no.98
宮川は台所に入って
「お父さんが勝手に作って食べろって言ってたんだけど、いいのかな?」
「うん。ママも言ってた。どうせ宮川君に作ってもらうんでしょ、なんてね」
「はははっ、その通り~」
お雑煮を作って二人で食べた。
お腹が一杯になっちゃうと着物って余計辛い。
リビングのソファに座った。
「ここのほうが楽。着物だと」
「そうだよな。この帯なんて苦しそう……」
「うん。この下に何本も紐結んでるんだよ。それが当たって結構痛かったりするの」
「脱いだほうがいいなら着替えてこいよ」
「ううん、いいの。ママたちが帰ってくるまで」
リビングで2時間くらいお正月番組を見た。
私はいつの間にか眠ってしまったらしい。
そして宮川も……。
******
「いやぁね、なに、この二人。結局、ここで寝てたのかしら」
「そのようだね」
「もう幸せそうな顔して……」
「僕らはなんの為に出かけてたんだろうね、ママ」
「ほんとうにね」
「世話の焼ける子供達だ。なにか持ってきてかけてやりなさい」
霧の向こうで聞こえていたパパとママの声が、覚醒とともにはっきりしてきた。
「う~ん」
「あら、起きちゃった」
目を擦って見るとママとパパが覗きこんでいた。
わっ!
そのまま固まってしまった。
「う~ん」
私に腕を回して眠っていた宮川も目を覚ました。
「おや、こちらもお目覚めだ」
「えっ?」
宮川も目を覚ましたまま、固まる。
「こんなところで寝てると風邪引くよ」
パパはソファに座って言った。
「あれ、俺までいつの間にか眠っちゃって……」
そういいながら宮川は私に回していた腕を戻した。
ドキドキ……。
「昨日、寝てないから疲れたのよ。今夜は早めに食事して、寝なさいよ」
「ママ、お茶!」
パパが言った。
「はいはい」
ママはお茶を持ってきてから言う。
「アリス、着物、疲れたでしょ。着替え手伝ってあげるから」
「うん」
ママと一緒に部屋に行く。
やっと脱げるぅ~~~っ。
「やぁね、あなたたち、なにしてたの?」
「えっ、お昼食べてテレビ見てたら眠くなっちゃって。先輩が寝てもいいっていうから」
「で、ふたりして眠っちゃってたわけ?」
「そうみたい……」
「あ~あ、ばかばかしい」
「なにが?」
「なんでもないわよ」
着物を脱ぐと本当に気持ちいい。
「ふぅ~、開放されたぁ」
「アリス、早く着ちゃいなさいよ。ママ、下に行って食事の用意しちゃうから」
「はぁ~い」
伸びをして、はぁ、本当に楽になった。
着物着たまま寝ちゃったから体がぐきぐきする。
コンコン。
「アリス、お母さんが目が覚めるようにって渋いお茶」
宮川の声がした。
ワンピースをスポッと着て、ドアを開けた。
宮川はお盆をコーナーテーブルに置いた。
「着替えちゃったんだな」
「うん。や~っと楽になったぁ。やっぱり着物は1年に一回でいいかな。肩凝っちゃった」
「はははっ。じゃ、肩揉んでやるよ。座れよ」
「えへへっ、お願い」
私が座ると後ろに座って肩を揉んでくれた。
「気持ちいい?」
「う~ん、とっても……」
5分くらいやってもらうと気持ちよくなった。
「もういいよ、先輩」
「そう? じゃ、ちょっと……」
降ろした髪をよけて後ろから首筋にキスされた。
「くすぐったい」
「きれいだった。本当に……どんどんきれいになって……俺はドキドキだな」
宮川は後ろから抱きしめてそんなことを言った。
ドキドキは私だけじゃないんだね。
「お父さん達に感謝しなくちゃな」
「うん?」
「言われちまった。せっかく二人にしてやったのにって」
……パパってばなに考えてるんだぁ。
「俺が我慢してるのわかってたから。でさ、二人にしてくれたわけ。でもそういう話したあと、だもんな。さすがに」
「そ、そうだよね」
「でも、また我慢できなくなりそう。アリスがこんなに側にいるから」
「や、やだ……」
私は慌てて宮川から離れた。
「逃げるなよ。なんにもしねーよ」
な、なんかもうドキドキ続きで疲れちゃうよぉ。
「ほら、下行こうぜ」
「うん」
ドキドキが一杯で疲れちゃう時もある。
でも楽しいかもっ。




