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竜のいる日常  作者: 柳都
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日常風景

頭の重み(物理)で目を覚ますとフィナが頭に乗っかっていた。

かまってほしいのかと思って頭をグリグリと撫で回すと「ヴァ」と抗議の声を上げる。どうやら空腹のようだ。

あの胡散臭い本を読むに一週間は同じように魔力を与え続けるとのこと。要は母乳を与えるのと同じようなことなのだろう。


魔力を与え、自分の朝食の準備をしていると一枚の置き手紙がおいてあった。どうやら蓮はもう出ていったらしい。ゆっくりしていけばいいのにとは思うがあれでも社長だ、忙しいんだろう。

パン一枚とコーヒーの軽い朝食を済ませ、今日の仕事の準備をすすめる。

しかし考えてみるとフィナをこのまま放置しておいていいのだろうか。下手に暴れられると家具が壊れてしまう可能性もある。しかしだからといって毎日詩織さんに面倒を頼むのもどうにもバツが悪い。


「ううん……仕方ないか、これはもう最悪授業料として割り切ろうじゃないか。」


ということでしつけも兼ねてとりあえず留守番をさせてみることにした。

家具はまあ壊れても買い換える程度の金はある、壊れても困るものは特にはない……けれどノートパソコンだけは持ち出そう。

昼飯代わりに魔力球を天井付近に浮かべておき、時間になると床まで降りてくるようにする。


魔力球を浮かべておく理由は単純明快で、外に出られないのと同じ理由……つまり、まだ空をとぶことができないからだ。竜種は羽に魔力を通して浮遊、滑空、加速を行うため(そのための器官が存在する)魔力がまだ身体を巡っていないフィナは飛ぶことができず、テチテチとペンギンのように(あるいはアザラシのように)歩き、這いずることしかできないのだ。

なのでいくらフィナが食い意地を張っていようが届かない場所に合っては食べようがない、というわけだ。


「フィナ、おいで」

そう言うとフィナがこっちにテチテチと歩いてきて「クルルルル?」と首を鳴らす。


「俺はこれから出かけてくるけど、フィナはおとなしく留守番しててくれな?」

フィナはわかったんだかわからないんだかな声で「ヴァ」とだけ鳴いた。

まあきっとわかってくれたんだろう、と勝手に解釈して俺は仕事へと出かけていった。


今日の畑仕事を早々に終わらせると、向こうから声をかけられる。

「おーい!勇君!少しいいかい?」


声の主は詩織さんの旦那さんで魔力を使わない旧来的な農法を行っている隆さんだ。

しかし別に彼が魔法だとかそういったものを嫌っているわけではなくただ単純に土をいじるのが好きだというだけだ。

それと複産的に魔法で作った野菜とそうでない野菜の様々な比較検証を行っているらしい。

安全性や栄養面に付いては国家できっちりと検査を行った上で流通してはいるが、味や栄養価の変化などの細かい部分をモニタリングしているらしい。

肌は健康的に日に焼け、鍬を振るう腕はたくましくとても50代には見えない。


そういえば昨日詩織さんが用事があるとか言っていたな。ということを思い出す。


「あ、はい!どうしたんですか?」


「いやー、それがね。畑の近くにダンジョンが生えてきちゃって、このまま深くなっちゃうと魔力の影響が畑まで出ちゃうかもしれなくてさ、申し訳ないんだけど壊しちゃってくれないかい?」


「構いませんよ、規模はどのくらいですか?」


「うーん……多分一昨日くらいまではなかったはずだから1~5Fサイズだと思うんだけど、頼むよ、ダンジョンのコアは好きにしちゃっていいからさ。」


「あ、そうですか?じゃあ……そうですね、そのサイズなら30分くらいで終わると思うので少し待っててください」


「ほんとかい!助かるよ!魔力の影響が出ちゃうとこっちもほとんど趣味だけど一応は仕事だから困っちゃって」


「いえいえ、こちらこそいつもお世話になってますので。」


ダンジョンに着くと簡単に準備をする。準備と言ってもこれから中規模程度の魔法を行使するために周囲の警戒を促すために花火魔法を打ち上げるだけだが。

こうして俺は久しぶりのダンジョン探索へ乗り出した。

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