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第十一話 狭まる世界広がる世界

 勇者イベントが起きてから、魔王軍が攻めてこなくなった。

 なるほど、ダラダラ定期戦闘を繰り返すような愚は侵さないとはほんとにやるねこのゲーム。


『もう国家になって人々が自活しているからなぁ……やることも無くなってきたなぁ』


 進化に必要なポイントは遥かに先だし、ダンジョンを覗いたりも楽しいけど、少々やることが減ってきた。一人に注目して見てたりと楽しめることは楽しめる。それでも、今までに比べれば落ち着いた。


「いよっ、国が見えた。が達成されました。ポイントが与えられ、マイライフ、ヒューマンモードが解放されました」


『マイライフ? ヒューマンモード?』


 視界に新しいアイコンが現れる。

 迷わず押すよね。

 急に場面がアバター作成場面のように変化する。

 

『髪型、瞳、眉毛、服装から、スキル? パラメーター? これまさか、ゲーム内のキャラになれるの?』


 いろいろと試しながらキャラメイクを行う。

 やせ型、ムキムキ、デブ。なんでも可能、顔も細かくカスタマイズできる。

 俺はこういう時になぜかイケメンとかに出来なくて、普通の顔にしてしまう。

 なんでだろう……なんか、恥ずかしい。

 名前はパック君。

 スキルやパラメーターははっきりと名前や数値ではでない。

 スキルはランダムで優しい心。いざって時に頼りなる。根っからの動物好き。とか抽象的な三つのキーワードが組み合わされる。

 ステータスも同じだ。運動は苦手じゃない、勉強は嫌いじゃない、手先は器用じゃないとか微妙な5個の言葉の組み合わせだ。

 なんどかさいころをふって。

 スキルは凄い料理!。優しさあふれる。善人の3つ。

 ステータスは運動が得意。勉強は得意。手先は器用。運は悪い。体力お化け。

 たまにレアな選択肢もあるみたいだけど、これでいいや。

 キャラを作成すると、視点が一人称に代わる。


『おお! すごいな!』


 体の動きは、なんていうか、歩くって思うと脳内の指定した場所へ勝手に歩き出すって感じで、クリックしたら移動するようなタイプのゲームみたいだ。


 どうやら防壁の外に出たので、衛兵に話しかけてみる。ドキドキする。


「やあ、君も外から来たんだね、わが国へようこそ。取りあえず外から来た人はギルドへ行って身分証明書を作ってくれ」


『おお、言葉がわかる!』


 なんか、目線があってるようなあっていないような。怖い。

 ギルドの場所を聞きたいと思うと入っている人が話しかけてくれる。


「ギルドはどこにあるんですか?」


「やあ、君も外から来たんだね、わが国へようこそ。取りあえず外から来た人はギルドへ行って身分証明書を作ってくれ」


 あっ……何かを察して防壁内に入る。

 一人称視点で見る城内は、また受ける感覚が違う。新鮮だ。

 この時点でいろいろと試した結果、所謂神の視点に戻ると自分のキャラクターはステータスやスキルに沿った行動理念で行動する。愛着が出来るのでそれを眺めるのも非常に楽しい。

 もちろん中に入って、少し不自由だがロールプレイに勤しむのも新たな楽しみがある。

 不自由というのは、行動の方向性を決められるんだけど、実際の行動は中の人が行っているような感じ。あくまでもその個人の考え方の方向性を決められるだけだ。

 それでも、それでも格段に楽しい。

 一気に出来ることが縮小したはずなのに、その不便差がたまらなく楽しい。


『あーーーちがうーーーーそうじゃないーーーー』ってやきもきしたり。


『おお、そうやってやるかぁ! こりゃ嬉しい誤算だ!』みたいに感心したり。

 

 国から個人へと対象が狭くなったことで逆に世界が広がった。

 パック君は料理が得意な優しい男で、バイト先の輝き亭でその腕を見込まれるんだけど、総料理長に人の好さに付け込まれて最終的にはやめてしまう……

 しかし、捨てる人あれば拾う神あり、街でチンピラに絡まれている女の子を助けるとその子の所属する冒険者パーティに助けられ、その料理の腕ですぐにスカウトされる。

 ヒーラーの女の子とのまるで中学生みたいな恋愛と、冒険者としてのドキドキ、そして旨そうな料理の数々。仲間たちもパックの作る新しい料理のために素材となる魔物を狩りまくって強くなっていく。

 いつしかパック達のパーティはダンジョンの深淵へと足を踏み入れてしまう……

 強大な敵、追い詰められていくパーティ、ヒーラーの女の子を助けるためにパックは……


『いやーーーーー……。パックぅ!! 幸せになれよぉ~~!!』


 素晴らしい一大エンターテイメント映画を体験したような気分になれる素晴らしい人生だった。


「我が人生に一片の悔いなし……。を達成しました。ポイントを手に入れました。アバターの種類が増えました」


 もう一度マイライフを覗くと、現在すでに生活している人間の中には入れたり、動物のアバターで生活したり、魔物での生活もおくれるようになっていた。どこかにダンジョンを作ってダンジョンの主プレイなんかとても楽しそうだ……


 まんまとどっぷりとマイライフにはまりまくりました。

 この国の中に、確実に生きている人間たちがいる。

 敵としている魔物一体一体にもドラマがある。

 窓際で寝転ぶ猫、路地裏で残飯を漁る犬、すべてが物語を持っているんだ……


『マイライフ……尊い……』


「勇者が問題にぶつかりました。また力を貸してあげてください」


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