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天地開闢




イレヴンズゲート世界は、私たちの地球世界と同じく137億年前頃に出来たと考えられている。


地球世界では、真空の宇宙空間に無数の星々からなる銀河が形成された。

それに対し、イレヴンズゲート世界は、広大な大地と星海に別れたのである。


この大地は、宇宙とほぼ同じ広さだと考えられている。

しかし現在知られている領域は、「既知世界」の内側だけである。


伝説では、宇宙の誕生と同時に大神と呼ばれる神性が顕現したと伝えられている。

大神は、すぐに姿を消したがイレヴンズゲート世界の根幹に根差していると考えられている。




イレヴンズゲート世界は、様々な物質が混じり合った重い部分と純粋な軽い部分に分離した。

前者は大地であり混沌カオス神レギオン、後者は大気となり嵐神ハピカトルとなった。


ただしラ・ムールでは、太陽神ラーが最初に地上に誕生したと信じられている。

続いて星神テミラン、月の三女神セレ、ニア、そしてコスが誕生した。


はじめラーは、暗黒の世界を一昼夜を照らし続けた。

しかし月の女神が彼を誘惑するのでラーは、彼女たちと共に楽土イアルに隠れてしまうと信じられた。

ラ・ムールでは、逆に誘惑を断ち切るために姿を隠すと信じられている。


楽土は、太陽神が赴く光の国と信じられている。

ここには、ラーの神妃、もう一つの太陽ソルがいると考える人々もいる。


ラーが隠れる間、星神テミランは夜に人々を照らし、導く役目を負った。

しかし月の女神たちは、星神が気にくわないので邪魔をするために順番に現れるようになった。

夜に自分たちより大きく光り輝く星神が気に食わなかったのだと言われる。




混沌信仰では、全ての者はレギオンから分離して生まれたと信じられている。


混沌は、万物の根源であり、ここから様々なものが生まれた。

最終的に混沌は、大地として冷え固まり、固まらなかった部分が海になった。


やがて大地から世界樹が誕生した。

鍛冶神セダル・ヌダは、世界樹からディオマーとユミルムの双子のドライアドを作った。


神話のパターンは数あるがセダル・ヌダが何処から現れたのかは、不明である。

セダル・ヌダの出現時期に触れている一部の神話では、全ての神は彼女が作ったことになっている。


この説話から胎児は、セダル・ヌダが作って母胎に送ると考えられている。

パターンによっては、ここに血の神ナブネルが登場する。




ディオマーとユミルムが最初の呼吸をすると天空の神ハピカトルが息を吹き込んだ。

あるいは、この場面で太陽神ラーが体温を与えたとされる。


ディオマーは、地上に生物の溢れる楽園を作ろうと考えた。

彼は、世界樹を助けて次々に生物を産み出した。

あるいは、セダル・ヌダが創造したと信じられている。


ユミルムは、兄やセダル・ヌダには協力せず、非干渉だった。

彼女は、新しい動物が増える度に騒音が気障りになっていった。


アゼスス、あるいはイズスス、アイシャセス、イシャゼスは、愛の神である。

ギリシアのアフロディテやオリエントのイナンナ、イシュタル、ローマのウェヌス、ケルトのフレイヤに相当する。

即ち美と性と愛、不純なる情愛と娼婦の守護者にして植物と大地、母性を司る地母神である。


ユミルムは、大地からこの神を創造すると全ての生物が交合によって繁殖するように呪った。

また男女に不妊症を作り、さらに流産させることで必要以上に増えないようにした。

加えて醜美観を作り、全ての男女が望んで交合しない様にした。




アゼススは、軍神ウルサを主神とする神話の方が人気がある。


世界樹とディオマー、ユミルムを中心とした創造神話は、西大陸で広く信じられた。

対する東大陸では、ウルサとハピカトルが中心となった物語が好まれる。

ハピカトルが主神の神話では、太陽も月も星々も大地もハピカトルが運んで来たとされている。


最後にハピカトルの流す血の雨から血の神ナブネルが誕生する。

ナブネルと大地が交わり、そこから最初の男女が誕生した。

東大陸のパターンでは、ウルサとアゼススが最初の男女となっている。


血には、生命を自ずから形作る役割があると信じられた。

古代、人間は母親の経血と父親の精液によって母胎で作られると考えられたからである。


ナブネルは、植物から動物が生ずるという世界樹中心の神話に対する疑問から生じた神である。

ただし世界樹は、通常の植物と違い動物的な部分があるため、この説話は誤解から生じたと言える。


ナブネルが誕生した時期は、不明である。

出自も世界樹の幹から生じたとも、嵐神ハピカトルの雨、月の三女神の経血であるという説がある。


パターンによるとディオマーは、妹のユミルムを王配に迎えることができないと考えた。

そこで彼が血の海(ナブネル)に射精したのが生物の起源とされている。

このためナブネルは、人格神ではなく血そのものという考えが強い。




どのようなパターンであれ、共通の説話に神話は収束する。

ユミルムは、ディオマーとウルサのどちらの伴侶にもならないため、アゼススが唯一の女となった。


二人は、アゼススを巡って争ったが呆気なく決着がついた。

勝ったウルサがアゼススを独占したのでディオマーは、蟲や獣と交合するようになった。

ここから蟲人や獣人、鳥人の祖先が誕生したと言われる。


ユミルムは、兄が殖やした子供たちを「ディオメンティス(ディオマーの娘たち)」と呼んだ。

対してウルサが殖やした子供たちを「ウルセネス(ウルサの娘たち)」と呼んだ。


ユミルムは、彼らが気に食わないので知恵を絞った。

男女が別れたことは、多少の抑制になったものの、それでも生物は増え続けた。


原始の世界の生物は皆、死ぬことがなかった。

ユミルムは、数を減らす方法を思案していた。


ユミルムは、かつて真っ黒な神が動かなくなった者を埋めているのを思い出した。

彼女は、土の中、冥府から死者を掘り出すと料理して人々に食べさせた。


兄とウルサの子供たちは、それを皆、掴んで食べた。

彼らは、料理のおいしさ、素晴らしさに感動し、やがてお互いで殺し合って食べるようになった。


この時、調理を手伝った獣神金羅(ジンルオ)だけは食べ物を口にしなかったため不老不死となった。




モルテは、最初の死者、生まれた時から死んでいた者と説明される。

彼は、全ての生物が辿る宿命、死そのものである。


天地開闢と共に太陽神ラーが誕生すると大地に影が残った。

これがモルテであったと神話は、伝えている。


モルテには、兄がいた。

黒い犬としてその名は、秘密にされた黒い神である。

彼は、モルテが太陽の光を嫌うので地下に埋めてやった。


ところがそれをユミルムが掘り出して皆に食べさせてしまった。


食べられたモルテは、元に戻ろうと考え、自分を食べた者たちに死を与えた。

全ての者は、ハピカトル、ないしラーによって生気を吹き込まれ、モルテと共に肉体を離れる。

離れた霊魂は、モルテと一体化しているため黒い犬が冥府に連れ去ってしまう。


古代インドやユダヤ教、キリスト教、イスラム教の生死観と違い、イレヴンズゲート世界では魂は幾つもの世界を巡る永遠のものではないと考えられた。

「第2の死」、つまり魂の消滅が待っていると信じられている。


イレヴンズゲート世界の冥府は、モルテを霊魂から分離する場所とされた。


冥府に落ちた霊魂は、まずモルテと分離する。

モルテの部分は、過去に集められたものと合わせて一つになる。

人間の霊魂は、暗闇に閉じ込められることになった。


しかし時代が下るとモルテが気紛れに死者を生き返らせることがあると信じられるようになった。




獣神金羅に関しては、諸説ある。


ラ・ムールやイストモスなどの西大陸では、ディオマー作った怪物の一つであるとしている。

ドニー・ドニー諸島などの東大陸では、彗星の神、天狐と考えられた。


しかしやはり名前から分かる通り南大陸独自の神性であり創世神話に登場するのは、無理矢理に繋げただけであろう。




やがてディオメンティスとウルセネスが争いを始めた。

ディオマーは、強力な魔獣を世界樹から創出してウルセネスたちを滅ぼした。


そしてアゼススをウルサから奪うと自分の神妃とした。

ウルサは、悔しがったがディオメンティスの軍勢の前に退散した。


しかしディオマーを快く思わない者たちは、彼の身内にも大勢いた。

淫乱で幼稚で尊大な独裁者に人々は、愛想をつかした。

彼らは、ウルサに取り入ってディオマーに反旗を翻したのである。


戦いは、激しく長引いたが不老不死のディオマーが敵では際限がなかった。


止む無くディオマーは、エリスタリア半島を自分の王国と宣言した。

彼の権力は、「ウルサの柱」あるいは「ウルサの門」と呼ばれた半島の付け根にある山脈の外には及ばないと決定した。


この時、ウルサと共に戦ったのが古代オルニト帝国初代皇帝インである。




その昔、鳥人たちは、世界中に広まっていった。

彼らは、土地に縛られないため自由だった。

だが、自由であるが故に乱暴や悪行を繰り返すものが現れた。


オルニト高原に長老たちが集まり、「オルニト法」を定めた。

これは、皆が守るべき秩序であるとして世界中に広められた。


しかしそんな法は、認められないと言ってディオマーは怒り狂った。

それでも人々は、ディオマー個人の価値観には従うことができなかった。


ディオマーは、数々の魔獣を産み出して人々を罰した。

しかし鳥人たちは、各地の有力者とネットワークを作り、反乱軍を組織した。

この軍勢の頂点にインという鳥人が就任した。


彼こそ、万民とオルニト法の守護者、オルニト皇帝であった。


「淫蕩で無責任な万物の父が再び全種族の前に家長権を求めて立ちあがった。

 我々は、素早く同盟を結び、この愚かな思い上がりを打ち砕かなければならない。」


ここに「最初の戦争」が勃発した。


インは、卓越した霊能力者であり、神々と交信して従える魔術を操った。

彼は、神々に命じてディオマーの繰り出す魔獣を次々に倒していった。

しかしディオマーだけは、死ぬことがないため決め手に欠いた。


そこでインは、ディオマーを一つの地域に閉じ込めることにした。


ディオマーは、千人力の大岩を置き、自分の王国の境を定めた。

しかしそれは、あまりに広大だったのでウルサが早朝から日没までに移動させる約定をかわした。

ウルサは、大岩をエリスタリア半島の付け根まで運ぶと国境に定めた。


ディオマーは、当然のように駄々をこねた。

今度は、真昼までという約束で再び大岩を運ばせた。

しかしラーが中天に入ることをためらったため、また国境は半島の付け根に定まった。


ディオマーは、再び抗議したが誰も取り合わなかった。




古代オルニト帝国の成立と創世神話は、このように繋がっている。

数々の文献や神話として各地に残っているが、真相は謎である。




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