no.97
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ガチャッ。
リビングのドアが開いて、パパが入ってきた。
「あら、パパ、話は終わったの?」
「ああ」
「じゃ、お雑煮食べましょうか?」
「いや、ママ、僕らも初詣行こう。そのあと少し出かけないか」
「えっ、でもお食事……」
「外でしよう。アリスたちは自分達でできるだろう?」
「大丈夫だよ、パパ」
「あらっ、アリスが大丈夫じゃなくて、宮川君が作るんでしょ、どうせ」
「ママぁ~」
多分そうだけど……。
「じゃ、パパとデートしちゃうわね。用意してくるわ」
「ああ」
ママは嬉しそうにリビングを出ていった。
パパはキッチンに入ってすぐに出てきて、ソファに座る。
宮川との話のことがとても気になった。
でも聞けない。
ママが着替えを済ませてリビングにやってきた。
「パパ、用意できたわよ。はい、コート」
「ああ」
「ママは先に出ててくれ。すぐ行く」
ママが先に出て行くとパパはリビングに入って、いつの間に持って行ったのか、私と宮川のマグカップにコーヒーを入れてお盆に乗せて出てきた。
「アリス、コーヒー持っていきなさい」
「えっ?」
「それじゃ、夕方くらいに戻ってくるから」
そう言ってパパは出ていってしまった。
な、なんだか……どうしていいのやら……。
でもとりあえずこのコーヒー持っていくしかないよね。
ドキドキしながら宮川の部屋に行った。
「先輩、あの、コーヒー持ってきたんだけど」
ドアの外で声を掛ける。
中からドアが開いた。
「ありがとう。入れよ」
「うん」
コーヒーをテーブルにおいて座る。
「ねっ、先輩。パパとなに話したの?」
「うん、男同士の話ってやつかな」
なんだかよくわからない……。
「私もママと話しちゃった。あまりゆっくり話したことってなかったから、久しぶり」
「そっか。お母さん、喜んでたろ」
「うん。パパとママが付き合ってたって話。ママったら楽しそうに話してくれたの」
「お父さんさ、俺と話ができて嬉しいって。アリスは女の子だから大きくなるとなかなか話とかできなくなるけど、俺と話せるからよかったってさ」
「へ~っ、パパって話あまりしないのかなって思ってたけど」
「そうでもないよ。いろいろ話したし」
よかった。
先輩、いつもの先輩に戻ってる。
「ねっ、先輩、見て。せっかく着物着たんだから、ちゃんと見てもらいたい」
私は立って見せた。
「ああ、きれいだよ。ドレスもよかったけど、着物もいいな。色もアリスに似合ってる」
「そうでしょ。ママがね、この青は私に似合うって選んでくれたんだもん。着てるのはちょっと苦しいけど、ね」
「……さっきは悪かったな」
私は宮川の横に座った。
「いい、もうそんなこと。それに先輩にこのまま帰りたくないって言われたとき私も……そう思った……」
「えっ?」
う~ん、恥ずかしい……。
「あの、ね。先輩にそういうこと言われちゃうとそうなってもいいかなっていうか、そうなりたいっていうか……」
宮川が頭を抱き寄せた。
「着物だったから……自分で着れないって思ったら……」
「そうだよな、俺、そこまで考えてなくて……」
「でも、もう家にいるし……あの……」
「Hしたい?」
「えっ、……あの……」
「いいよ、今は。お父さんと話して落ち着いた」
「ホント?」
「あのなー、そんな嬉しそうな顔すんなよ」
えっ、やだ、ほっとしたらなんか……。
「せっかくおまえの着物姿見てられるのにさ、もったいないもんな」
「あはっ、そうだよね」
「でも、キスはしたい……」
そういってキスされた。
しばらく二人、パパやママの話をした。
「お父さんはその頃からもう医者になろうって思ってたんだな」
「うん、おじいちゃんもお医者さんだったからだと思うよ」
「そっか。俺も……医者になりたいんだ……」
「えっ?」
「まだはっきり決めたわけじゃないけど、3学期になったら進路決めなくちゃならないだろ。3年は進路でクラス分けだから」
「うん。先輩、お医者さんになりたいんだ……」
「お袋、見てたから、その頃、少し医者になりたいって思った。まぁ、そのあとはあんまり考えなかったけどね」
「先輩ならお医者さんにもなれちゃうね。頭いいしぃ。先輩がお医者さん……かっこいいっ」
「おいっ、かっこいいってのはなんだよ」
「だってかっこいいんだもん。白衣着て、たくさんの患者さん治すんだよね。素敵だと思うよ」
「ああ」
お昼近くまでいろいろ話をして、リビングに下りた。




