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夏のホラー体験 「虫取り網の少年」

作者: 柚娜

怪談をしていると、霊が寄って来る、と言いますが、それを身をもって体験したお話です。

これは、私が中学生の頃、市の広報で募集していた

学生ボランティアの記事を見つけた母が、老人ホームへ

一泊二日で参加する、というボランティアへ母の勧めで

参加した時のお話です。


今でこそ我が市では、小学生から、成人まで、夏休みの

体験ボランティアをやっている。それは通知が学校で

配られることなので、ボランティアをする、しない、は

本人の意思次第、ということで、我が家の娘たちも

保育園で子供の世話をしたりした経験がある。


中学生になると、職業体験で、病院で子供や老人の世話をしたり、

保育園や、飲食店、などの商業施設での職業体験を数日間させてくれる。


場所が選べる分、当時のような泊りがけでのボランティアは

なかなか存在していないようだった。

近年の、色々な社会の移り変わりの象徴なのかな?と私は感じていますが、

世の親御さんはどのように考えてるのかは、私にはわかりません。



母の運転で、市役所まで送ってもらい、そこからボランティア参加者は

マイクロバスで移動をする、ということで、一泊二日分の荷物と

数人のボランティア参加者がバスに乗り込んだ。


現地に近い人は現地に直接行って、そこで合流をする、ということだった。


同じクラスになったことはないが、このボランティアに何故参加したの?

という色白美人の同級生がいた。それでも、彼女は剣道部に所属していて、

なかなかの強さも持ち合わせていた。


合流してみると、50名ほどの参加者のうち、20名ほどが女性であることが

わかった。年の近い中高生グループと、大人グループと分かれてしまっったが、

リネンを畳んだり、老人とお話をしたり、と、ボランティアの最中は、

それほど、ボランティア側の人間との接触は少なく、個々で指示を出されることが

多かった。それでも、夜は、近くに大きな霊園がある、とのことだったので、

肝試しをしたり、ボランティア同士のイベントも用意されていた。


地元には山を切り開いた大きな霊園がある。

肝試しの会場は、そこだった。さすがにリアル過ぎて

本気で怖かったけれど、友人にしがみついて、墓場へ向かう。


これ、という事件もなく、肝試しが終わろう、というとき、

山の上の方・・・・と言っても広い霊園なので、舗装されている

道がちゃんとあるのだが、そこをイノシシの大群が走り抜けて行くのを

私たち全員が見ていた。


「私の目の錯覚じゃなければ、イノシシが大量に走ってるのが

見えるんだけど、アレなに?」


「うん、見えるね、イノシシ。でも、あれだけのイノシシが

走ってて音がしないってことは、過去の残像なのかもしれないね」


友人は何事もなかったかのように言う。



あれだけの量のイノシシが走っていたら、たぶん、霊園の中だけでなく、

テレビで放送されるくらいのオオゴトだろうが、半分くらいい捕まえて

販売したら、安くボタン肉が手に入ることだろう。


未だ、イノシシの肉は食べたことはないが、美味しい、と

父が言っていたのを思い出す。イノシシは未だにいて、

目撃情報も出ているし、JR中央線がたまに

「小動物との接触事故があった為、電車が遅れております」

とアナウンスすることがある。


車掌をしている後輩に「小動物ってなに?」と聞くと

「だいたい、高尾方面でイノシシです」と返ってくるほどなので、

高尾山にもいるのかもしれません。



話を本題に戻しましょう。


肝試しを終えて、老人ホームに戻った私たちは、

病院や老人ホームには存在しない「4階」にあるスペースに

移動をした。男性たちは、その上の階に雑魚寝する形だった。

本来であれば4階にあたる階層が縁起が悪い、

と言う理由で存在しない。


5階の大部屋で雑魚寝することになったのだが、

肝試しの興奮冷めやらぬ、若者だったのもあり、

今度は、非常灯だけが煌々と光るほぼ、真っ暗な部屋の中で

怪談話を交互に始めた。


うつ伏せで円陣を組む形で順番に話を始めて、どれくらい経ったか、

ふと体勢を変える為に起き上がると、窓の外に

ランニングシャツに白い半ズボンをはいた麦わら帽子を被り、

虫取り網を片手に持った男の子が近づいてきていた。


「なんかさ、ランニングシャツ着た男の子がこっちに

向かってきてるんだけど?」


その言葉に円陣を組んでいた全員がたちあがる。


そして、すごい勢いで、元の体勢に戻る。


「なんで、こんな時間にあんな小さい子が歩いてんの?」

「わかんないけど、なんか、1人で変だよね?」


いや、変なのは、そこじゃない。

誰もが忘れていた言葉を誰ともなく呟いた。


「・・・・・・ていうか、ここ4階だよね?」


全員の顔が青褪める。本来、人が立てる高さではないのだ。


その窓の下は駐車場と出入り口が繋がっていて、

霊園からくるにしても、不自然な位置なのだ。


再度、交互に、彼の動きを見ていると、明らかに

こちらに向かってあしをうごかしているのだ


「どうしよう・・・こんな場所で怪談してたから、

寄ってきちゃったのかも・・・・・・」


ひとりが怯え出した。


「とりあえず、怪談話はやめようか」


全員がうなづく。


けれど、少年の動きは気になってしまって、

誰もが、それを言い出せず、それでも、やっぱり

他の話を楽しめずにいた。


「・・・・ちょっと・・・確認してみるね?」


私は少し上半身を起こし、窓へ視線を向けた。


少年は、窓からこちら側を覗き込んでいた。



「窓のところにいる!!こっちのぞいてる!!」


数人が確認の為に起き上がる。


「これ、このままじゃ、やばくない?とりあえず、

寝よう!!これ以上近づいちゃいけないと思う」


同級生のYちゃんがそう言うと、皆、同意し、

布団に潜り込んだ。



目が覚めると朝で、窓を見つめても、

もう、その少年の姿はない。


今でも、その少年が、どこから来て、

どこに去って行ったのかは、わからない。


ランニングシャツに短パン、麦わら帽子に

虫取り網を持って、ビーチサンダルを履いた

僅かに光を纏って地上4階の高さを歩いていた

少年の姿は、いつの時代の少年だったのだろう?


未だにその謎は解けないままです。





翌日、今年甲子園に出演した東海大菅生高校の吹奏楽部の演奏会を見に行ったのですが、途中で転寝してしまい、曲が転調したときに、ビクッとさせて目が覚めました。後ろにいた友達に爆笑されました。


こんな体験の後だったのもあり、寝不足でもあったのですが、不覚!!

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― 新着の感想 ―
[一言] 私が小心者なだけかもしれませんが怖かったです。
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