表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

お便りコーナー  第6032回 ヤマダヒフミ先生



 先日、書籍化を成し遂げられたヤマダヒフミ先生からお便り届きましたので、皆様にお伝えいたします。以下、その文面となります。




 はじめまして、ヤマダヒフミと申します。


 マントラブックス様から『生きていくつもりがないけど、女の子に囲まれてしまう! まったり生きたいよ 異世界パンドラダマスクス2.0』を六月三十一日に発売する事になりました。こちらの作者をやっています。


 元々、小説が好きで、読む事から始め「小説家になりたい!」に登録し、ほそぼそと小説活動を続けてまいりました。本来、私が書きたいのは純文学で、コーショーな哲学を目指していたのですが、その方をやってもやっても、誰も見てくれるものがいません。自分では大切な事をしているつもりでいたのですが、それが他人にとっては大切ではないという事が、段々と見えてきました。


 そこから方向転換いたしまして、流行っているテイストを盛り込み、読者の方が楽しめる作品を目指して投稿した所、読者数が増え、ポイントもつき、大いに自信がつきました。(そうか、これでいいのか!)という新鮮な驚きがありました。


 小説というジャンルはそもそも、大衆的な娯楽作品であり、面白ければ良いというものです。日本という特殊な国ではどういうわけか、純文学と大衆文学は違うという事になり、大したものでもないのにコーショーな事をしているとされている純文学の担当者が、大衆文学を鼻で笑うというような事態になっておりました。それが無反省なまま、今まで続き、それがまた無反省にも、芥川賞と直木賞の違いという風になっているわけです。実際、何が純文学で何が大衆文学か、それぞれの作者に聞いてもはっきりした答えは返ってこないでしょう。ですが、小説というものは、そもそもが娯楽的なものです。現実には体験できない経験をしてみたいという、浅ましい欲望から生まれたものです。それを、日本という後進国は、自然主義文学だの、芸術と生活との統一だのと言い、むやみに神秘化したわけです。今や、綿矢りさと朝井リョウが大きく違うなどという人はおりませんでしょう。


 私がやっておる「異世界チーレムハーレムニーレム」小説なども、人に非難されるようなものでは決してございません。一部の人間は未だに自分達のしている事を他人が認めてくれないルサンチマンから、こちらを攻撃してくるのですが、それは的外れであります。夏目漱石にしろ、ドストエフスキーにしろ、極めて通俗的で、面白い読み物であります。それは、私の「異世界チーレム(以下略)」と同じでございます。


 …いえ、この際、正直に言いましょう。文学などというものを、歴史的経緯からむやみに神秘化し、コーショーなものとして、祀り上げ、その事によって私達は甚大な損害を被っているのです。文学などというものをコーショー化する事によって得するのは、それを研究対象としている大学教授や、そういうものを出版している出版社に限られます。彼らは自分のしている事を神秘化し、祀り上げ、内部を秘匿する事によって、それを担ぎ上げている自分達の価値をもあげようというそういう欲望に取り憑かれているわけです。また、大衆というのは、権威に弱いですから、それが理解できないとしても、(何やら偉い人が言っているからそうらしい)とこうなるのです。それでわけもわからずに、日曜日に美術館に行き、わかりもしない絵画を見て、「やっぱりピカソはいいね」などとのたまうのです。


 私達はもはや、はっきり言うべきです。ただ、愉しいだけのもの、面白い、笑える、人生の隙間を埋めてくれるものだけが素晴らしいのだ、と。芸術なんてありません。存在しません。「芸術らしきもの」を捏造する事によって、何もわからない連中が商売をやっているにすぎないのです。ですから、我々は勝者です。もちろん、出版予定の私の作品、「生きていくつもりがないけど(以下略)」は、立派なものではありません。俗な欲望を叶えるものにすぎません。…ですが、この作品の評価を見てください。「小説家になりたい!」サイト内の評価を見てください。多くの人が愉しかった、面白かったと言ってくれています。確かに、これはくだらないものですが、そうしたもので多くの人が喜んでくれているのは事実です。そして、多くの人を愉しませる事によって、私自身も作家になる事ができました。作家という肩書を背負えるようになりました。これは、作家を夢見ている人には注意しておきたい事実です。やはり、多くの人に何らかの愉しいものを提供する事によって、私自身も作家という肩書がつき、プロとしての自覚ができ、誇りを持つ事ができるのです。


 そうです。世の中に大したものなんてありません。ノーベル賞は素晴らしいなんて話もありますが、あれは人を沢山ぶっ殺す事になったダイナマイトを発明した、ノーベルなんて男の金を配布しているわけです。あんなものはろくでもありません。様々な発明や進歩が素晴らしいとされていますが、それは私達の生存を伸ばし、労働の苦労を減らし、余暇を長引かせ、そうして自分達が愉しむ為にあるのです。全ては私達の愉しみの為にあるのです。何、恐れる事はありません。ですから、「異世界チーレム(以下略)」も大したものです。立派な、文化的創造物なのです。私達はこういうものを愉しみ、喜んで生きるのです。こういうものがお気に召さないという人は知った事じゃありません。彼らは自分達の嗜好を絶対化して、他人を遠ざけたいのです。少数派で、理解されないという事を、「自分は彼らとは違う」という理屈で補いたいのです。そんなものはくだらないものです。人生は愉しむ為にあります。


 …長々と、人生論など語ってしまいましたが、マントラブックス様から発売の『生きていくつもりがないけど、女の子に囲まれてしまう! まったり生きたいよ 異世界パンドラダマスクス2.0』をくれぐれもよろしくおねがいします。これもまた読者様を愉しませる為に書かれた作品です。どうぞ、読者の方が購入して読んでいただいて、それで私も生活していくわけですから、こちらの方、よろしくおねがいします。






 P.S 最近、体の調子がよくありません。風邪かなと思いましたが、医者に行った所、精神的な疾患だと言われました。精神科医に行った所、鬱病と診断されました。どうして鬱病になるのか、その理由がさっぱりわかりませんが、私は正しい考えを持って正しく生きているはずで、それがどうして鬱病になるのか、不思議なところです。いずれにせよ、私は作家として、これからも「異世界チーレムハーレムニーレム」を書いていく所存です。この後もよろしくおねがいします。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ