東大陸の古代文明
イレヴンズゲート世界では、西大陸のほぼ中央に位置するエリスタリア半島の世界樹から全ての生命が誕生したと考えられている。
伝説では、エリスタリア王ディオマーから逃れて自由を求め、亜人たちは世界に散っていった。
その中でも鳥人と蟲人は、空を飛ぶことが出来たためにいち早く東大陸に定住した。
東大陸北部、オルニト海沿岸のオルニト高原に鳥人たちが定住したのは、約10万年前頃と考えられている。
多くの文明は、安全な飲み水を得るため、大きな川や貯水池の近くに勃興した。
しかし鳥人は、人間や他の亜人に比べて広大な範囲を移動できたため水源より遠い場所にも定住することが出来た。
水害の危険がなく、水源を巡る争いの起こらない乾燥したオルニトは鳥人にとって安全な土地であった。
またオルニトは、優れた黒曜石の産地でもあった。
黒曜石は、金属に比べて容易に加工でき、切れ味も勝っている。
加えて黒曜石を交易品として出荷することでオルニトで不足する物資を調達できた。
この黒曜石を有効に利用することでオルニトは、早い時期から発展した。
古代オルニトは、世界中に黒曜石を運び、代わりに金属や植物の種子を持ち帰った。
また通商に必要な商品取引の記録に欠かせない「文字」や「数学」が発達していった。
さらに鳥人によってイレヴンズゲート世界の言語は、ほぼ共通言語で統一された。
東大陸中央の西岸地域、ぺーザル平原には古代シャーンイイ王国が成立した。
シャーンイイは、ペーザル平原のイエランシーンに興った都市国家で成立した年代は不明である。
ここに住んでいた種族も分かっていない。
非常に複雑な形状の住居跡が残っており、人型種族ではなかったと考えられる。
特に有名なのが首都ナーナクの遺跡群である。
相当、巨大な国家が繁栄していたことが今に伝えられている。
この国に関わるオルニトの記述も極端にこの場所を嫌っていたように少ない。
ただシャーンイイとオルニトは、隣国であるため争いがあったとしても不思議はない。
シャーンイイ王国は、未踏破地帯から侵入して来た魔獣によって滅びたと考えられている。
その年代は、正確には不明だが紀元前3000年頃と考えられている。
それ以降、シャーンイイ辺境伯領国家が成立するまで、ほぼ無人であった。
東大陸の南部、払暁湾では、ヌアトゥス文明が成立した。
文明の名の由来は、この時期に現地で傑出した繁栄を見せた都市国家ヌアトゥスである。
紀元前5000年頃に石器時代が始まり、土器が作られ始めた。
払暁湾は、既知世界で最も早く朝日を見ることが出来ると考えられた。
このためヌアトゥスをはじめ、周辺地域でも太陽神ラーが信仰された。
しかし太陽神ラーの地上の代理人たる亜人王がカー・ラ・ムールに定められたことが彼らを落胆させた。
紀元前3000年頃。
ヌアトゥス王コートは、古代オルニト帝国に依頼し、ラ・ムールに鳥人の使者を送っている。
この時、太陽王カー・ラ・ムールは、コート王の使者に感激したと記録されている。
返礼として太陽神の神霊の一人、トルン・ラーが派遣された。
トルン・ラーは、ヌアトゥスの祭神として奉られ、王家の守護神となった。
紀元前1600年頃。
征服王カー・ヴァルトスの治世にヌアトゥス王ディートが再び使者を送った。
征服王は、感謝のしるしに黄金と宝石を送り返して来た。
紀元前1400年頃。
邪龍王マルドレイクがラ・ムール帝国を簒奪してオーマ・ゴーマ帝国を成立させた。
邪龍王は、8人のカー・ラ・ムールを処刑するなど蛮行と圧政を続けた。
時のヌアトゥス王シートは、ラ・ムールとの友誼に報いたいと願ったが遠すぎて援軍を送ることもできなかった。
紀元前1000年。
ヌアトゥスは、トルン・ラーを守護神として領域国家となり周辺地域の統一を成功させた。
それがヌアトゥス王国である。
初代国王としてダトー・シジ大王が即位した。
大王は、払暁湾に大港の建設を開始した。
この工事は、200年ほど続き、巨大な港湾都市が整備された。
払暁湾周辺に住む種族は、「スプリガン」と呼ばれる妖精の一種である。
見た目は、ドワーフに似ているが、より醜く頑強で戦闘的である。
ドワーフは、職人気質という印象が広く知られるがスプリガンは、戦士である。
普段は、小柄だが巨人に変身することができた。
もともと他の亜人たちを護衛する役目を担っていたとされる彼らは、長征を続け、東大陸の果てまで行きついた。
彼らは、さらに東を目指す者たちを待っていて、自分たちの役目が終わっていないと考えている。
しかし既知世界全土に亜人が広がって何千年も経つが、彼らと共に東に旅立った者たちは居ない。
神霊トルン・ラーは、”星海を渡る太陽の船の船長”で航海の神である。
これは、太陽をラーが乗る星海を渡る船と解釈したことを由来とする。
太陽王カーは、ラーがラ・ムールに降臨したことで太陽の船の船長が役目を終えたとしてヌアトゥスに送ったのだという。
東大陸中央の東岸地域、ネパダス雪原に都市国家イドフを中心に古代イドフ文明が成立した。
紀元前5000年頃だと古代オルニト帝国は、記録している。
ネパダス雪原は、その名の通り永久凍土のブリザードに閉ざされた土地である。
作物は育たず、地層を調査しても恐らく数万年は、生物が暮らしていないと考えられている。
この土地に風の妖精シルフィードのブリザード種が定住した。
シルフ・ブリザードは、日本の妖怪でいうと”雪女”に当たり、”フロスティ”などとして知られる雪と氷の亜人である。
他に誰も住まない不毛の大地は、彼らにとって楽園だった。
しかし外敵がいないから穏やかな文明だった訳ではない。
長い間、フロスティたちは各部族に別れ、激しく戦った。
他の亜人にとって一様に同じ雪原でも彼らにとって雪深い豊かな土地と、そうではない土地があった。
第一、雪原は既知世界の広大さに比べれば猫の額のように狭かった。
誰もがずっと寒冷で積雪量の多い土地を望むのは、当然と言えよう。
通常の文明なら農耕地の開発や治水工事、作物の研究によって問題は解決できた。
しかし雪の量は、農業や土木工事では解決しようがなかった。
紀元前3000年頃には、イドフを首都にハイロ王国が成立した。
ハイロ中興期の王カーリラート(あるいはカリラタ)は、「氷のピラミッド」を建設させた。
これは、我々が知る地球のピラミッドと形状こそ同じだが大きさが遥かに違った。
カーリラート王のピラミッドは、内部に構造があり、宮殿や都市部が作られた。
しかしこれらは、内部構造を作るために巨大だった訳ではない。
工事を続ける上でピラミッドの内部に市街地が作られて行ったのである。
やがて工事が始まって500年が経った。
高さ8000mに達するエベレスト級の都市内蔵ピラミッドが完成した。
これは、平坦な地域に雪を降らせるために人工的に山を作ろうとしたためである。
結果として長い年月がかかったが、雪不足の解消の一助となった。
これを皮切りに次々に巨大なピラミッドの建設が始まったのである。
最後のピラミッドの建設が終わったのは、6世紀のことである。
紀元前2500年頃に最初のピラミッド建設が始まり、3000年間で大小20のピラミッドが建設された。