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誕生と転生と死




転生王朝制度は、ラ・ムールとミズハミシマなどで採用される政治形態である。

他にもイレヴンズゲート世界には、この制度を採用する国家が存在する。


輪廻転生は、地球世界でも広く信じられた世界観である。

しかしイレヴンズゲート世界では、死が全ての終わりであると考えられている。

そのため転生するのは、特別な人物だけと信仰されている。


ラ・ムールでは、ナブネルとセダル・ヌダが胎児を作って母親の胎内に送り、出産の後、鼻からハピカトルないしラーが生命を吹き込むと考えた。

これはエジプトの創造神クヌムと出産の神メセネトに対応する。


生命の誕生に関しては、血の神ナブネル、性愛の神アゼススが関係していると信仰されている。

ただ胎児の創造には、セダル・ヌダが関係しているという考えが根強い。


地域ごとに異なるが、胎児を作る工程と魂を吹き込む行程が別の神によって行われる場合がある。


ラ・ムールでは、最初の呼吸と共に人に魂が宿ると考えた。

魂を吹き込むのは、大気の神ハピカトルであると考える説が根強い。

しかしラ・ムールにおいて主神であるラーが魂を送り出すという意見も存在する。


地域によっては、ハピカトルの神霊たちが魂を運ぶとする説もある。

なので、やはりラーが魂を送り込むのは、ラ・ムールのみのローカルな神話といえる。


不滅の魂を持つカー・ラ・ムールは、この出産時に胎児の身体に宿ると考えられている。

同じく転生王朝制度と取るミズハミシマの場合、乙姫の母乳により次の乙姫に魂が移ると考えられた。




転生しない一般の人々は、死と共に冥界に連れていかれると考えられた。

死後の世界を支配するのは、死の神モルテの眷属、地獄の王モナスと信仰されている。


原始の世界、全ての生命は不死であった。

しかし生まれた時から死んでいた、最初の死者モルテを口にした者たちは、死せる定めを受けた。


これは、原始の生命は細胞分裂で生き続ける単細胞生物であったのに対し、多細胞生物は、口を獲得して捕食するようになった歴史を表す説話である。


イレヴンズゲート世界では、天国に対応するものは信じられていない。

死は、先祖が負った原罪であり、取り除く事の出来ない宿業であると捉えられた。

これを”死の神モルテの望む死”と呼ぶ。


全ての生物は、生きる喜びと引き換えに無慈悲な死と終わる事のない科刑を覚悟しなければならないと信じられたのである。




死の神モルテは、時に生命をもてあそび、仮初の生命を与える。

その者は、不死者となって地上に呼び戻され、再び生を得る。


永遠に続く地獄から一時でも地上に戻る方法は、これだけである。


冥府の王モナスは、地獄の監視者であり、主の趣向に堪える人間を探す。

そのため地獄では、死者同士が殺し合い、モナスがそれを評価する。


モナスがこれは、と思う人間はリストに回し、モルテが許可すれば地獄から地上に戻ることができた。

ただし戻るには、生前の肉体が必要であり、ラ・ムールやオルニトでは、ミイラ技術が考案された。


それ以外の地域ではモルテが不死者にする者は、無実の罪で刑死された者と深い憎しみを持つ者と信じられた。


彼らは、生き返ると復讐の対象を生きたまま食らうと恐れられた。

あるいは、復讐を遂げるまで無関係な生者を襲って生気を奪うとされた。


そのため不死者は、恐れるべき者で親族であっても出迎えてはならないと信じられていた。




またモルテは、死期を司ることができると考えられた。

ただし、それは4つの死以外に限定される。


つまり闘争を司る戦神ウルサの戦死、大気を支配する嵐神ハピカトルの窒息死、作物の出来を左右する太陽神ラーの餓死、火を操る獣神金羅の焼死である。

これ以外の死因は、全てモルテ神の望む死、”聖なる死”とされた。

対する4つの死は、四柱の神々の怒りに触れた”天刑”とされ、この死に方をした者は、消滅すると考えられた。


つまり地獄にも行けず、魂が消滅すると信じられたのである。


ウルサに愛されたものは、即ち勝ち。

ラーは、万民をあまねく愛し、その陽光をもって身体を温かく包み、作物を与える。

金羅に守られたものは、例え炎の中からでも生還すると信じられた。


戦死は、みだりに争ってはならないという訓話の意味もあったと考えられる。

餓死は、怠けずに働き、太陽の恵みに感謝する意味で加えられたと考えられる。

焼死も火に気を着けなければならないものとして警告する意味があったのだろう。


この中でハピカトルだけは、凶暴な神なので気紛れと信じられた。

このため天刑の中でも窒息だけは、免れ得ないと考えられた。

しかし、そう信じられるほどにイレヴンズゲート世界では、何もない場所で大勢の人間が窒息死した。




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