5
三月五日(火曜日)
朝のホームルームが始まっても教室はにわかにざわついていた。さしずめ同級生には過去から転校生が来たように感じるのだろう。
「はいはい静かに」
担任がそれを律する。なんとか話を進められるまでに収まったのを見計らって担任は話し始めた。
無事退院できた私は、今日こうして学業に復帰した。足は昨日より痛いし、疲れもだいぶたまってる感じがしたけど、だからといって様子を見ている時間など残っていない。卒業式は今週の……。
「さて、明後日の卒業式だけど、」
金曜日じゃないの!?
〇
なんとなく、週末に行うイメージだったが、撤去日などを考慮すると確かに木曜日に行うのが妥当だ。
まあ、一日くらいこのさいどうでもいい。よく考えたら予定なんて建ててなかった。だから、大丈夫。うん。
ホームルームが終わる。私は担任に訊かないといけないことがあったので席を
おお。
クラスメイトが押し寄せてきた。本当に転校生の気分だ。
まずい。私には時間がないのだ。
私はなんとか脱出する前に、先生の方からやってきた。同時に同級生達は離散する。
「もう、大丈夫なのか?」
「なんとか」
「目が覚めてからまだ三日だろ? たぶん授業についてこれんだろうし、無理に出んで補講だけ出ればいいんだぞ」
そうもいかないのだ。
「そんなことより先生、私がぶつかった人ってわかります?一度謝っておきたくて」
私は食い気味に訊ねる。
「ああたしか三年三組だったな。去年の美術部部長だった」
三組か。早く行こう。
「ありがとうございます」
私が立ち上がろうとすると、
「待て待て」
教員が止める。
「今日は三年休みだぞ。次来るのは明日のリハーサルだ」
なぬ。
「その方の住所って教えてもらえたり」
「だめだな」
食い気味に答えられた。
「まあ、そんながめつさを見せられるくらいには元気なようだな。安心した」
そう言い残して担任は去っていた。
今の会話を要約すると残された猶予は実質あと二日。
――参った。
「なにが参ったの?」
「これじゃ告白できないんだよ。って急になに!」
声の方を見やると一番仲の良い友人がくつくつと笑っていた。
「告白するの?」
「そんなことより待て、なんで私の心を読めた?」
「だって声に出てんだもん。それより告白するの?」
彼女はすっかり野次馬モードだ。
「まあ」
「その先輩に?」
傍受しすぎだろ!私は小さく頷くと彼女は一層大きく笑う。
「でもさ、告白してどうすんのよ」
どうするって? なに?
「どういう関係なのかは知らないけどさ、振られたらもう先がないんだよ?」
「まあ」
「好き嫌いってそんなに安易に告げるものなのかねえ」
私は友人の言っていることが、いまいち理解できなかった。