第十話 勇者ロトトの大冒険
「勇者ロトトの大冒険クエストが始められます。始めますか?」
『イエスです。ハイです』
「勇者の仲間、戦士、魔法使い、僧侶を生み出すために冒険者を鍛えましょう」
『いきなり無理難題を!』
「ヒント、ダンジョンを拡張して冒険者を鍛えられます」
『おお、いきなりなんか丁寧になった。基本的に放っておかれたのに!』
まぁ、せっかくの助言に従ってダンジョンへと移動する。
ダンジョンを覗くとちゃんと内部に視点が入り込んでいく。
『ふむふむ、ダンジョンギミックを配置できるんだね……』
作ろうと思えば悪辣なトラップだらけのダンジョンも作れるんだね。
ふむふむ、光源から離れた場所にはモンスターが現れるのか―……
『これ、モンスターを効率よく発生させて効率よく倒させる仕組みを作ればいいんじゃないか?』
俗にいう経験値トラップだ。
培養槽でモンスターを増やして、トラップを利用して瀕死の状態で冒険者に始末させる。
試行錯誤を繰り返しながらダンジョンをいじり倒していく。
ダンジョン内も自由に見ることが出来るので、冒険者を手助けしながらトラップの完成を急ぐ。
『最高効率はわからないけどこの方式が安定しそうだ』
ダンジョンの深層に沸き部屋を作り、部屋の四隅のトラップを踏んだモンスターを冒険者が訪れる層まで転移させて、トラップを食らいながら移動床で運んで、個室に落としてあげる。
深い層の敵なので強いのだが、すでに満身創痍で冒険者たちの前へと出されることになる。
『可哀そうだが、君たちには冒険者の餌となってもらう』
冒険者たちも初めてそこにたどり着くと何やら慌ただしく動き回って定期的に冒険者を送り込むようになる。深層の敵が傷つきながらも現れるって感じで問題になったのかもしれない。
しばらく冒険者たちの頑張る様を見ていると、明らかに強いパーティが出てきている。
『おー、今日はこの子達か、強いんだよなぁ……少し連戦させるか』
敵の排出速度も調整できるようにしたので、数体を何度か送り込んでみた。
見事な連携で敵を倒していく。男の戦士が敵をうまく引き付けつつ攻撃、魔法使いの女は強力な魔法で敵を薙ぎ払い、女僧侶は回復に補助魔法に動き回っている。
てれれれってって~~
「レベルに達した戦士、魔法使い、僧侶が生まれたので次のステップへ進みます」
気の抜けたファンファーレとアナウンス。どうやら彼らが勇者の仲間となるようだ。
フラグスイッチが入ったのか、聖剣を抜いた勇者が城へと戻ってくる。
「幼少の頃より、不思議な声が聞こえるロトトは、ある日天啓を授かる」
『おお、ナレーション付きか』
「天の声に従い数々の試練を乗り越えたロトトは聖剣を手に入れ城へと戻ってくる」
『ふんふん、ええなええな』
「魔王の脅威にさらされていた国王は、孫でもあるロトトの功績をたたえ勇者の名を授け魔王討伐の任に当たらせる。しかし、いつ何時魔王軍が襲い掛かってくるかわからない王国の兵を貸すわけにいかない……そんな時、冒険者の中にメキメキと頭角を現しているパーティが噂になっていた。
王はその冒険者たちをロトトと共に王城へと呼び出すのだった……たぁ……たぁ……」
『ああ、ここは引きの場面なんやな』
「ロトトと初めて巡り合う戦士、魔法使い、僧侶! その時奇跡が起こる! バリバリバリィ~!」
『効果音声か!』
「ロトトの持つ聖剣が震えだし、光り輝くのだった!
三人の冒険者、そしてロトトの手の甲に光り輝く神の紋章が浮かび上がる!」
『おい、めっちゃ【神】って文字でとるやん! 俺の名前かい! それか神様って意味かい!
ちょっと……ダサいな……』
「こうして運命のパーティが生まれるのであった……第一部、完」
『おー、いいね。いいね。こういうの挟んでくれると俺もやる気続く。うんうん」
「彼らの冒険は定期的にお伝えする形となります。
次のお話を楽しみに発展を続けてください」
『なんか、このイベント丁寧だね嬉しいよ』
「ありがとうございます。それではまた……」
『はーい……』
ん? なんか、今、大切なことを忘れているような気がする……なんだろう?
まぁ、いいや。それにしてもダンジョンもいじれるのは盲点だった。
放置してた。これを使って強い冒険者を作れば戦闘の時だって傭兵的に手伝ってくれるだろ。
そのままにしておくと危険なので沸き層を潰して敵は冒険者の経験値になってもらった。
それからダンジョン全体に手を加えて超巨大階層型全天候全地形体験型ダンジョンにしておいた。
このダンジョンで経験を積めばどんな場所だろうが最高のパフォーマンスで動くことが出来るだろう。
壁の外に向かって超巨大になって、今後拡張していくとダンジョンの上に都市が出来るけど……
たぶん平気だろう。
ダンジョン内は巨大な柱で支えているし。
でも注意はしておこう。
『さてと……次は……ん? さっきさ……答えてたよね絶対! おーい! システム―!!
出てこーい!! システムさーん!!』
しかし、俺の呼び声(声は出ていないが)に答える者は誰もいなかった。




