりでした、とても素敵な時間でした」


 リアナが満足そうで何よりだ、暗くなる前に植物園を後にして屋敷に戻る、その時リアナが少し残念そうにしていた。


 屋敷に戻るとセバスがなにやらメイド達や料理人等に指示を出していた。


「セバスさん」

「テンリ様にリアナ様お帰りなさいませ」

「ただいま、今何をしているんですか?」

「ほほっ、陛下達が夕食をここで食べると言ったのでその準備です」

「そうなんですか」

「そうなんです、皆様まだお部屋でお話をしておいででしたよ」

「わかりました、なら帰って来たのを伝えてきますね」


 俺はリアナと皆がいる部屋に向かう。


「おう、2人共戻ったか」


 アガレスが気付き声をかける。


「はい、ただいま戻りました」

「とても楽しくて素敵な所でした、時間があればもっとゆっくり見ていたかったです」


 リアナの言葉にタリアは満足そうな顔をした。


「そうか、なら近いうちにまた連れてきてやろう」


 リアナの楽しそうな顔を見てアガレスはそう呟き頷いている。


「アガレス兄さん、一国の王がそんな簡単に出歩ける訳がないでしょう」

「カロンよ安心しろ、ミルがいるではないか、そうだろロレンス」

「その通りだ」

「ロレンス兄さんまでそのような、はぁ」


 カロンは軽く頭を押さえる。


「あの、自分に拒否権はないんすか?」

「「ない」」

「そうっすよね」


 2人の王にあっさりミルは屈していた。


「まったく、そうだテンリ、急な話だが祝福の義を聖都で受ける事になった」

「え!そうなのですか?」


 聖都、教皇が納めアトレイアを信仰するアトレイア教団の本拠地であり各大陸を橋で繋いでいる唯一の場所。


「なぜ聖都で?」

「テンリの祝福の義を聖都で受けるように聖女様が神託を受けたそうだ」


 聖女の神託か、もし従わなければ邪教徒扱いを受けあらゆる手段で粛清される。


「わかりました、しかしいつその話が?」

「私が連絡を受けてな」


 俺の質問にロレンスが答える。


「今の聖女は我が娘なのだが先日緊急の連絡があってな、その内容がテンリ=エレノールがおこなう祝福の義を聖都でおこなえとの内容だったのだ」


 まさか一国の王女が聖女に選ばれているとは。


 それに俺を聖都に呼ぶってことは間違いなくアトレイアが何かしているんだろうな。


「リアナ王女も帰りに聖都で祝福の義を受けるそうだ、なので今回は獣王家と共に聖都に向かい共に祝福の義を受ける事になった」

「わかりました」


 話が終わると扉をノックしセバスが入ってくる。


「皆様お食事の準備が整いました」


 セバスに案内され部屋を移動し皆で食事を楽しんむ、その後ミルがゲートを開き満足そうに陛下達は王都に戻っていった。


 後日屋敷を出発し一度王都に向かう、そこで獣王国側と合流し聖都に向かった、ゲートを使えば早くて安全ではあるが王族や貴族の移動は各街などで経済の流れを良くするために馬車の移動となった。

 編集しました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ