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ぼくの詩集

拠り所

作者: 桜井あんじ

さあ いらっしゃい いらっしゃい

ほんじつの大特価品 おひとりさま1点まで

売り切れ必至 さあいそいで


さあさあ よってらっしゃい みてらっしゃい

本日の特売品は  ヰΘΩΣσЯ⊿ ヱΣσЯ⊿öðכףא

え 聞こえないって お客さん

いえ すみませんね だめなんですよ 

名前を言ったら いけないんです

クライアントさんからも そう言われてて

まあそれはこっちのはなしですが

とにかく ほら よく言うでしょう

みだりに名を唱えてはならない って

あれですよ あれ


それは死んだはず ですって お客さん

いえいえ ところがどっこい それが今回

バージョンアップして 新登場


このあたらしいバージョンは

スタイリッシュなデザインだけでなく

よりわかりにくく

よりふくざつに なりました

なにしろみなさん これを

まさか あれとおなじ

ヰΘΩΣσЯ⊿ ヱΣσЯ⊿öðכףא だとは

気づかないのですから


いまどき そんなもの

ひつようないって

いえいえ はたして ほんとにそうかな


だってお客さん よく言うでしょう

「○○○って変かな?」

「○○○って大丈夫?」

「○○○って間違ってないよね?」 

いつも誰かに聞いてるでしょう

人がものの善悪を語るとき そこには 

かならずこれがひつようなのではありませんか


いえいえどうぞ ごしんぱいなく お客さん

この あたらしいバージョン

機能は以前とかわりなく

いえ むしろ パワーアップ


命令します あなたのすべきこと

決めます なにが正しいか

見せます あなたのあるべきすがた

教えます あなたの知るべきこと だけ

導きます あなたのゆく道

隠します 見なくてよいこと

そしてなんと 時々は あなたを虐待もします


ねえ お客さん

見あげたいでしょう なにかを

信じたいでしょう なにかを

あってほしいでしょう 人智のおよばぬ 何か おおきなちから

そうして 逃れたいのでしょう 責任から

じぶんのことを じぶんでぜんぶ ひきうける

責任から


星の瞬きから 雲のうごきから 風の向きから

ほんとうは理由などない しぜんのうごきから

なにかを読みとって 祈りたいのでしょう

あんなことやこんなこと なぜ起こるのか 

理由がないなんて 耐えられないでしょう


欲しいのでしょう 指針が

どこゆくべきか どうするべきか

考えるてまを 時間を 節約したいでしょう


ええ ええ わかっていますよ

みなさん そうなのです

だけど そんなあなたも もう安心

この ヰΘΩΣσЯ⊿ ヱΣσЯ⊿öðכףא に ぜんぶおまかせ


はい そちらの おきゃくさん

え いんちきじゃないのかって

契約内容が ほんとうかどうか 

結局 死ぬまで わからない

はい そのとおり よい質問ですね

でもどうか ご安心を

これは 生きてる人のための商品

不安や悲しみや寂しさを いっぱいに抱え

毎日身悶えしながら 苦悩し

生きるひとのための 商品ですから

ほとんどのお客様に いきてる間 ご愛顧いただいておりますが

万が一 死んだ後 商品にご不満がございましたら

カスタマーサービスに ごれんらくください


え そちらのおきゃくさん

なんですって

安かろう悪かろう ですって

そりゃあなた そうですよ このお値段で 

それは言わないお約束

お買い得品に そんなに 期待されても困ります

いいんです

安かろう悪かろう で

お手軽さが売りの 使い捨て商品なんですから


はい そこのお客さん なんでしょう

手を上げている そこの あなた

はいはい え ふむふむ

ええと それは

ううむ そうですね

うん あなたには この商品は

ひつようないかも しれません

どうぞ おかえりください


さあさあ よってらっしゃい みてらっしゃい

おひとりさま 1点限り

ほんじつ お買い得ですよぅ

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